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第28回 半径の公差の累積

直径寸法を半径として扱い、公差累積表に反映する方法を具体例で解説

半径の公差累積とは?直径寸法を使った解析の考え方

今回は、「半径の公差の累積」というテーマで解説します。

これまでの公差の累積では、ほとんどブロックを使ったようなシンプルなものを扱ってきましたが、場合によっては今回のような解析の仕方が必要になることもあります。ここでは、具体的な例を挙げながら説明していきます。

半径の公差累積が必要になるケース

今回扱うのは、L字型のブラケットに穴が開いていて、そこに部品が入ったときに干渉しないようにしたい、つまり部品間の隙間を解析する例です。
コネクターが差し込まれるようなイメージの部品だと考えてください。
これまでであれば、サイズに相当する寸法を順番に足したり引いたりしていけばよかったのですが、今回の部品図 (c) では少し考え方が異なります。

例えば「(a)解析寸法」における部品間の隙間を見るときに公差累積のループを描き、穴の端から中心までを考えると、この部分は半径になります。
直径として扱うと穴の反対側まで進んでしまうため、解析したい寸法に対して都合が悪くなります。
このように、直径寸法の一部を半径として扱う必要がある場合に「半径の公差の累積」を使います。

公差解析図で半径を含むループを確認

公差解析図を描いてみると、今回はかなり混み入った形になります。

(b) 公差解析図において解析寸法となるのは、2つの部品が干渉してしまっては困る箇所の隙間です。この解析寸法をめぐるように、公差累積のループを描いていきます。

まず、穴の端から穴の中心までを考えます。ここは穴の直径の半分、つまり半径に相当し、これが1番目です。次に、この中心の位置を規制しているのが,②~④の位置度公差です。そして、⑤がTED(理論的に正確な寸法)に相当する寸法です。

さらに、そこから⑥の寸法、⑦~⑨の突起部分の中心の位置度、そして,⑩の突起部の直径の半分となる半径へと進みます。
このように解析寸法をめぐってループを描いています。今回、半径の公差解析に相当するのは①と⑩です。

部品図から公差累積の要素を整理

それでは、部品図も見ていきましょう。
これまで、なるべく幾何公差を使わずに説明してきましたが、いよいよ幾何公差が入ります。TEDや位置度が入り、公差累積に見込んでおくもの、一応リストアップしておくものが増えている点がポイントです。それぞれ番号を振っていますので、①から順番に見ていきます。

右側のブラケットには、データムを基準として穴の寸法と位置度が入っています。①から⑤までが該当します。

①は穴の直径です。②は位置度です。③は、位置度公差の後ろにⓂが入るのであれば必要ですが、今回は入っていないため不要で、グレーアウトします。

④も、データムの後ろにⓂが入るかどうかで扱いが変わりますが、この場合は該当しないためグレーアウトします。⑤は穴の位置を示す寸法です。

左側の部品図も順番に見ていきます。データムから始まり、TEDによって出っ張っている部分の中心位置が示されています。
この中心は、設計上の位置にあります。

実際には位置のずれがありますので、それを位置度で示しており、それが⑦⑧⑨ですが実際に使うのは⑦だけです。

位置度0.2の後ろにⓂがないため⑧は使いません。また、データムの後ろにもⓂがないため⑨も使いません。最後の⑩は、直径φ7±0.1の突起部を半径として扱います。

穴の半径は「感度0.5」で公差累積に反映

このように、①から⑩を巡ってループを描き、公差累積表を書いていきます。
それでは、公差累積図と公差累積表を照らし合わせながら、順番に確認していきます。

①は、この穴の半径です。ここが今回の特徴的な部分で、感度を0.5としておきます。
サイズ自体はφ8±0.2です。感度が0.5ですので、寸法とプラスマイナスの許容差がそれぞれ半分になります。

位置度・TEDを公差累積表に追加

②は、穴の位置度です。位置度は0.3ですので、その半分相当の±0.15を記入します。
ボーナス公差とデータムの浮動は今回関係ありませんので、一応項目としては書いておきますが、該当しないものとして扱います。ここは感度が1のままですので、そのまま転記すれば結構です。
これでループとしては①②③④まで終わり、次は⑤です。⑤は10 mmの寸法で、ループの方向としてマイナス側に10 mm下に降りていますので、感度を-1として寸法値は-10になります。
次は(b) 公差解析図の部品に移ります。⑥は、取り付け面から突起部の中心までの設計上の位置を示す寸法です。図面ではTEDとして示されており、上向きですのでプラスとして記入します。このTEDには公差が入っていません。
次のループは⑦です。⑦は突起部の中心の位置度です。⑦⑧⑨がありますが、同じパターンで位置度の部分だけを考慮に入れ、残り2つは考慮する必要がありません。
公差累積表では、⑦の位置度0.2の半分として±0.1を入れておきます。Ⓜがついていないため、⑧と⑨は項目として記載してもグレーアウトさせておきます。

突起部の半径は「感度-0.5」で反映

そして最後の⑩です。⑩は、突起部の中心から下側の外周までの半径です。
直径はφ7±0.1ですので、半径として考えるため、ここでも感度の絶対値は0.5とします。
ただし、今回はループの向きが下側ですのでマイナスがつき、感度は-0.5となります。
先ほどの①は上側に進むため+0.5でしたが、⑩は下側に進むため-0.5です。
その結果、φ7±0.1は、公差累積表では-3.5±0.05として扱います。
少し長くなりましたが、これで公差累積のループを一巡することができました。

半径を含む公差累積の解析結果

公差累積表に記入した許容差をすべて足していくと、累積公差は±0.4 mmになります。
また、各寸法値を足し合わせると、設計上の隙間は0.5 mmになります。
したがって、今回解析している部品間の隙間は、「0.5±0.4 mm」のばらつきが生じる可能性があることが解析できました。
このように、半径の公差解析では、図面上は通常直径で記載されている寸法であっても、半径として考えたい場合には感度を0.5にして公差累積表へ反映します。
また、ループの進行方向によっては、今回の⑩のように感度を-0.5とします。こうすることで、直径で記載されている寸法も半径として見込み、公差累積に含めることができます。

半径の公差の累積を動画でチェック

本記事の内容について、公差累積図や部品図、公差累積表を使って動画で詳しく解説しています。
ぜひご覧ください。

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