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導入事例

設計者による CETOL 活用の軌跡と公差解析の成功事例

株式会社ハイレックスアクト

株式会社ハイレックスアクト(以下「ハイレックスアクト」)では、自動車用ラッチ部品を中心とした自動車部品の設計・製造において、CETOL 6σ(以下 「CETOL」)をご活用いただいております。

 

2025年10月15日に開催された「公差×3Dデータを活用したものづくりセミナー」にて、同社よりCETOL活用推進の経緯や社内でのお取り組み、導入によって得られた効果、今後の展望についてご講演いただきました。CAE解析グループの立場から、元設計者としての視点も交えながら、CETOL活用推進における試行錯誤の過程や得られた成果について、具体的な事例とともにご紹介いただいた内容を、本記事ではご紹介させていただきます。

ご講演いただいた方

株式会社ハイレックスアクト
グローバル営業・開発本部 システム開発部
田村 俊輔様

Profile : 入社当初はメカ設計グループに所属し、製品設計を担当後、2021年に現在のCAE解析グループに異動。CETOL をはじめとした「設計者CAE」ツールの活用を部内に広めるため、自らツールを使いながら設計者に布教活動中。

※ご講演当時の社名は「三井金属アクト株式会社」。現在は「株式会社ハイレックスアクト」に社名変更されています。

ハイレックスアクトにおける製品設計

ハイレックスアクト(旧:三井金属アクト)は、1962年に三井金属が設立したダイカスト事業部を起源としています。事業再編や分社化を経て2010年に独立企業として発足し、2025年にはハイレックスコーポレーション傘下のもと、新たな体制でスタートを迎えます。現在は、一定規模の資本金・売上高を有し、世界10か国に拠点を展開するグローバル企業として事業を展開しています。
主力製品は、自動車用部品の中でもサイドドアラッチを中心としたラッチ製品です。さらに、ラッチにモーターを組み合わせたクローザーや、ECUを搭載したドライブユニットなど、ドアシステム全体を支える製品を幅広く提供しています。
私はグローバル営業・開発本部のCAE解析グループに所属しています。2021年の異動前まではメカ設計を担当していました。サイドドアラッチやアクチュエーターなど、さまざまな製品の設計に携わってきた経験を活かし、現在は設計者の視点を持つCAE専任者として、設計現場と解析部門をつなぐ役割を担っています。

CETOL 活用推進の背景 - 従来の手法における公差解析の課題

公差解析における手作業ゆえの限界

以前は、CADを用いた公差解析を手作業で行っていました。モデルを分解し、最大・最小形状をCAD上で作成した後、それらを組み合わせて積み上げ値を確認し、最終的には表計算ソフトで二乗和を算出する――こうした手順です。
図1 : CADによる従来の公差解析イメージ
しかし、標準化された手法がなく、解析者のスキルや判断に大きく依存していたため、結果に個人差が生じやすい状況でした。抜け漏れによる誤解析や、誤った前提のまま試作し、手戻りが発生するリスクも常に抱えていました。

CETOL導入の停滞と再始動

実は、比較的早い段階で一部の設計者がCETOLを導入し、実務での活用を試みていました。しかし、十分に使いこなせないまま、次第に社内での存在感は薄れていきました。元設計者である私自身も、CETOL の存在を忘れかけていたほどです。一方で、製品は多機能化に伴い、構造はますます複雑化し、従来の手作業中心の手法では限界が明確になってきました。
そこでCAE解析グループが介入し、「設計者がCETOLを実際に使いこなせる状態」を目指して、活用推進を本格的に進めることになりました。

CETOLを設計現場に定着させるための3つの取り組み

CETOLを社内で本格的に活用していく上で、最大の課題は「設計者が自ら解析できる状態」をつくることでした。
ここでは、私自身がどのように導入を進めてきたのかを、3つのステップに分けて紹介します。
図2 : CETOL 活用推進の 3 つのステップ

1. まず自分で使い、効果を体感する(2021年度)

CAE解析グループへ異動した直後、私自身がいわば“人柱”としてCETOLの操作教育を受け、自社製品を用いたトライアル解析に取り組みました。
実際トライアル解析を行ってみると、従来の手作業では数時間を要していた最大・最小形状の作成や積み上げ値の確認が、CETOLを使えば数十分で完了することがわかりました。誤った操作もエラーとして即座に指摘されるため、後工程でのトラブルや手戻りのリスクを大きく減らせることを実感しました。
この経験から、「設計者自身が解析したほうが、工数削減の効果は圧倒的に大きい」と確信し、CETOLを部内に広めていくことを自分の役割として取り組む決意を固めました。
図3 : 第1段階(2021年度)検討開始 ~ CETOL を知る

