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導入事例

公差解析ツールの活用により組立品質が向上し、 大幅なロスコスト削減に

グローリー株式会社

今回の訪問先は、兵庫県姫路市に本社を置くグローリー株式会社様 (以下「グローリー」) です。
通貨処理機の世界的リーディングカンパニーとして知られる同社は、2020年4月に3次元公差解析ツールCETOL 6σ(以下「CETOL」)を導入し、通貨処理機内部にある硬貨処理部において公差解析を実施されています。
本インタビューでは、機能生産技術部の辻崇志様に、公差解析を担当されている現場のチーム構成、CETOLの利用例や導入効果についてお伺いしました。

グローリー株式会社 本社工場 機能生産技術部
(左から) 西脇 將太様、辻 崇志様、末瀬 啓太様

今回お話をお伺いした方々

機能生産技術部
辻  崇志 様

開発部担当者と共同で公差解析を実施し、公差設定の要望を設計に取り込んで頂きました

グローリー株式会社 海外カンパニー 開発・品質保証本部
コア事業開発統括部 流通製品開発部
(左から)大西 秀治様、川眞田 晃久様

(以下、お客様の敬称は省略させていただきます。)

グローリーにおける製品開発

貴社の事業、主要製品についてお聞かせください。

当社の主要な製品は紙幣両替機や釣銭機をはじめとした通貨処理機です。
1950年に、国産初となる硬貨計数機を世に送り出して以来、通貨処理機のパイオニアとして、「認識・識別」「メカトロ」技術をコアテクノロジーとした、お金を「見分ける」「数える」「束ねる」商品を数多く開発してまいりました。
世界各国の金融機関様、流通業界様等でご利用いただいております。
その中でも当社の硬貨処理機は、形状、厚みやサイズの異なる各国硬貨を高速で計数し、選別・包装します。
細やかで複雑な作業をハイスピードで処理する必要があり、通貨処理の各工程でさまざまな技術が投入されています。
その検証の一環として取り入れているのが、CETOLによる公差解析です。
社屋のお写真

ご担当の業務についてお聞かせください。

私は機能生産技術部に所属しております。
私たちのミッションは、「安定した品質、最適なコストでものづくりができる製品を開発すること」です。
機能生産技術部は3つのグループで編成されておりますが、特に私たちが所属する部品技術グループの解析チームの具体的な取り組みとしては、各種CAEツールを用いて開発段階の製品検証と量産で発生した問題解決を行っています。
また、当社ではグループ全体でGLORY TRANSFORMATION2026を掲げており、それを達成するための「2026中期経営計画」を策定しています。この計画に基づき、当部門でもより経営計画に適した生産プロセスを実現できるよう、日々研究を重ねているところです。

生産プロセスの設計で公差解析ツールの 必要性を感じ、導入を検討

CETOL導入に至る経緯についてお聞かせください。

2019年頃、生産過程に入った製品の公差課題が大きいという問題が生じました。
サイバネット様の導入事例ページに掲載されていた企業と面識がある者が社内におり、相談したのがきっかけです。
このようなツールは、本来は我々ではなく、設計・開発部隊が必要としているものでした。
しかし、生産プロセスの設計をするなかで公差解析の必要性を強く感じておりましたので、先述のユーザー事例を例に挙げ、社内の関係部門に「生産技術でも公差解析を導入すべき」と訴えました。

CETOL選定の決め手はどこにありましたか。

公差解析ソフトを検討した際に、
・解法が「システムモーメント法」であること
・レバー比の解析と出力ができること
・ガタの解析と出力ができること
・公差最適化が容易であること
・ 工程能力指数が結果として出力できること
といった弊社の要求をクリアできそうなソフトがCETOLのみでした。
トライアルをさせていただいたところ、操作の習熟は必要だったものの要求項目を全て満たすことを確認できたため、CETOLに決定しました。

公差解析をされているチームの構成/人数や教育に向 けた取り組みについてお聞かせください。

現在は、生産技術の解析担当者が3名おり、そのうち2名がCETOLを使用しています。
設計部門、製造部門それぞれから相談を受けた製品の公差解析を、社内で少しずつ広めている状況です。
また、社内での活用推進に向けて、サイバネット様にツールの教育を2回実施いただいており、2024年4月現在では、下記のメンバー構成で公差に関わる技術者達が受講しています。

