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導入事例

公差解析で高品質な設計を実現、設計スキルも向上  EIZO株式会社 様

今回はEIZO株式会社様を訪問させていただき、サステナブルデザイン&開発プロセス統括部 造形設計課の池田様と奥田様より、公差設計に本格的に取り組んだきっかけや、その効果などについてお話を伺いました。
同社は2015年に公差解析の取り組みを開始し、翌年に3次元公差解析ツールCETOL 6 σ(以下「CETOL」)を導入されています。
CETOLを活用して設計される製品は拡大しており、今やCETOLは設計品質を確保するツールとして欠かせない存在になっているとのことです。

今回お話をお伺いした方々

サステナブルデザイン&開発プロセス統括部 造形設計課
課長 池田  靖 様
グループリーダー 奥田 昌大 様

(以下、お客様の敬称は省略させていただきます。)

ビジュアルシステムのトータルソリュー ションを提供

事業内容を教えてください。

奥田 昌大 様

当社は1968年の創業以来一貫して映像に携わり、「Visual Technology Company」として、一般的なオフィスやご家庭のみならず、ヘルスケア、クリエイティブワーク、航空管制、監視、船舶、MIL規格対応、アミューズメントなど社会のあらゆるとこ
ろに幅広くソリューションを提供しています。
100%自社開発・自社生産を貫いており、強い開発基盤を構築することで、多様なニーズに応える新しい価値を創造するとともに、開発から製造、アフターサービスまでの一貫した厳しい品質管理を通じて、高品質・高信頼の製品をお客さまへご提案します。

池田 靖 様

私たちの部の名前にもサステナブルデザインという言葉を入れているように、環境に関する取り組みに力を入れています。製品の材料には環境負荷の低いリサイクル素材を選定し、材料となるプラスチックの使用量削減に継続的に取り組んでいます。

図1 多岐にわたるEIZOのソリューション
図2 モニターの外装には再生プラスチックを50%以上使用

担当業務について教えていただけますか。

奥田

私は入社以来、オフィス向けのモニターを中心とした開発を担当してきましたが、現在はモニターだけでなくカメラ機器等を含めた機構設計のグループリーダーを務めています。
構造解析や公差解析ツールの導入・運用も担当しており、CETOLは液晶ディスプレイはもちろん、カメラや映像を配信する機器
などさまざまな製品に使用しています。

公差解析の精度や効率を向上するため、ツール導入を検討

公差解析に取り組んだきっかけを教えてください。

奥田

きっかけは、上司から当時の公差計算に関する課題を指摘されたことです。
計算上は成り立たない個体があるはずなのに、実際に組み立ててみると全数問題なく組み立てられてしまうこともあり、その事象を理論的に説明することができませんでした。
そこで公差解析について記事を読んだりツールを調べたりしながら、まずは始めやすいExcelを使って本格的に公差解析に取り組むことにしました。

当初はExcelで公差解析をされていたのですね。その後CETOL導入に至ったのはなぜでしょうか?

奥田

精度や効率を考えると、公差解析には専用ツールが必要でした。
Excelは誰もが使い慣れているものですが、1次元方向の解析しかできませんし、公差計算をするためには新しいファイルを作成し、手動で入力編集作業をおこなわなければなりません。
手作業が入るとどうしても数値の入力ミスが発生しやすく、確認に時間を要します。
専用ツールであるCETOLはCADと連携しているため、解析時の部品検索や設定確認も容易です。
また、計算結果が図やグラフで表示されるので、視覚的にも分かりやすいと感じています。

複数ある公差解析ツールの中からCETOLを選定いただいた理由を教えてください。

奥田

ツールの候補はCETOLともう一つあり、CETOLは公差解析の手法としてシステムモーメント法を使っていますが、もう一方はモンテカルロ法を採用していました。
モンテカルロ法は設定次第で計算時間が変わるため、設定を簡単なものにして早く計算を終わらせる、といったこともできてしまいます。計算方法によって結果がばらつくため、信頼できる解を求めるのが難しいと感じました。
一方システムモーメント法は、いつでも同じ計算結果になるという点が魅力です。
これが決め手となりCETOLを選定しました。導入当時の当社にとっては少し高価なツールでしたが、経営層も公差解析の必要性を認識しており、導入までスムーズに進めることができました。

