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光学解析

フォトニクス解析ソフトウェア Ansys Lumerical による光デバイス/システム開発

公開日2022年6月

目次

  1. はじめに
  2. Lumericalの概要
    • 2.1 デバイス解析
    • 2.2 システム解析
    • 2.3 ツール連携
  3. 解析事例1 CMOSイメージセンサの効率解析
  4. 解析事例2 Ansys HFSSとの連携によるMZM最適化
  5. まとめ

はじめに

近年、製品やシステムの高性能、高付加価値化に加えて、SDGsに代表される持続可能性な社会に向けた省資源、省コスト、省エネルギーの重要性の高まりを受け、様々な分野でデバイスの超小型化が加速しています。例えば通信分野では通信容量の増大や省電力化の要求、5G/6Gの進化に伴って電気から光へのシフトが始まりつつあり、通信用光デバイスとしてSiフォトニクスや光システム(PIC:光集積回路)といった各種のナノフォトニクスデバイスとその集積システムの開発が進んでいます。それ以外にもIoTやヘルスケア、産業用機器やADAS関連デバイスなどの分野においても、紫外、可視、赤外からTHzの幅広い領域で、メタマテリアルやプラズモニクスを活用した自然界にはない特徴を発現させる材料や機能の開発や、フェーズドアレイやナノアンテナによる光波制御、センシングの技術などで、ナノフォトニクス解析の重要性は増しています。
このように、既存の光デバイスの領域だけでなく様々な分野で、ナノ、マイクロサイズの光デバイスはより身近なものとなっています。本記事をお読みになっている皆様の抱える製品開発に対しても、今後、光やナノフォトニクス技術の活用によって大きなブレイクスルーを得られる可能性があるかもしれません。一方で、ナノ、マイクロサイズの光デバイスの設計や解析を行う場合、通常の手法では対応できない事も多く、例えば形状測定や温度測定のような基本的な評価を行う事でさえ、ナノ、マイクロサイズのデバイスに対しては容易ではありません。そのため評価環境の整備、設計や開発の手戻りなど、各開発フローで多くのリソースを必要とします。
ナノフォトニクスデバイス、システム開発を加速・効率化するためには、ソフトウェアシミュレーションを用いた性能解析や仮想試作による試作回数の削減、また感度解析やロバスト性の評価を事前に行い、上流設計にフィードバックさせることや、光以外のマルチフィジクス連携解析(熱、応力、キャリア挙動、電磁波)の活用が重要であることはいうまでもありません。
ナノフォトニクス解析は、電磁気学に基づき波動光学的な解析を行うソフトウェアが必要となりますが、Ansys Lumerical(以下Lumerical)はこのようなナノ・マイクロフォトニクスデバイスや光システム解析に広く使用可能なツールです。また、Lumerical自体のもつマルチフィジクス解析機能に加えて、Ansys ® HFSS™等とも親和性が高く、製品間で連携してマルチフィジクス設計や解析が可能です。本稿では、Lumericalの概要と特徴、およびマルチフィジクスを含む解析事例について紹介します。

図1 フォトニクス適用分野の拡大

Lumericalの概要

2.1 デバイス解析

Lumericalはナノ、マイクロフォトニクスの解析ツールですが、様々なアプリケーションに対応するため複数の解析アルゴリズム(複数の製品)で構成されています。まず、ナノ、マイクロ光デバイスの形状に基づいて、光の特性を解析するDevice Suiteと、PIC(Photonic Integrated Circuit)等の光回路システムの応答を解析するSystem Suiteに分けられます。
現時点の最新版であるAnsys Lumerical 2022R1では、Device SuiteはFDTD 、MODE 、Multiphysicsの3つの製品で構成されています。FDTDは、その名の通りFDTD法(Finite-Difference Time-Domain)を利用したツールであり、最も汎用的に使用されます。解析領域内をYeeセルと呼ばれる単位領域で分割して電場と磁場を計算点に割り当て、Maxwell方程式を差分的に数値解析することで時間と空間の双方に対して解析を行います。解析領域は2D/3Dに依らず、線形/非線形媒質どちらも扱う事ができ、また平面波源や双極子、モード光源など光源の自由度も高いため、周期構造に対する光の振る舞いやフォトニック結晶のバンド解析、微粒子や微細凹凸による光散乱、各種導波路の解析など、幅広い用途に対して解析が可能です。
Lumerical FDTDの特徴として、多係数モデルによる媒質の分散FittingやBFAST(Broadband Fixed Angle Source Technique)により斜入射平面波に対して広帯域光源が設定可能である等、複数波長に対して効率的に解析が行える点が挙げられます。
MODEは特に光導波路の解析を行うツールです。MODEには、varFDTD(variational FDTDの略。3 次元構造の導波路に対してモードの有効屈折率を利用して2次元モデルに置き換えてFDTD解析を行う)、EME(EigenMode Expansion)、FDE(Finite-Difference Eigenmode) の3つのソルバ(解析アルゴリズム)があり、これらを利用して導波路デバイスに必要な各種解析を行います。例えば導波路の各モードの実効屈折率や群屈折率、分散の解析や、導波路の伝搬特性の解析、モード間のオーバーラップ解析等を効率的に計算できます。同様の計算はFDTDでも可能ですが、MODEの方が効率的に解析可能です。

図2 Lumericalデバイス解析ツールの製品群

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