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導入事例

ミクロン単位の設計力で眼科医療機器の信頼性を支える、三次元公差解析の現場

株式会社ニデック

スマートフォンやタブレットの普及、そして加速する高齢化—。目の健康を取り巻く環境が大きく変わる中、「みる喜び」
を技術で支え続けているのが、株式会社ニデックです。
同社では、眼科検査装置や手術機器を設計しており、装置を構成する光学系にはきわめて高い精度が要求されます。光学設
計者が求める性能を実現するため、メカ設計者は厳しい公差条件と貪欲に向き合っています。その高い課題解決に力を発揮し
ているのが、幾何公差を含む位置・姿勢ばらつきを扱える3次元解析が可能なSigmetrix社の「CETOL」です。今回は、同社で
のCETOLの活用についてお話を伺いました。

導入前の課題

  • Excelによる2次元の手計算が中心で、3次元構造や幾何公差を十分に扱えなかった
  • 複数要素が連鎖する設計では検討が煩雑になり、時間と工数が増大
  • 設計段階での検証が不十分になり、手戻りリスクが高まっていた

導入効果

  • 3次元で公差を可視化・解析できる体制を構築できるようになった
  • 設計が固まる前の段階から妥当性を検証できるため、「作ってから気づく」手戻りを未然に防ぎ、開発全体の効率化と品質向上を実現
  • 公差解析の結果を設計根拠として蓄積・共有できるようになった

(左から)夏目様、福岡様

今回お話をお伺いした方々

 

株式会社ニデック
開発本部
眼鏡開発部 開発八課 福岡  類 様
技術開発部 技術開発課 夏目 宏一 様
(以下、お客様の敬称は省略させていただきます。)

1.眼科医療機器を中心に開発。「みる喜び」を世界中の人々へ

御社の事業内容を教えてください。

福岡 類 様

当社は眼に関する技術を軸に、医療分野と眼鏡機器分野、そしてコーティング分野の3つの事業領域で活動しております。医療分野では、眼科検査装置や手術機器、再生医療関連製品などの開発・製造を行っており、光学技術と電子工学を融合させた先進的な製品開発を継続してまいりました。眼鏡機器分野では、眼鏡づくりの全工程をサポートするレンズ加工機や検査・測定機器を提供しています。
また、ニデックの設立目的「見えないものを見えるようにする」という思いから20年以上継続して人工網膜システムの研究開発にも注力しています。
このような事業を通じて、当社は「みる喜び」を世界中の人々にお届けしています。

現在の業務内容やお取り組みを教えてください。

福岡

私は主にメカ設計を担当しており、眼鏡向けのレンズ加工機などの開発に携わっています。
また、設計業務に加えて、社内で公差解析やシミュレーションの活用を広げるための取り組みにも関わっています。具体的には、解析結果の読み方や考え方を設計者が理解できるよう、勉強会の開催や社内向けの情報共有などの活動を行っています。

夏目 宏一 様

私は光学シミュレーションを専門としており、最近は熱解析なども含めた複合的な解析(マルチフィジックスシミュレーション)にも取り組んでいます。
実機検証より前の段階でシミュレーションを活用し、製品の挙動を可視化することで、開発の中で発生するトライアンドエラーや手戻りを減らせるよう、シミュレーションの活用を社内で推進しています。

株式会社ニデック 本社・拾石工場

2.手計算での公差解析の限界がツール導入 のきっかけに

CETOLを導入された経緯や、当時の課題について教えてください。

福岡

公差解析ツール導入は10年以上前のことになります。弊社の製品の中でも特に高い光学精度が要求される製品へのチャレンジが始まった時期でした。それ以前も、Excelを用いて公差計算自体は行っていましたが、基本的には2次元で X方向・Y方向を個別に確認するような手法であり、幾何公差を含めた立体的な検討まではできていませんでした。
しかし、複雑な構造物を扱うようになると、部品同士の位置関係や傾きなどを3次元的に捉える必要性が出てきました。特に、光が複数のレンズを通って折れ曲がり、複数の要素が連鎖的に影響し合う構造物においては、レンズ同士の位置関係の把握が欠かせません。また、複数の寸法変動が連鎖的に影響する構造物では、影響範囲の整理を手計算で確認するのは難しく、見落としのリスクも高まります。
そうした中で、「より確実に、効率的に公差検証できる手段が必要だ」という認識が社内で強まり、ツールの導入に至りました。

CETOL導入の決め手は何だったのでしょうか。

福岡

CETOL導入時にはCADアドオン型の公差解析ツールとも比較しましたが、当時求めていた解析精度や再現性を満たせませんでした。同一モデルをCETOLで検証した結果、信頼できる解析が得られたため、CETOLを採用しました。
導入時には、サイバネット様に来社いただき操作トレーニングを実施していただきました。初期立ち上げをスムーズに進めるうえで、大きな助けになったと感じています。

3.レーザーが関わる装置の高い精度要求にCETOLを活用

実際に、CETOLをどのような解析で活用されていますか。

福岡

光が入射しミラーで複数回反射する光学系の場合、各レンズの位置がどのように変動するか、また傾きを含めて5自由度(XYZ各軸と回転2軸)でどう変わるのかを確認する必要があります。このような複雑な構造全体に対して、CETOLを使って公差解析を行っています。

