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第26回 データム参照にⓂを適用した公差の累積

データム参照にⓂ(最大実体条件)が付いていた場合、公差累積をどのように見込めばよいか

データム参照にⓂを付けると何が変わるのか

今回は幾何公差の公差記入枠の中にある「A-B-C」のデータム参照にⓂ(最大実体条件)が付いていた場合、公差累積をどのように見込めばよいのかについてお話しします。
第25回 幾何公差にⓂを適用した公差の累積」と同じ部品を使用しますが、前回とは少し条件を変えています。

データム参照を変更した理由

先ほどの図面では、データムCは面側に設定されていましたが、今回はデータムCを左の穴側、つまりピン側に変更して基準を変更しました。なぜ変更したかというと、このような穴やピンでないと、データム参照にⓂを設定できないからです。

図1: データム参照にⓂを適用した例の図面

そこで、穴側を基準となるデータムとして、右側の面の輪郭度に対して、単に「C」と指定した場合と、「CⓂ」と指定した場合の違いを比較してみたいと思います。
これまで基準としていた面側をデータムCとしていたものを、今回はピンをデータムCとして、右側の面を輪郭度0.4で評価してみます。

「C」と「CⓂ」の違い

では、データム参照を「C」とする場合と、「CⓂ」とする場合で何が違うのかを確認していきましょう。

データム参照にⓂを付けると累積公差は増える

下記画像の (a) には 2 つの図があります。上がMMC、下がLMCです。
MMCは穴が最も小さい状態、LMCは穴が最も大きい状態です。
図2 : データム参照 C の場合

データム参照にⓂがない場合、穴が大きかろうが小さかろうが、測定時の治具はその直径に合わせて調整したデータムを設定します。
これが、Ⓜなしのデータム設定です。


この例では、公差域があり、実形体が少しはみ出しているので、不適合となっています。

 (b) の図も同じです。ピンの場合、MMCは直径が最も大きい状態、LMCは直径が最も小さい状態です。
図を見ると、ピンの直径が公差内で変化しても、それに合わせて調整できる治具があり、それによって位置決めされ、測定されることを示しています。

(b1) の場合も、公差域はデータム系から29mm離れた位置にありますが、実形体が外にはみ出しているため、不適合という状態です。

データム参照にⓂが付いた場合

それでは、データム参照にⓂが付いた場合に何が起こるのかを見ていきましょう。

こちらも先ほどと同じ部品です。LMC として穴が最も大きく、はめ合いが緩い状態になった場合を考えます。

データム参照にⓂが付く場合、取り付け時のピンの直径は調整されません。偶然 図2 の(a2) の図とぴったり一致していれば不適合ですが、実際には、この隙間をぴったり保ったまま位置合わせをすることは通常できません。


そこで、部品がある程度ガタついて動くことになります。これを「浮動」と呼びます。
その浮動によって部品が少し動き、実形体が公差域の中に入れば「適合」となります。
これがデータム参照にⓂを付けた場合の解釈です。

図3 : データム参照 CⓂ の場合

ピン側の部品 (b3) についても同じです。LMC - つまりピンの直径が最も小さく、はめ合いが緩い状態でできている場合を考えます。測定時には固定の穴がある測定治具に入れます。前回 (第25回 幾何公差にⓂを適用した公差の累積) では可動ピンでしたが、今回は固定穴です。


もしぴったり位置が合っていたとしても不適合ですが、ここには隙間がありますので、部品を動かしてよいというのが、データム参照にⓂを付けるルールです。

「そんなことが本当に許されるのか」と感じるかもしれません。
この例はピンが1本でしたが、ピンが4本ある場合、4つ穴の開いた治具に入れて測るような場面をイメージすると、「それもありかもしれない」と思えるのではないでしょうか。

公差解析表で累積公差を確認しよう

それでは次に、公差累積表1を見ながら、公差解析図のループを確認します。

①、②、③の部分が今回知りたい解析寸法です。そこから④、⑤、⑥、⑦、⑧へとつながっていきます。ここでは、ガタはないという前提にしておきます。
項目は増えていますが、①、②、③には輪郭度、そして今回は考慮しませんが、ボーナス公差が含まれることもあります。


