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解析事例

電磁界解析

ニデック株式会社様

ニデック株式会社 様:Ansys Motor-CADで設計時間を50%削減。 磁気・熱・構造の連成解析で社内の技術レベルもアップ!

概要

今回訪れたのは、モータ世界大手のニデック株式会社様です。
ハードディスクドライブ用モータで培った軽薄短小の技術をコアに幅広い分野に進出し、近年はeモビリティ分野で強い存在感を放っています。
より高性能かつ開発サイクルの短縮が求められる中、迅速に開発検討を行える「Ansys Motor-CAD」は、同社にとって欠かせないツールになっているといいます。
本インタビューでは、モータ業界の動向や、Motor-CAD導入の背景、その効果などについてお伺いしました。

使用ソフトウエア

(右から)吉本 貴俊様、池元 建斗様

今回お話をお伺いした方

製品技術研究所 次世代モータモジュール開発部 
磁気設計グループ
吉本 貴俊 様
池元 建斗 様
(以下、お客様の敬称は省略させていただきます。

高性能モータを短期間で開発するため Motor-CAD を導入

池元 建斗 様

当社はもともとハードディスクドライブ向けの精密小型モータに強みをもっていましたが、近年は車載や家電用、産業用のモータや検査装置、工作機械などにも力を入れています。

吉本 貴俊 様

精密小型モータで培った軽薄短小技術を軸に、とくに電動パワーステアリングや電動ブレーキ、昨今はモビリティ用モータのE-Axle※1を開発しています。
現在、次のソリューションとして、eVTOL※2のような空飛ぶモビリティにも注力していこうとしています。

池元

我々は、製品技術研究所 次世代モータモジュール開発部 磁気設計グループに所属しており、主に次世代モータの磁気設
計に関する研究開発に取り組んでおります。
当部のミッションは大きく3つあり、1つ目は、私たちが「スリー新」と呼んでいる、新製品・新市場・新顧客を実現するための研究開発です。2つ目は、製品化・事業化・拡販です。3つ目は、研究所内にとどまらず、国内外にある事業所やグループ会社と協業して事業に貢献することです。
主要業務の磁気設計は、モータの研究開発の中でも、モータの性能そのものを決定する重要な役割を持ちます。ただ昨今は、
モータに求められる性能が高くなっており、磁気に限らず熱や構造などの課題に対応していくこともミッションとなっています。

図1 ニデック株式会社が提供する車載モータ例(画像提供:ニデック株式会社)

モータ業界全体としてはどのような課題があるのでしょうか。

池元

近年、モータ業界全体においては、環境に優しい、省エネなどの要求が高まっています。
実は世界の全消費電力の40 ~ 50%がモータで消費されているといわれています※3。
そのため、モータを省電力化できれば、世界全体での省エネに貢献することができます。
また、EVをはじめとするあらゆる業界で競争が激しくなっており、新技術の導入、従来製品の高性能化、製品化までのスピード向上が求められています。とくに製品開発期間の短縮や、省エネ、高性能化の要求は、私が入社して以来、年々高まっていると感じます。

Motor-CADを導入したきっかけは何だったのでしょうか?

池元

モータに求められる要求は年々高まっており、お客様のご要望に適したモータデザインを提案するには様々なタイプのモータを検討する必要があります。
また、お客様のご要望を満足するには磁気・構造・熱を同時平行で検討しなければならないケースが増えてきました。しかし、私たちが行う設計業務は、磁気設計、構造設計、熱設計の専門家で分業化されており、一連の設計を終え、お客様のご要望を満たす設計になっているかを確認することが多く、そうでない場合は、出戻り設計となって、設計が長期化することが課題でした。Motor-CADは、磁気、構造、熱の解析を一つのソフトで同時に検討が行えると聞き、設計にかかる時間を短縮できる可能性があると考えたことが導入のきっかけとなります。

導入の決め手は、磁気、熱、構造を1つのソフトで解析できること

他社製品と比較検討はされましたか。

吉本

グループ会社に限らずモータ業界において、Motor-CADが広く活用される機会が増えてきていると感じていました。
データのシェアにおいてもMotor-CADが使われるケースもあり、まずはMotor-CADを検討しました。とくに他の製品の検討はありませんでしたね。

池元

Ansys製品はすでに当社で使用していたので、同じメーカー間のツール同士で情報をやり取りしやすいことも期待としてありました。また、グループ会社など共同研究先でもMotor-CADを使用している点も検討でプラスになりました。
複数のユーザーで使い勝手や活用の可能性を検討したのち、導入に至りました。

導入の決め手は何でしたか

池元

やはり、磁気、熱、構造の連成解析を1つのソフトで行うことができ、設計時間を短縮できることが導入の決め手となりました。
また、磁気回路の断面形状や水冷・空冷といった熱解析用のテンプレートがあらかじめ用意されており、モデル作成の工数・時
間を短縮できることも魅力的でした。

モータ業界の動向や、Motor-CAD導入の背景などをお聞かせいただきました

図2 Motor-CADを活用した解析イメージサンプル

製品の方向性を検討する時間が半減し、技術者のレベルアップも実現

Motor-CADをどのように活用していますか。

池元

Motor-CADのテンプレートを活用してモデルを作成し検討するのが6 ~ 7割、それ以外は従来製品のCADモデルを読み込んで、それを編集して検討しています。
テンプレートが用意されているMotorCADを使うことで、こういうモータが適切だという設計の方向性を決定することが非常に楽になりました。

具体的に検討時間はどれほど短くなったのでしょうか?

