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マルチスケール解析について

マルチスケール解析についての概要

近年、あらゆる製品の性能向上と持続可能性が求められる中、複合材料のニーズが高まっています。

例えば、代表的な複合材料として繊維強化プラスチック(FRP)が挙げられます。これは弾性率の低い材料であるプラスチックに、ガラスなど弾性率の高い繊維を複合することで強度を向上させた材料です。プラスチックの軽量性はそのままに剛性や強度、耐久性等が向上する使い勝手のよさから、軽量化が重要とされる輸送機器のみならず電機業界等でも活用されており、その用途によって母材と強化材の組み合わせは多岐にわたります。 
複合材料の設計自由度は非常に高く、あらゆる条件に対して実際の材料試験を実施することは極めて困難です。

そこで、材料設計と製品設計を両立するシミュレーション技術であるマルチスケール解析が、その課題解決に貢献します。

マルチスケール解析とは

マルチスケール解析とは、スケールの異なる構造体双方の物性、もしくは挙動を連成させる解析です。
数mmオーダーの繊維や樹脂からなる不均質な材料組織や、その積層構造のスケールを見るミクロな解析と、その材料からなる実製品スケールのマクロな解析を相互に実施することで、製品性能に与える材料組織や積層構造の影響を定量化・可視化できます。その結果を活用して、製品性能を向上させるための材料設計が効率化できます。

ここでは特に、複合材料の材料設計などに用いられる解析手法についてご紹介します。
ひとつはミクロスケール解析の結果を材料物性値としてマクロスケールに持ち込むための「均質化解析」。そしてもうひとつは、マクロスケール解析の応答がミクロスケールの構造にもたらす影響を測る「局所化解析」です。

均質化解析とは

均質化解析は、複合材料に代表される不均質な微細構造の解析に用いられる数値計算手法です。実際には複雑な構成をしている材料の等価な物性値を得るために、ミクロスケールで行った解析の結果を材料特性に変換し、マクロスケールの解析に反映させる手法です。

均質化解析を用いると製品全体の挙動を容易に把握できるため、結果として最適な材料設計が効率的に実施できます。 均質化解析を行う上では、微細構造を正しくモデル化することや、材料特性を把握するための試験条件設定、さらにミクロスケールで得られたデータを解釈し、材料物性として落とし込むことが重要となります。

局所化解析とは

局所化解析は、実製品スケールのマクロな構造物の一部の領域に着目して、​ミクロスケール構造内部の材料応答を評価する解析手法です。​例えば、マクロ構造解析ののち局所化解析を行って求めた繊維の応力を観察することで、繊維が製品の剛性や強度改善に正しく寄与しているか、していなければどのような設計改善を検討するべきかのヒントが得られます。

均質化解析を行い算出した等価物性値でマクロ解析の対象となる製品の解析を行った後に、その製品に発生しているマクロなひずみから、材料内部のミクロな応力状態を観察したいときに必要となります。

マルチスケール解析フロー例

  1.  ミクロモデル作成
    Ansys DesignModelerやSpaceClaimを使って、数値材料試験を行う為のミクロモデルを作成します。
  2.  均質化解析
    Ansysにてメッシュ生成・境界条件を入力後、数値材料試験を行い、弾性率等の等価物性値を算出します。
  3.  マクロ構造解析 (※図はプリント基板モデル)
    均質化解析結果から出力された等価物性値を、マクロモデルの材料物性値として適用し、再度マクロモデルの解析&検証を行います。
  4.  局所化解析
    マクロモデル解析結果から局所化したい要素を選択し、その位置の歪を条件とした局所化解析を実行、局部の挙動を検証します。

マルチスケール解析の有用性

均質化解析と局所化解析を組み合わせることで複合材料を使用した製品全体の挙動を確認するほか、複合材料の開発にも貢献しています。

複合材料例

  • 高分子系複合材料
    フィラー混合材 - 半導体の封止樹脂, タイヤ, 電子機器内の熱伝導材など
    繊維強化樹脂 - 電子基板(FR4), 軽量化目的の強度部材, 人工筋肉など
    合材 - 積層構造など
    フォーム材 - スポンジ, 緩衝材, 紙など
    合成樹脂 - 接着剤, タイヤ, 建築資材, 電線被膜, 基板周りなど

 

  • 金属系複合材料
    ラティス構造  - 緩衝材、メタマテリアル, 人工骨, カテーテルなど
    多結晶金属 - ペロブスカイト太陽光, 積層造形品, ハンダなど
    多相金属 - 合金  - 耐熱合金, 軽金属, 高強度材など

 

  • その他
    粉体 - 全固体電池, 医薬品, 電子デバイスなど
    セラミクス - 耐熱性が要求される原動機まわりや半導体パッケージなど
    鉄筋コンクリート - 建築材、橋梁など

解析用途

  • 新しい複合材料の開発
    粉体材料の粒径分布や配合・形状・生産プロセスの検討
    FRPの開発
      フィラメントの断面形状の検討
      ストランドの角度の検討
      マトリクスの材質の検討
    金属結晶粒のサイズ分布や配向の検討

 

  • 複合材料を用いた製品設計
    プリント基板の疲労寿命設計やそり改善検討
    衝撃吸収部材の材料設計
    射出成型品の剛性や強度設計

 

  • 複合材料を用いた製品の不具合原因究明
    部品の破壊メカニズム検討
    材料試験の代替

 

  • 材料試験の工数削減
    理想的な環境や荷重条件下の材料試験

 

  • 解析規模の縮小
    均質体への置換によるモデルの簡略化

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