CETOLを活用した公差解析の事例:3次元解析で回転も考慮した計算が可能に

CETOLでは1次元解析と3次元解析をされていますね。事例をご紹介いただけますか。

奥田

1次元解析では、放熱シートの事例があります。
放熱シートは、高熱のIC部品を効率よく冷やすために貼るシートで、厚み方向のみを考慮した1次元公差解析を実施しています。1次元なのでExcelでも解析できるのですが、CETOLでは、Cpk(公差域幅と実際のばらつき幅との比)や歩留まり率など様々な判定方法が使えるため、Excelよりも詳細な確認が可能になり、精度向上につながります(図3、図4)。

図3 モニターの基本構造
図4 CETOLによる放熱シートの1次元公差解析

奥田

3次元解析としては、画欠けと呼ばれる不具合の事例があります(図5)。
画欠けとは、液晶表示面の端がフロントの枠と重なり、画面表示エリアの一部が見えなくなってしまう現象です。
従来は、1次元解析で左右・上下方向における画欠けの有無を確認していましたが、液晶パネルには回転成分もあるため、公差解析の条件として不十分では、という懸念がありました。
そこで、CETOLを使って3次元解析をおこないました。ジョイント設定により3次元による動きをうまく表現し、回転も考慮した詳細な計算ができるため、画欠けへの公差の寄与度を確認しながら、効率よく対策できます。

図5 CETOLによる画欠けの3次元公差解析

奥田

一番効果を感じているのは、公差に起因する不具合を未然に防げるようになったことですね。
設計担当者にとっての大きなメリットは、自分の設計について、自分自身で説明ができることです。
公差設定の根拠を示しながら説明し、検証の結果を共有することができるため、デザインレビューも円滑に進むようになりました。
さらに、私はCETOLの使用は設計スキルの向上につながると考えています。
Excelでは間違った計算をしていても計算結果は出ます。
しかし、CETOLでは正しく設定をしなければ公差結果を算出できません。ツールを使うなかで公差のあり方を意識し、理解を深めていくことができています。

設計方法にも変化がありましたか?

奥田

はい、部品の設計がシンプルになったという変化がありました。
部品点数が少なく、形状がシンプルであるほど、公差の計算がしやすくなるためです。
設計者の公差解析への意識が高まることで、複雑な形状で公差の調整を繰り返すのではなく、最初からシンプルな設計を心掛けるようになりました。設計がシンプルになれば、コストも低減できます。
CETOL導入の意外な効果でしたね。

公差解析は対外的にも影響があるものでしょうか?

池田

公差解析は基本的に外部からは見えないものです。
しかし、開発プロジェクトによっては取引先から計算根拠の開示を求められるケースがあります。逆に私たちも、購入するユニット部品のメーカーに公差の計算結果を見せてほしいと依頼したことがあります。
そのような際に、明確な根拠を提示できれば、取引先としての信頼度も高くなります。
CETOLの使用は、お客様から見たときの信頼性を高めることもできると感じています。

今後の展望:幾何公差も積極的に実施し、設計の精度を高めたい

CETOL活用の推進にあたり、現状の課題や今後の展望をお聞かせください。

奥田

社内ではマニュアルの作成や勉強会などを実施してきましたが、CETOLの強みをなかなか社内でも共有しきれていないのが現状の課題です。
設計段階における公差解析は、不具合を未然に防ぐものであるため、「何%不具合が減った」と効果を実感しづらいのも一因かもしれません。起こらなかった不具合を評価するのは難しいことですから。
また、フィードバックを重ねて、公差解析の精度をさらに高めていきたいと考えており、現在は量産品のデータを収集しています。今は寸法公差が中心ですが、今後は積極的に幾何公差も実施し、さらに効率よくCETOLを使いこなしたいですね。

最後に、当社へ期待することはありますか?

奥田

CETOLを使っていて難しいと感じるのは、部品同士を拘束するジョイントの考え方です。
もう少しわかりやすくなることを期待しています。
また、CETOLは使用者が統計学の知識を持っているという前提なのかな、と感じます。
私自身、CETOLの計算方法を知るために独学で統計学を勉強しました。公差解析の裏付けとなる統計学などの基礎的な
部分の教育プログラムも用意していただけるとありがたいですね。

EIZO株式会社の皆様、お忙しいところインタビューにご協力いただき誠にありがとうございました。
社内を巻き込みながら公差解析に取り組まれていて、CETOLの活用により設計品質が向上したと伺い嬉しく思います。
当社ではエンジニアによる技術サポートをおこなっており、今後はご要望いただいた教育プログラムなども検討したいと考えております。

※本事例のPDF版は下記よりダウンロード可能です。

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