みんなの公差
第27回 「がた」による公差の累積
穴とピンの隙間によって生じる「がた」を、公差累積にどのように見込めばよいか
穴とピンの「がた」は公差累積にどう影響するのか
今回は、「がたによる公差の累積」について解説します。
2つの部品を穴とピンで位置決めする場合、組み立てやすくするために「隙間ばめ」を採用することがあります。
しかし、隙間ばめでは、穴とピンの間に隙間があるため、部品が左右に動く「がた」が生じます。
組み立てやすくなる一方で、このがたによって部品間の寸法にもばらつきが生じる可能性があります。
そのため、公差解析では寸法公差や幾何公差だけでなく、穴とピンのがたも考慮する必要があります。
公差累積図から「がた」の影響を確認
今回扱うのは、2枚の板を穴とピンによって位置決めする構造です。
下側の板にはピンが立っており、上側の板には穴が開いています。
穴とピンはすきまばめになっているため、上側の部品は隙間の範囲内で左右に動くことができます。

このとき、部品間の段差などが重要な寸法だった場合、がたによってその寸法が大きくなったり、小さくなったりする可能性があります。それを最小に抑えたいのですが、すきまばめのメリットとして“組立のしやすさ”があります。よって、がたを「0」にはできないケースが多々あると思います。
設計者は、このがたをあらかじめ見込んだ上で、どの程度ばらつくのかを考える必要があります。
公差累積のループに「がた」を組み込む
公差累積図では、解析寸法をめぐるようにループを描いていきます。
図1の例では、輪郭度公差や各部品の寸法に加えて、穴の中心からピンの中心へ移る部分に「がた」が存在します。
このがたも、ほかの寸法や幾何公差と同じように、公差累積に影響する要素として考慮します。
穴とピンの寸法から「がた」を計算

先ほど掲示した図1の場合、①、②、③と3つの項目がまとめて示されています。
まず①は、輪郭度公差です。左上の図の幅の中心に対して、対象となる面の位置に輪郭度0.3が指定されています。
公差累積では、その半分の±0.15と考えていただいて結構です。
データムCについては、今回は浮動を考えないため、データム参照Ⓜが付いた「CⓂ」ではなく、上側の「C」を採用します。
続いて図1 にて④の「19」を見ていきます。これは19 mmの寸法として公差累積に影響します。
ただし、この寸法自体に公差を設定する必要はありません。なぜなら,先ほど,輪郭度公差を見込んでいるためです。
そして、穴とピンの間には「がた」が生じます。このがたの大きさは、穴の寸法「6.05±0.05」と、ピンの寸法「φ5.9±0.1」の引き算から求めていきます。
ワーストケースで「がた」を見積もる
今回は、最もがたが大きくなる「ワーストケース」で計算します。
穴が最も大きい場合:6.05+0.05=6.1 mm
ピンが最も小さい場合:5.9-0.1=5.8 mm
したがって:6.1-5.8=0.3 mm
最大で0.3 mmのがたが生じることがわかります。公差累積表では、この0.3 mmの半分をプラスマイナスとして扱い、「±0.15 mm」として加えます。
「がた」を公差累積表に加える
続いて、公差累積表で確認してみましょう。今回の公差累積表には、輪郭度や各寸法に加えて、先ほど求めた穴とピンの「がた」を±0.15 mmとして追加します。

①は輪郭度0.3です。②はⓂによるボーナス公差ですが、今回は対象外です。
③はデータムの浮動です。先ほどはデータムCを採用すると説明しましたが、ここでは前回の例との比較のため、CⓂを指定した場合として浮動を公差累積表に載せています。CⓂではなくCを指定すれば、この浮動はなくなります。
前回の例では浮動を考慮していたため、今回も比較のため、そのまま公差累積表に載せています。
しかし、位置決めに使用する箇所では、浮動を公差累積に含めることは好ましくありません。そのため、位置決め精度を重視する場合には、CⓂではなくCを指定します。
続いて④の「19」です。これは部品図に示した19 mmの寸法にあたります。
そして⑤が、今回新たに加わる「がた」です。
穴とピンの寸法から「がた」を計算
がたは、穴の幅とピンの直径から計算します。
ここではワーストケースとして、穴が最も大きく、ピンが最も小さくなる状態を考えます。
穴は「6.05+0.05=6.1 mm」、ピンは「5.9-0.1=5.8 mm」となり、その差を求めると、
6.1-5.8=0.3 mm
となり、最大0.3 mmのがたが生じることがわかります。
がたの見積もり方には、いくつかの方法があります。今回は、穴が最も大きく、ピンが最も小さい状態を採用するワーストケースで計算しています。
一方で、がたが一様分布や正規分布に従うと仮定して評価することも可能です。ここではシンプルに考えるため、ワーストケースを見込んでいます。
穴とピンの寸法差は0.3 mmですので、その半分をプラスマイナスとして、±0.15 mmを公差累積表に加えます。
輪郭度など残りの公差を累積表に追加
続いて⑥です。⑥は「29」となっています。
この29 mmは「理論的に正確な寸法(TED)」ですので、この寸法自体には公差は入っていません。
次に⑦の輪郭度を見ていきます。輪郭度は0.4ですので、その半分である±0.2 mmとして公差累積表に加えます。
ここにはⓂが付いていないため、ボーナス公差はありません。
「がた」を加えると累積公差はどう変わる?
ここでは前回の例との比較のため、CⓂを選択した場合として浮動を公差累積表に残しています。
これらの公差を足し合わせると、累積公差は±0.65 mmとなります。
前回の動画 (第26回) でお見せした公差累積表と比較して、今回新たに加わったのが⑤の「がた」です。
浮動については前回と比較するために残していましたが、位置決めとして使用する場合には、本来は考慮すべきではありません。浮動を許容すると、その分だけ累積公差が大きくなっていくためです。
前回の結果と比較すると、今回の累積公差は±0.15 mm大きくなっています。これは、今回追加した穴とピンのがた「±0.15 mm」の分です。
つまり、穴とピンの間にがたが生じる構造では、その影響も公差の累積に加えて評価する必要があります。
まとめ ― がたを考慮した公差解析のポイント ―
今回の例では、2つの部品間の段差がどの程度ばらつく可能性があるのかを解析しました。
その結果、ワーストケースでは、10±0.65 mmのばらつきが生じる可能性があることがわかりました。
このように、穴とピンの隙間によって生じる「がた」も公差累積に影響します
。公差解析を行う際には、寸法公差や幾何公差だけでなく、がたによるばらつきも公差累積に含めて評価するようにしてください。