また、Ⓜがなければデータムの浮動もありません。

10mm側の TED (寸法公差) は必要ですし、29mm側のTEDももちろん必要です。
輪郭度は0.4ですので、その半分である±0.2を考慮します。

ボーナス公差もなく、データムの浮動もないため、結果として累積公差は 10±0.35となり、一番最初の例と同じになります。

図4: 浮動を考慮する公差の累積
図5 : データム参照にⓂを適用しない公差累積表

データム参照にⓂを付けると浮動量も見込む必要が生じる

ところが、データム参照にⓂを付けると、データムの浮動を見込まなければなりません。その分だけ累積公差が増えてしまいます。

この浮動量は、下記の図面から求められます。

(再掲) 図1: データム参照にⓂを適用した例の図面

位置決めに用いるデータム形体の公差が、そのままデータムの浮動量として効いてきます。
累積公差が増えてしまうため、公差解析の観点では、データム参照にⓂを付けることは不利になります。

図6:データム参照にⓂを適用した公差累積表

データム参照にⓂを付けるメリット

では、「データム参照にⓂを付けることには何のメリットがあるのだろう?」と感じるかもしれません。そこで、どのような場合に使うべきなのか、逆にどのような場合には使わない方がよいのかを、例を使って説明したいと思います。
図7 : データム参照に MMR を適用する/しないの比較例

左の図は板にピンが付いており、その中央に丸いものがあり、それに覆いかぶさるような板がある例を考えます。一方、右側もほぼ同じですが、出っ張った部分を別部品として扱っています。
ここではがたは考慮していませんが、イメージとしては、製品の筐体があり、上のカバーとの位置決めがあり、その内部にユニットが入る。
そして、どこかに隙間の少ない部分があり、それが気になるというイメージです。

一体構造では組立性を保証できる

まず、一体構造における穴側の板の部品 (図8)から考えてみます。
穴の位置がずれたり、サイズが小さくなったりすると、内側へ寄る可能性があります。
その限界は引き算すると求められ、この場合は15になります。それより内側に寄ることはありません。

一方、土台の部品 (図 9)では、ピンが14.8±0.1、位置度0.1Ⓜです。こちらは足し算すると15になりますので、この外側へ出ることはありません。
したがって、ギリギリ組立が成立します。

図8: 板の部品
図9 : 位置決めのついた土台の部品

はめ合いを優先する場合に有効

上記の部品には「BⓂ」「CⓂ」が付いています。Bは位置決めの部分です。
これは、「位置決めが緩ければ、部品はその分動くことができるから、幾何公差も緩めてよい」という考え方です。

つまり、ギリギリ組み立てられる条件は保ちつつも、部品がたまたま緩い寸法でできていれば、その分だけずれてもよいということになります。
これによって、「はめ合いの確保」ができます。

このように、はめ合いの確保を主眼に置くのであれば、データム参照にⓂを付けて浮動を許すメリットがあります。

別部品でも位置決めと組立を分けて公差を設定

さらに今回は別部品ということで、この部品にも同じように組み立てができるよう、直角度0 Ⓜと、穴の中心と外形のずれを考慮した位置度を指示しています。
直角度0 Ⓜは組立性を確保するための指示であり、このような公差指示を設定してみました。

公差解析で累積公差を確認

このときの公差解析を見てみます。図のように公差累積図を作成すると、解析ループはかなり長くなります。
先ほどの例では、幾何公差とデータム参照Ⓜだけで、ぎりぎり組み立てられる条件を設定していました。

今回は、この隙間について半径方向の公差解析を行い、解析ループを作成して計算してみます。


計算すると、設計上の隙間は0.2 mm、累積公差は±0.25 mmとなります。一見すると、こちらの方が不利な結果に見えるかもしれません。
しかし、この例では部品が1つ増えているため、その分だけ位置決めの数も増えています。その影響を考慮すると、結果としては前の例と同等になります。
したがって、どちらで公差を設定してもよいのですが、もしこの2つの位置度のデータム参照にⓂが適用されていたら浮動を見込まなければならず、累積公差はさらに増えることになります。
そこから,位置決めの幾何公差やデータム参照にもⓂを使ってはならないことがわかります。

図10: 丸い取り付け部品の部品図と公差累積表

まとめ - データム参照にⓂを適用する場合の考え方 -

このように、位置決めとともに別のサイズ形体を組み付けるような場合には、データム参照にⓂを適用する方法も有効だと考えています。

一方で、位置決めを基準としてユニットを組み付け、その位置を解析寸法として評価する場合には公差の累積が加わる可能性があるため注意が必要です。

そのため、位置決めは位置決め、はめ合いははめ合いとして役割を分けて公差を設定すると、この例のように組立性を確保しながら、公差累積も抑えられます。

基本的な考え方は次のとおりです。

  • 位置決めの幾何公差やデータム参照にもⓂを使ってはいけない
  • 組立性や隙間ばめを保証したい場合にⓂを使用する

データム参照にⓂを適用した公差の累積を動画でチェック

本記事の内容について、図や実例を使って動画で解説しています。ぜひご覧ください。

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