#02 公差がなぜ必要なのか?
公差が必要な理由を性能・機能、互換性、はめあいといったポイントに沿って解説
公差とは、英語で言うと「Tolerance(寛容さ)」
元々の意味は部品を作る際にここから“ここまでは完璧にできなくてもよいですよ”という、「許してあげる量(寛容さ)」であったと推測されます。
それが、なぜ日本語では公(おおやけ)の差である公差というお堅い言葉になったのでしょう?
言葉自体をいまさら変えることは難しいですが、公差とは本来「完璧なものは作れない」という前提のもと、「許してあげる量を決めてあげましょう」というものであったのかもしれません。
「みんなの公差 #02 なぜ公差が必要なのか?」では、公差が必要な理由を、下記のポイントに沿って解説します。
- 適合/不適合 の指標
- 性能・機能
- 互換性
- はめあい
- 完全な複製はできない
- 小さな機械は,縮小コピーで作れるか?
公差が必要な理由 1 - 性能・機能

楕円コンパスの例
これは「楕円コンパス」と呼ばれるものです。先端にペンを入れて楕円の軌跡を描きます。
楕円コンパスには、設計として考えなければならないポイントがいくつかあります。

はめあい
2つの部品が 左右上下に動くのですが、横から見てみると狭いところにはまっています。
これを「はめあい」と言います。
楕円コンパスのはめあいにおいては、がたが 0 になるとロックされて動かなくなりますが、許しすぎるとがたがたで緩すぎてしまいます。レールの上を滑らかに、ロックされずに狙い通りに動くということが、楕円コンパスに求められる「機能・性能」です。
公差が必要な理由 2 - 互換性

ボールペンの部品の互換性
次にボールペンを例に互換性の重要性についてご説明します。
このような市販されているボールペンのインクがなくなってしまった場合、新しいインクを買ってきて入れ替えればまた使えます。あるいは、1つの部品が無くなったとしても、部品を交換することもできます。これを「互換性」と呼びます。
今ではあたりまえとなった互換性ですが、昔はこれが意外と難しかったそうです。過去にその物が作られ始めた時から互換性があったわけではなく、互換性はあとから確立されたものになります。
公差が必要な理由 3 - はめあい

はめあいの例
部品と部品がお互いにはまりあっている状態を「はめあい」と言います。
たとえば、身近な例では穴と軸があります。

ペン先(軸)を穴に入れた際の隙間が重要
ボールペンのペン先(軸)を穴に入れた際に、隙間が大きくガタガタ動いてしまうと、ペンを紙につけて力を入れた際にふにゃっとしてうまく書けません。おそらくこのようなペンでは使う人にとって相当ストレスになると思います。
また、ペンを押した時にペン先が詰まって動かなかったら不良品です。そのため、ある範囲に収まるようコントロールすることが、公差解析では重要になります。
公差が必要になる背景 - 完全な複製はできない
たとえば、「カメラをもっと小さくしたい、薄くしたい」「車の室内は広く、でも車自体は小さく」といった要望があると、部品を配置するスペースはどんどん厳しくなります。
小さなものを作りたければ、縮小コピーを続ければよいのでは?とおっしゃる方もいます。確かに、CAD で10mmだった部分を1mmにすれば小さいものができるのでは?と思われるかもしれませんが、そうはいかないのです。
数メートルのものを作るよりも、数ミリのものを作った方が正確には作りやすいのですが、それを続けていくと正確には作れない部分が生じます。そのため、大きさに応じた「許してあげる量」=公差を考える必要があります。
「公差がなぜ必要なのか? 」を動画で解説!
より詳細な内容は、YouTube チャンネル「みんなの公差」で解説しています。ぜひご視聴ください。
#02 公差がなぜ必要なのか?
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