CYBERNET

シチズン時計株式会社

研究開発センター 開発部 解析課 CAEグループ
塚田 浩之様

オンサイト講座で設計者同士の交流を促進。CAEを根付かせフロントローディングの実現へ

シチズン時計様ではグループ各社が抱えていた共通の課題を解決するため、サイバネットのCAE教育プログラムである「CAEユニバーシティ」を全社に導入されました。これにより、エンジニアがCAEの基礎知識を体系的に学べる環境が整い、グループ全体の開発力・設計力の向上を実現しました。

開催の目的

・CAEを活用するための基礎知識を設計者に習得してもらう。
・グループ会社のメンバーが1つの場所で学ぶことにより、設計者同士のつながりをつくる。

自社の課題

・グループ会社間でCAEの活用度に大きな差があった。
・CAEを使う際に疑問があっても、身近に相談できる相手がいなかった。
・CADアドオンのCAE機能を基礎知識なしに使ったことで、CAEは役に立たないという認識を持つ人がいた。

期待した効果

・設計者同士の交流を促進することで、設計者CAEを根付かせる。
・設計者にV&V(検証と妥当性確認)の考え方を習得してもらう。
・製品開発におけるフロントローディング化を実現する。

背景:グループ会社によってCAEの活用度に差がある一方で、共通の課題も

Q まず御社の事業概要を教えてください。

シチズングループは時計事業にはじまり工作機械や電子デバイスなどさまざまな製造事業を展開しています。「市民に愛され市民に貢献する」という企業理念のもと、「シチズングループビジョン2030」を策定し、「豊かな未来(とき)をつなぐ、Crafting a new tomorrow」という新たなグループビジョンを定めています。

私の所属する研究開発センター開発部は、グループ会社全体の長期的な開発テーマに取り組む組織です。その中のCAEグループは2015年に発足しました。グループ各社に設計者CAEや設計のフロントローディングを浸透させることを目的として、「教育・広報」、「コンサルティング」、「技術構築」の3つの業務を柱に活動しています。その内容は、設計者へのCAE教育をはじめ、解析手法の検討や相談への対応、CAEに関する環境構築のフォローなど多岐にわたります。

Q CAE教育に力を入れ始めたきっかけを教えてください。

CAEグループ発足のきっかけは、グループ各社で解析業務を担当してきた前任者が感じた課題にありました。シチズングループは会社ごとにさまざまな事業を行っているため、会社や部署によってCAEの利用状況に大きな差が生じていました。

そこでグループ会社を調査したところ、CAEを使いこなせていない状況を3つに分類できることが判ってきました。まず、そもそもCAEについて全く知らない、次にCAEは知っているがハードルが高いと思い込んでいる、そして3D CADのアドオンとして提供されているCAE機能を利用したが思ったような結果が得られなかったです。特にアドオン機能を不適切な設定のまま使っているため適切な結果を得られなかった場合には、CAEは当てにならないと否定してしまう傾向もあり、このままでは間違った認識が広がり、CAE普及の障害になってしまうことも懸念されました。

そこで全社的にCAEを普及させるため、2012年にCAEに関するチームを立ち上げ、基礎教育プログラムの検討も始めました。

導入した理由:理論と実験がセットで、オンサイト講座を提供していることが決め手に

Q どのようにしてCAE教育体制を構築していったのでしょうか。

まずはCAEを社内に浸透させた他社の例を調べるため、あらゆるCAE関連セミナーに参加しました。その中で、シチズングループが今後も成長していくためには継続的なCAE教育が必要だと強く感じるようになりました

サイバネットのCAEユニバーシティを知ったのは2014年です。CAEユニバーシティを選んだ大きな理由は、理論教育を現地で開催するオンサイトのコンテンツを提供しているということです。オンサイト方式では、参加メンバーが1カ所に集まって話しながら受講します。そうしてエンジニア同士のつながりができることにより、その後も日頃の業務の中で出てきた問題を相談し合えると考えました。

また理論と実験がセットになっている講座の内容も決め手になりました。CAEを普及させる過程では、実験を重視するがゆえにCAEの結果を信用しないという問題が起こりがちです。CAEユニバーシティの講座は、境界条件が正しくなければ正しい答えは得られない、実験だけではだめだしCAEもきちんと妥当性を検証する必要があるという、V&V(Verification & Validation:検証と妥当性確認)の考え方を、とても丁寧に説明してくれます。これが私たちの「正しい設定で正しいCAEを実施する」という目的にも一致していました。

