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GLOSSARY

有機系太陽電池

有機系太陽電池とは

有機系太陽電池とは、有機物を原料とする太陽電池です。広く普及しているシリコン系や化合物系太陽電池では、高価なシリコンや希少なレアメタルを使用しますが、有機物は豊富で安価であり、しかも製造に高度な技術を必要としません。また有機化合物は柔軟性があるため、フレキシブルな太陽電池が製造可能です。

有機太陽電池は、有機薄膜系と色素増感系に大きく分けられます。

有機薄膜太陽電池は、シリコン薄膜太陽電池のシリコンを有機物の半導体に置き換えたものです。有機薄膜太陽電池の構造には、p型とn型半導体の混合物からなるバルクヘテロ型に加えて、p型とn型半導体の混合層をp型とn型の半導体で挟み込んだp-i-n接合型があります。バルクヘテロ型では、印刷技術の応用で電極に有機薄膜を塗布する手法により、大量生産ができ、有機物の種類を変えるとさまざまな色の太陽電池が作れるので、建物の壁や柱に貼って発電することなどが考えられています。ただし、電子が電極に届くようにするため塗布する有機材料を薄くしていくと、今度は色が薄くなって光を十分に吸収できないという課題があります。現時点では有機薄膜太陽電池の最高変換効率は約19%であり、シリコン系(同約26%)や化合物系(同約24%)には及ばない状況です。

有機系太陽電池とは

色素増感太陽電池では、植物の葉緑素を使った人工光合成による発電が始まりで、酸化チタンと電解液を用います。酸化チタンは半導体ですが、紫外線しか吸収せず、可視光にほとんど反応しません。しかし酸化チタンの表面に色素を吸着させると、色素が可視光を吸収して酸化チタンに電子を供給します。色素増感太陽電池は、酸化チタンナノ粒子のペーストを導電性透明(ITO)電極の上に積層させてメソポーラス膜を作成し、光を吸収する増感剤の色素を酸化チタンの上に吸着させて負電極を作ります。増感剤としてルテニウムなどのレアメタルを使った錯体が用いられます。正極側のガラスには白金電極を付け、両極間にはヨウ素イオンを含む電解液を入れます。負極側の色素に光が当たると、色素中の電子はエネルギーをもらって飛び出し、酸化チタンナノ粒子を経由して、外部電極を通って正極側に移動します。このとき電子を放出した色素は、電解液中のヨウ素イオンから電子を受け取ります。ここでヨウ素イオンはヨウ素となり、正極側へ移動してきた電子を受け取ります。光を何度も吸収した色素はほとんど分解してしまいますが、色素増感太陽電池では、光が当たっている間は、外部回路に電子が流れ続け、電気を取り出せます。

色素増感太陽電池は構造が単純で安価であり、色で増感するため低照度の環境では他の太陽電池よりも発電能力が高いというメリットがあります。有機色素などさまざまな色素を使用すれば、カラフルな色を持つ太陽電池を作ることもできます。電解液を用いることから液漏れ問題がありましたが、改良が進んで固体化したものが商品化されています。最高変換効率は約14%と他の太陽電池に比べて低いため、消費電力量が小さい小型デバイスなどで活躍が期待されています。

有機系太陽電池とは

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