設計部門 2名
製造部門 2名
生産技術部門(当部) 8名(部品技術4名 試作4名)

公差解析事例:複雑な組み合わせ機構の 解析に公差解析ツールが必要

CETOLは具体的にどのような部分の解析に活用され ていますでしょうか。

硬貨処理機の集積部の組立公差で利用しています。集積部とは、入金された硬貨を集積しておき、出金時に硬貨を送り出すために使われるものです。複雑な要因が絡むことで問題が発生しており、手計算による公差解析では完全な解決に至ることができませんでした。
図1は集積部の全体モデル図です。本ユニットは複数の焼結、板金、樹脂とさまざまな部品で構成されています。
図1 硬貨集積部 モデル
図2 硬貨集積部 動作イメージ
図3 公差解析測定箇所
円盤を回転させて、集積している硬貨を搬送するのですが(図2)、その際に硬貨ガイドと呼んでいる部品と円盤の隙間に硬貨が挟まらないよう、隙間をできるだけ狭くする必要があります。
一方、狭くしすぎると各部品の寸法などがばらついた際に干渉してしまいます。
さらに、隙間は部品の7箇所(図3)で確認しているのですが、一部の隙間では接触し別の隙間では硬貨が挟まる等、非常に適正範囲が厳しく、複数の部品を経由して組立てられているため、寸法設定も非常に複雑になっていました。
手計算で精度よく公差解析を完了させることが難しかったのですが、CETOLを活用し、部品の工程能力を考慮した上で形状や精度を決定することで問題の解決に繋げることができました。

CETOLの導入で組立品質が向上し、 大幅なロスコスト削減を実現

CETOL導入の効果を具体的に教えていただけますか?

不具合が大幅に減少しました。導入前、硬貨集積部の組立品質は1.93σで、不具合が発生したユニットは2回組み替えた後は硬貨ガイドを廃棄していましたが、CETOL導入後は不具合が発生しなくなりました。
これにより導入前との比較で2,000万円以上のロスコスト削減が予測されています。
他のユニットも同様で、従来組立品質が1.56σであったものが、導入後は不具合が発生しなくなり、1,000万円以上のロスコスト削減につながると予測されます。

<硬貨集積部>
●組立品質の向上
   (導入前) 1.93σ(2回の組換え後、廃棄)
⇒(導入後) 6.00σ以上 組換え回数0、廃棄0、組立現場クレーム0

●不具合減少によるコスト削減効果
⇒(導入後)2,000万円以上のロスコスト削減

<その他のユニットの例>
●組立品質の向上
   (導入前) 1.56σ
⇒(導入後) 6.00σ以上

●不具合減少によるコスト削減効果
⇒(導入後)1,000万円以上のロスコスト削減

今後の展望

CETOLについて率直なご意見をお聞かせください。

利用期間に合わせて、もう少し低価格で利用できるプランなどがあると、ありがたいと感じます。

今の貴社での課題についてお聞かせください。

CETOLの利用に関しては、公差解析の概念や解析時の設定が慣れるまでは少々難しいため、サイバネット様に同じ内容で解析いただくことでベンチマークしています。もう少し設定が簡単にできるといいな、と思います。
また、公差解析の課題ではないですが、私達が担当している生産技術のシミュレーションでは、微小で速い現象の解析が必要です。モールディング(樹脂成形やダイカスト)、プレス(板金、型鍛造)の、成形応力、変形応力(加工硬化含む残留応力)に加え、溶接時の熱応力、硬貨流動のトライポロジ(流動通過抵抗、摩耗)が計算の対象となります。
計算しづらい現象を、いかに効率よく計算できるかが大きな課題と感じています。

この度は貴重なお話をお伺いさせていただき、誠にありがとうございました。
公差解析の推進はもちろんのこと、生産技術分野のさまざまなシミュレーションについても、お客さまの課題解決に向けてご支援を続けさせていただければと思います。

※本事例のPDF版は下記よりダウンロード可能です。

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