解析講座伝熱解析と熱流体解析の違い

目次
  1. はじめに
  2. 伝熱解析で出来る事、出来ないこと
    熱伝導熱伝達
  3. 伝熱解析と熱流体解析の比較
  4. 熱流体解析の必要性
  5. 熱流体解析実施において考慮すべき内容
    材料物性について、解析モデル化について、境界条件について、解析コストについて
  6. おわりに

はじめに

素子の小型化により熱問題がより重要になってきています。今後更なる小型化にともない、ますます重要な項目となることが予測されます。ANSYS Workbench環境では構造解析と同様に伝熱解析についても使いやすいGUIにより解析が可能ではありますが、伝熱解析は固体内部の熱流れを見る熱伝導が主とした機能であり、流体の流れ場を解くことは出来ませんので、固体−流体の境界における熱伝達については実測等により求められた既知の熱伝達係数を利用する必要があります。つまり流体挙動による影響が大きい現象において熱伝達係数が不明な場合には精度よく解析することが出来ません。

一例を挙げますと、発熱素子を含む筐体では、熱逃げ経路としては熱伝導だけではなく熱伝達の影響度合いも大きいため、精度良く解析するには熱伝達による熱移動を正確に解析する必要があります。このため、伝熱による解析ではなく周囲の流体挙動も解くことが可能な熱流体解析が必要となります。

ただし、熱流体解析では伝熱解析と比較して必要な物性値、モデル化の方法と範囲、境界条件の設定方法、そして解析コストと多くの条件が異なります。

本稿では、伝熱と熱流体の違い、熱流体解析の必要性、そして熱流体解析を実施するにあたり考慮すべき内容についてご紹介致します。

伝熱解析で出来る事、出来ないこと

熱流体解析の必要性について説明する前に、まずはANSYS Workbench環境での伝熱解析で出来る事・出来ないことを伝導・伝達の各熱経路毎に説明いたします。

熱伝導

固体内部の熱伝導に関しては、伝熱解析で問題なく解くことが可能です。熱伝達と比較して熱伝導による寄与度が十分に大きい場合であれば伝熱解析で精度良く解くことが可能です。

熱伝達

周囲の流体温度および熱伝達係数が既知という条件のもと使用することが可能となります。周囲流体の対流を解いているわけではありませんので、基本的には実験式や実測ベースとなります。

これらの情報がない場合には使用することが出来ません。単純平板等であれば既存の実験式から推定することも可能でありますが、実際の製品形状ではこのような単純平板に置き換えられることは稀です。そのような複雑形状の場合には事前の実測試験が必要となります。当然形状変更があった場合には再測定が必要となってしまいます。また、実測を行なった場合、平均的な熱伝達率や流体温度は分かりますが、局所的な値を予測することは困難であり精度低下の一因となります。

また、実際の流れ場ではある部品から流体の対流を介して別の部品へ熱が伝わることも考えられますが、伝熱解析ではこの状態を解析することは出来ません。このような流体を介して他部品へ熱が伝わる状況としては、発熱体のある筺体を例に挙げますと『発熱体⇒筺体内の空気の対流⇒筺体⇒周辺領域』と行った経路での放熱が考えられますが、これらを精度よく解析するためには熱流体解析が必要となります。

伝熱解析と熱流体解析の比較

前章では伝熱解析と熱流体解析では違いがあることを解説しました。実際に2つの解析を比較すると、どの程度の差が生じるのかその具体例を図1に示します。ANSYS Workbench Mechanical(伝熱解析)とANSYS CFX(熱流体解析)による大気中に垂直に配置された複数の加熱平板の熱伝達係数および温度比較を実施しています。伝熱解析での平板表面熱伝達係数は(1)の推算式より算出された6.06[W/(m・℃)]を使用しています。

<CASE1:単純形状>

図1に示すように単純形状であれば、熱伝達係数の分布はあるが各平板毎の差は小さく、平均的な熱伝達係数は伝熱解析で使用した値と同等(2.7%程度の差)と精度は良い事が確認できます。


図1 単純形状における熱流体解析

<CASE2:複雑形状>

図2に示すように加熱平板の下部に追加の平板を配置する。若干の形状変更を加えただけで熱伝達係数、温度ともに大きく変化します。下部の平板により対流が変化し、平板毎の熱伝達係数および温度分布が変化します。

熱流体解析の必要性

CASE1により推算式が利用可能な理想的な条件であれば、平均的な熱伝達係数や温度については伝熱解析にて精度よく予測することが可能であることが確認できます。しかし、実際の設計形状では単純形状ということはほとんどありません。CASE2のように平板を下部に配置しただけの小さな変更においても、熱伝達係数や温度が大きく変化することからも、基本的に推算式による熱伝達係数の予測は困難であり、熱流体解析が必要となります。また、推算式が成立するような場合でも実際には温度分布があるため、局所的な結果を確認する場合にも熱流体解析が必要であることが確認できます。


図2 複雑形状における熱流体解析

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