2. 実績を作り、徹底的に“存在を知ってもらう”(2022年度)

次のステップでは、まず設計者にCETOLの存在を知ってもらうことを最優先にしました。

私自身がデザインレビューや設計グループの打合せに積極的に参加し、公差解析が必要そうな案件を見つけては、呼ばれなくても自分から“お節介”に解析を実施して実績を積みました。解析結果はマトリクスや図解、アニメーションなどを用い、設計者の視点で直感的に理解できる資料の形にまとめました。

こうした ”お節介解析” の取り組みを通じて、1年間で約12件のトライアル解析を実施。その結果、CETOLの認知度は大きく向上し、「実際に役に立つ」という手応えが設計現場に浸透していきました。

一方で、アンケートでは「効果は理解できたが、操作の手間がかかりそう」という声も多く、”操作の壁”が依然として大きな課題であることも明らかになりました。
図4 : 設計者に対するアンケートにてCETOLの認知度や操作教育に対する意見等をリサーチ

3. “操作の壁”を取り除き、使える環境を(2023〜2024年度)

第3段階では、設計者自身が解析できるようにするため、操作教育の強化に取り組みました。
説明会ではまず、アンケートで多く挙がった「操作の手間」について、私が全面的にサポートすることを明確に伝えました。サポートはメール相談だけでなく、必要があれば設計者に対してマンツーマンで操作を教えるなど、“使い始めの壁”を徹底的に下げる体制を整えました。

この前提のもと、実際に設計者向けの操作教育を開始しました。製品開発の担当グループごとに、設計者側のCETOL中心人物を管理職が指名し、再びサイバネット様のご協力で教育を実施。若手を中心に複数名が受講し、CETOLの実務活用を目指して受講後1年間様子を見ました。しかし結果として、受講者が業務でCETOLを使うことは一度もなく、この年の取り組みは失敗に終わりました。

原因を分析すると、大きく2つありました。1つ目は、受講者の担当開発でたまたま公差解析が必要になる場面がなく、結果的に受講動機が弱かったこと。2つ目は、実はCETOLを本当に使いたい設計者がいたにもかかわらず、スケジュールの都合で教育を受けたくても受けられなかったことです。
つまり、必要としている設計者が都合の良いタイミングで受講できる環境づくりが重要だったと反省し、翌年度にリベンジすることにしました。

教育環境を刷新し、誰でも受講しやすい仕組みへ

翌年度はアプローチを大きく見直し、従来2日間かけていた教育内容を1日に凝縮した独自教材を作成しました。さらに複数日程を用意し、業務都合に合わせて受講できる環境を整備。私自身が講師を務め、柔軟な運営で受講のハードルを下げました。

その結果、受講者は大幅に増加し、メカ設計者の約半数が受講。実務活用も広がり、2025年度にはライセンス稼働率100%が継続し、追加購入が必要となるほど社内需要が拡大しました。
図5 : 設計者の活用が増えて CETOL のライセンス稼働率が上昇

CETOLによる3次元公差解析の効果

効果 1 ばらつき不具合の未然防止により試作サイクルを1回削減

CETOLの社内活用を進める中で、開発効率を大きく改善できた事例があります。

図6: ドアラッチ内部部品の解析モデルイメージ

対象となったのは、ドアラッチ内部の部品です。この部品は3次元的に斜めに配置され、周辺の複数部品と複雑なクリアランス関係を持っていました。 従来のCADベースの手作業では、立体的なばらつきを正確に把握することが難しく、試作段階で干渉が発覚するリスクがありました。

そこでCETOLを用いて3次元のばらつき解析を実施したところ、ばらつきを考慮した上でもクリアランスを確保できる最適な公差設定を導き出すことができました。その結果、干渉不具合を試作前に防止でき、試作サイクルを1回分削減することができ、開発期間の短縮と試作費用の削減を同時に実現しました。
図7 : 干渉不具合を試作前に防止でき試作サイクルを1回分削減

効果 2 公差解析の工数を 90%削減 — 数値を変えるだけで再解析

CETOLでは、1つの解析モデルを使い、複数箇所の公差値を変更しながら繰り返し解析することができます。ジョイント設定や寸法公差の再設定といった作業を省けるため、その分、解析工数の削減につながります。