傾きを含めた5自由度(XYZ各軸と回転2軸)を確認している

公差解析の効果が発揮されているのは、特にどのよ うなケースでしょうか。

福岡

当社の製品の中で公差が厳しいもののひとつは、OCT(Optical Coherence Tomography: 網膜の断面を高精細に撮影する光干渉断層計)です。OCTは眼の網膜の層構造を高精細に撮像する装置で、スキャン精度がそのまま性能に直結します。
さらに、レーザーが関わる装置でも、高い公差精度が要求されます。例えば、レーザー光凝固装置(網膜にレーザーを照射し、疾患部を治療する装置)では、医師が治療位置を確認するための照準光と、実際に照射する治療レーザーの位置が正確に一致していなければなりません。
この2つにズレが生じると、本来照射すべき治療部位から外れてしまい、治療効果の低下につながります。場合によっては、患者様の視力に影響を及ぼす可能性もあります。また、治療用レーザーの焦点が正しく合っていなければ、必要以上に高いエネルギーが必要になったり、治療対象を十分に処置できなかったりすることがあります。こうした厳しい精度要件のもとでは、3次元の公差解析ツールが不可欠です。

機構が組み合わさるごとに計算が複雑になる

公差解析結果の良し悪しは、どのように判断されていますか。

福岡

アナライザーで公差の寄与度(影響度合い)を確認し、最も影響の大きい要素(部品)を特定します。
それを実際の機構の動きと照らし合わせ、妥当性を判断します。
自分が想像していた結果と異なる場合や、機構の動きと寄与度の高い部品が一致しない場合には原因を詳しく確認・追求します。経験上このような不一致はジョイント部分で発生することが多いと認識しています。このようにCETOLの解析結果を鵜呑みにすることなく、必ず結果の内容(詳細)を確認するようにしています。

4.暗黙知だった設計ノウハウを、公差解析で”組織知” へ

社内で公差解析の普及活動をされているとのこと。活動内容について教えてください。

福岡

当社では主に2つの活動を行っています。1つは設計関連ツール全般を管理するチームの活動で、私はそこで公差解析ツールの管理を担当しています。水平展開と利用・普及率向上を目指し、「公差解析とは何か」という基本的な勉強会を開催してきました。
もう一つは、マニュアル整備のための活動です。
今年は特に、当社独自の操作方法や、ベンダー提供のFAQには書かれていない事項を記載する予定です。特に結果の読み方を重視しています。

参加者の反応や、参加後の変化・取り組みについて教えてください。

福岡

公差解析の普及率自体はまだそれほど高いとは言えませんが、試作で問題が発生した際に「公差解析ツールを試してみよう」と相談に来る設計者も増えてきました。実際にCETOLで原因を特定できると、その有効性を実感してもらえます。将来的には、設計段階から設計者に活用してほしいと考えています。
また、設計ノウハウの可視化と保存にも力を入れており、これまでは暗黙知として設計者の頭の中に留まっていた知見を、公差解析やシミュレーション結果として形式知に変え、組織全体で共有できるようにする取り組みを行っています。

適切な公差解析により設計全体の手戻りを削減

今後の課題や期待をお聞かせください。

福岡

まずは社内でのCETOLの普及率向上です。これにより設計工数や手戻りを減らし、設計の質を高めたいと考えています。公差解析の重要性が社内に浸透すれば、見落としも減っていくはずです。

夏目

加えて、公差解析における光学設計とメカ設計の連携をさらに強化したいと考えています。両者が信頼できる公差計算のノウハウを共有し、判断のばらつきを減らしていくことが重要だと思っています。

公差解析を通じて、将来的にどのような設計体制を構築したいですか。

福岡

設計者全員が公差解析を実施し、その結果を設計根拠として残す体制を目指しています。ノウハウが蓄積されれば、次の設計変更でも過去の解析結果を活用しながら、根拠ある設計が可能になります。案件に応じて2次元計算などと使い分ける柔軟さも必要だと思います。

夏目

現在は光学設計とメカ設計が分業になっていますが、本来は両者が組み合わさって初めて製品性能が決まります。お互いの領域に少し踏み込みながら、協力して設計を検討できる体制を築いていけるよう、日々活動しています。

御社での活用推進をサポートするため、弊社でお手伝いできることはありますでしょうか。

福岡

FAQやサポートには助けられていますが、結果の読み方や測定点の設定方法など、具体的な事例がさらに充実すると活用の幅が広がると感じています。解析結果の妥当性をどう判断するかといった実践的なノウハウが増えると、社内教育にも活用しやすくなると思います。
技術サポートの対応は迅速で心強いのですが、ユーザーサイトで事例が体系的に共有されると、より自己解決しやすくなると感じています。

「患者様のために精度の高い眼科医療機器を提供する」という真摯な思いのもと、CETOLの活用がさらに広がり、設計根拠の蓄積や開発効率の向上につながることを期待
しています。今後の活用拡大と設計業務の高度化に貢献できるよう、引き続き精いっぱいサポートしてまいります。

※本事例のPDF版は下記よりダウンロード可能です。

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