サービスの良い点:「自分たちの場合はどうしたらよいのか」が分かりやすい

Q 現在CAEユニバーシティをどのように利用されているのでしょうか。

CAEユニバーシティによる教育は2015年にスタートしました。毎年20人から25人程度を募集し、1年間で計4回の講義を用意しています。そのうち2回分がCAEユニバーシティで、その他の2回分はCAEソフトウェアの講習です。初年度となった2015年は試行錯誤をしまして、サイバネットにはテキストをブラッシュアップしていただくと共に、コスト面でもさまざまな要望に応えていただきました。こうした講義内容の柔軟性も、CAEユニバーシティを選んだ理由のひとつです。

講座の様子

毎回、参加者に教育プログラムの目的は「CAEを知ってもらうこと、交流してもらうこと」と伝えています。少人数の班に分かれて実験するプログラムなので、年齢、経験、得意分野、所属会社をあえてばらばらになるよう班を編成しています。オンライン開催では実験や交流ができず本来の目的を果たせないことから、コロナ禍の中でも感染対策をしながら継続してオンサイトで開催しました。
ソフトウェアの講習に関する内容は、私たちの業務内容に合わせて完全にカスタマイズしてもらいました。グループ各社の製品の設計図をベースに、その構造解析をするようにしているため、参加するエンジニアに親しみやすい内容になったと思います。

Q 実際に参加したエンジニアからの評価はいかがでしょうか。

そもそもV&Vの考え方を知らないエンジニアが多いため、その内容が強く印象に残った人が多いようです。また講義には、実験と理論が一致しない「つまずくポイント」を用意しているため、参加者たちはよく考え、記憶にも残るようです。このように内容がしっかりと練られているところもCAEユニバーシティの魅力だと思います。

導入後の変化:グループ会社全体がフロントローディングに向かって動き出した

Q 教育環境を整えることにより、どういった効果が出ていますか。

以前はCAEの活用度合いがグループ各社でばらばらでしたが、現在は全体がフロントローディングに向かって動き出しているという実感があります。例えば製品開発において設計の前段階でシミュレーションの実施が増えたり、デザインレビューにおいてCAEを実施しているかチェックが入ったりするようになりました。加えて営業部門では、CAEを活用した構造の最適化や熱設計などの解析画像をパンフレットに掲載して、セールスポイントの一つになっている会社もあります。

受講後のアンケートでは「CAEユニバーシティの導入後は現場でCAEの使用頻度が上がった」「CAEに対する理解が深まった」「他者にも勧められる内容だ」といった好評価を多く得ています。

CAEユニバーシティの導入当初は、私たちCAEグループとの情報交換会を実施しているグループ会社はたったの2社でしたが、現在は8社にまで増えました。CAE活用が進んでいるグループ会社では、自分たちでシミュレーションをどんどん回しており、よい循環が生まれています。

これからの社内教育について:今後は基礎だけでなく、新しい解析分野やトレンドの普及にも活用していきたい

Q 今後はどういったことに取り組む予定ですか。

私たちとしてはこれまで、まずはCAE利用の裾野を広げたいという考えで活動を進めてきました。これまでのCAEユニバーシティの参加者は延べ200人を超えました。初期に参加したメンバーは中堅エンジニアとして後輩を指導する立場になりつつあり、続けてきたことがよい結果を生むということを実感しているところです。

かつては、CAEについて分からないことがあると全て私たちに質問が来るという状態でした。自分たちで解決できるようになれば、私たちにも余裕が出てきます。今後は新しい解析分野やトレンドの解析手法を調べるといったことに着手し、それらをグループ会社全体で活用できる形に落とし込むといったことに取り組みたいと考えています。

CAEグループ 塚田様 櫻井様 齋藤様
ご利用いただいた企業様

社名:シチズン時計株式会社
事業内容:各種時計類及びその部分品の製造及び販売並びに持株会社としての、グループ経営戦略の策定・推進、グループ経営の監査、グループ技術開発及び知的財産の管理その他経営管理等
従業員数:15,402名(連結) 2023年3月31日時点