解析事例
Ansys EMC PlusによるPCB間接放電解析事例
静電気に対する金属筐体シールド効果検証
Ansys EMC PlusによるPCB間接放電解析事例の概要

こんな方におすすめ
- 電子機器や電子部品に対するESD耐性評価を検討されている方
- 静電気の間接放電によるPCB影響を確認したい方
- 解析を活用することによりシールド設計を効率化したい方
解析概要
今回の事例では、PCBを囲う金属シールドに対して静電気を模擬した信号を印加することで、PCBへの間接放電による影響を確認し、シールド効果を評価しています。
使用ソフトウェア
背景/課題
帯電した物体などが電子機器に近づくと静電気放電が発生し、その結果、製品の動作不具合や故障を発生させてしまう可能性があります。 エレクトロニクス製品、特に自動車や航空宇宙の分野では、安全で安心なデバイスおよびシステム動作が求められており、電子機器に対するESD対策が今後益々重要となっています。
ESDの対策方法として、金属シールドを用いてPCBへの放電を抑制する手法は一般的ですが、間接放電による影響を過去知見等から事前に設計考慮することは難しく、手戻りが発生した場合に膨大な工数と対策コストを発生させ、納期遅延やコストアップによる製品価値の低下を引き起こします。
Ansys EMC Plusでは、金属シールドに対して静電気を模擬した信号を印加することで、PCBへの間接放電による影響を評価することが可能です。
解析手法
Ansys Charge Plusの気中放電の解析は、時間領域での有限差分時間領域(FDTD)ソルバーと非線形空気化学モジュールを組み合わせることで空気中の気中放電の解析を行います。
解析モデルは、ESD Gunとスマートフォンのモデルを配置し、ESD Gunと対象のスマートフォン間に気中放電の解析領域としてBreakdown領域を定義します。
Breakdown領域の電流/電圧や空気の導電率、スマートフォン内部の基板表面の電流密度の時間変化を観測することで気中放電の発生箇所や条件、その影響を予測することが可能です。
解析モデル

図. 解析モデル全体
PCBを囲うようにアルミニウム製のシールドを配置。

図. ESD経路と電圧プローブの設定
ケースの上側角にESD印加ポイント、対角点に逃がす経路を設定し、以下の波形を印加した際の電流の流れを確認します。
また、基板中心の表層と裏面層の間に電圧プローブを設定し、シールドのESD電流によるPCBへの間接放電影響を確認します。

図. ESD印加波形
ESD規格の定義に合わせた波形を設定。
解析結果

図. ESD電流印加時のシールド上の電流の流れ
ESD電流が印加箇所(右手前)から、シールド上を広がって流れていく様子が確認できる。

図. ESD電流印加時のPCB上の電流
ESD印加後(右)は、ESD印加前(左)と比較して間接放電による電流がPCB全体に流れていることが確認できる。

図. PCBに設定したプローブでの電圧時間波形と周波数特性
ケースへのESD印加によるPCB間接放電の影響を、時間波形と周波数特性にて確認。
周波数特性から、支配的な周波数成分を見極めて対策検討の参考とすることも可能。
本解析の効果
この様に、解析によってESDの影響を設計段階で確認することで、間接放電の影響を含めて製品設計を最適化し、製品の規格合格や信頼性の向上に貢献することができます。