池元

1つの製品で、設計の方向性の決定から詳細検討までの時間について、おおよそ50%減っています。
ある製品の例では、はじめの検討に約60時間かかり、さらに複数の担当者にデータを渡してやり取りして合計160時間ほどかかっていたものが、80時間ほどに減りました。
もちろん評価が必要な項目の数は製品によって変わりますが、概ねどの製品でも半分程度になっています。
時間を短縮できたことで、その分、製品開発の案件数を増やすことが可能になりました。

半減とは大きな効果ですね。他に感じたメリットはありますか。

池元

さまざまな分野が1つになったMotor-CADを使うことで社内の技術交流が活発になったことです。
異なる部門のアイデアやノウハウが融合し始めてきたと感じています。
今まで各部門の専門家は自分の専門領域のことだけを考えていました。複数分野が一つになっているMotor-CADは、他の分野の知見もある程度必要です。技術者に求められるレベルも一段階高くなりますが、他分野への関心が高まり、意見を出しやすくなります。
どんな理由でこうなるのかを専門家に聞けば、それぞれの専門に根ざした回答をきちんともらえます。

個人それぞれがレベルアップするとともに、会社としてのレベルアップにもつながっているのですね。

池元

Motor-CADを通じて、熱設計チームの中から磁気設計をやってみたいという声も出ています。
1つのソフトにまとまっていることで、自分の専門外の分野にも興味が出てきたという声を聞くようになっています。

吉本

磁気設計チームとして、熱の分野は熱設計チームに全てお任せということではなく、ある程度、初期段階から熱に関して成立見込みのある設計を提案できるようになりました。

空飛ぶモビリティ向け高機能モータ開発にも、Motor-CADを活用していきたい

Motor-CADの操作はすぐに習得できましたか?

池元

基本的にはマニュアルで自習して、わからない部分はサイバネット様にサポートいただきました。
モータの操作方法やモデルの作成手順などの技術の習得自体は1 ヶ月ほどでできました。
ヘルプもかなり細かく解説されているので、習得にはそれほど時間はかかりませんでした。

サイバネットやMotor-CADへの要望などがありましたら教えてください。

池元

RFM(Radial Flux Motor)といわれるモータは、磁束がラジアル方向のみの解析なので、現在のMotor-CADで検討できるのですが、今後、グローバル競争を勝ち抜いていくためにはAFM(Axial Flat Motor)※4というアキシャル方向のモータの解析も必要になると考えます。
RFMに比べてAFMは複雑な3次元構造を有し、Motor-CADを使用せずに磁気、構造、熱の設計を進めることは時間と工数
が掛かります。今のMotor-CADは対応していないようですが、アキシャル方向のモータの解析もできるようになれば、設計検討の自由度が向上し、開発面で他社に対して優位性をもつモータを提案できる可能性が増えると考えます。
今後のMotor-CADの進化に期待しています。

図4 RFMとAFMの違い。AFMは縦に長くしなくとも径を大きくすることでトルクを稼げる(画像提供:ニデック株式会社)

最後に、今後の展望などをお聞かせください。

池元

現在はMotor-CADを活用しているメンバーは私だけで、実績もあまり多くありません。
これから実績を増やし、Motor-CADの活用事例を社内で共有していく予定です。
そして、他部署も含めてMotor-CADのユーザー数を増やしていくことで、さらに設計時間の短縮を進めたいです。

吉本

当社は今、空飛ぶモビリティに注力しているところですので、eVTOLについては期待していただきたいと思います。
空飛ぶモビリティには高出力密度のモータが特に必要です。
電気自動車のトラクションモータ以上の高性能なモータを要求されますので、磁気、熱、構造の3つを同時にシミュレーションしていくことは必須であり、その用途においてMotor-CADは欠かせないツールだと思っています

お忙しいところ、インタビューにご協力いただき誠にありがとうございました。
モータのリーディングカンパニーであるニデック様の取組みを詳しくお聞きすることができ、大変参考になりました。
Motor-CADの活用により、開発時間の短縮、社内の技術交流がこれまで以上に活発になったとの効果をお聞きでき、嬉しく思います。
今後もしっかりサポートさせていただきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

注釈

※1 E-Axle:EVにおいて、駆動用モータおよびインバータ、トランスミッションを一体化したモジュール。電動アクスルと呼ぶこともある。
※2 eVTOL:電動垂直離着陸機(eVTOL:Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft)。次世代移動手段として注目される。
※3 一般社団法人日本電機工業会「トップランナーモータ」参考
※4 AFM(Axial Flat Motor): 超偏平アクチュエータ用「Axial Flat Motor(AFM)」

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