実際に、リンク機構を備えたラッチ部品において、ストロークや軸間ピッチのばらつきを検討する解析を行いました。初期設定で一度解析モデルを作成した後、公差値のみを何度か変更しながら適正値を検討しています。
従来手法では、公差値を変更するたびにCAD上でモデルを作り直し、再度組み立てる必要があり、非常に手間のかかる作業でした。一方CETOLでは、解析モデルさえあれば数値を打ち換えるだけで再解析が可能となり、大幅な工数削減を実現できます。
この事例では、1つのモデルで6箇所の公差について、それぞれ約5回ずつ公差値を変更して検討を実施しました。従来であれば約15時間を要していた作業が、CETOLでは約1.5時間で完了し、解析工数を約90%削減することができました。
図8 : ジョイントや寸法公差の設定操作が省ける分、解析工数を削減

副次的効果 — “人が変わる”という最大の成果

1. レビューの資料作成や説明の時間を削減

CETOLは画面表示がわかりやすく、解析内容をそのままレビューの場で共有できます。解析結果を資料に落とし込む必要がなく、CETOLの画面を直接表示して説明できるため、資料作成や説明にかかる時間を削減できました。視覚的に理解しやすく、エンジニアの納得感を得やすい点も大きな効果です。

2. 設計者が解析ツールを積極的に使おうとする意識が生まれた

CETOL の活用をきっかけに、設計者が解析ツールを自ら使おうとする意識の変化が生まれました。これはCETOLに限らず、CAE結果全体を設計に活かそうとする姿勢につながり、実際にCAE専任者への解析依頼も増加しています。「人の意識」を変えられたことは、CAE解析グループとして最大の収穫でした。

3. 部品の配置や機能など、製品理解が深化

解析操作、特にジョイント設定を行う過程で、部品の配置や機能への理解が深まりました。その結果、CETOLは新規配属者への製品教育にも活用でき、設計スキルの向上や、働きがいの向上につながった設計者もいます。これは私個人にとっても非常に大きな収穫でした。

活用が進んだからこそ、継続が重要

CETOL活用推進の取り組みにより、短期間で大きな成果を得ることができました。一方で、ここで設計者任せにしてしまうと、再び活用が停滞してしまうリスクもあります。
そのため現在も、操作を忘れてしまった設計者へのフォローや、ツールが苦手な設計者への個別サポート、新入社員・キャリア入社者向けの継続的な教育といった、地道な支援を続けています。
良い状態を維持し続けるためには、日々のフォローアップが欠かせません。この取り組みは、今後も継続していく考えです。

今後の展望 ― 公差緩和による“経済設計”への挑戦

CETOL活用が社内に根づいた先に、私が大きく期待しているのが、公差緩和による“経済設計”への適用です。
CETOLの寄与度解析を用いることで、製品のばらつきにほとんど影響しない公差を見極めることができます。そうした公差を適切な範囲で緩和すれば、部品加工が容易になり、結果として製造コスト低減につながる可能性があります。
さらに、量産品の実測データが蓄積され、単品寸法のばらつき実力を把握できるようになれば、統計的根拠に基づいた、より踏み込んだ公差緩和も視野に入ってきます。
「公差を厳しくする」だけでなく、「緩めてコストを下げる」という設計の発想を、CETOLは実現可能にしてくれます。
図9 : ジョイントや寸法公差の設定操作が省ける分、解析工数を削減
その一方で、この取り組みには生産技術、品質保証、サプライヤなど、関係部門を巻き込んだ共通理解が不可欠です。今後はこれらの部門と連携しながら、公差に対する考え方を全社的にそろえていく必要があります。

CETOLへの期待

最後に、日々CETOLを使い続ける立場として、今後に向けて少しだけ期待していることをお話しします。
操作面では、特にジョイント操作がより直感的になることで、設計者がさらに使いこなしやすくなるのではないかと感じています。操作に迷う時間が減れば、解析そのものにより集中できる環境が整うと思います。

また、利用者が増えてきた今だからこそ、より導入しやすいライセンス追加の仕組みが整えば、活用の幅はさらに広がると期待しています。
解析結果についても、ばらつきのグラフなどをそのまま資料に活かしやすくなることで、日々の業務がよりスムーズになるのではないでしょうか。

さらに、CATIA 版ではCAD環境との連携が進めば、設計から解析までの流れがより自然につながり、設計フロー全体の効率化にもつながると考えています。
今後もCETOLが、設計現場にとってより身近で、頼れるツールとして進化していくことを期待しています。

-----------------------------------------編集後記-----------------------------------------
田村様、このたびは貴重なご講演をいただき、誠にありがとうございました。
現場で培われた率直なご意見や実践的な知見は、私たちにとっても大変励みとなりました。
今後もCETOLの活用がよりスムーズに進むよう、引き続きしっかりとサポートさせていただきます。
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