本ページでは、長年PCB業界でスタンダードとなっているガーバーフォーマットに ついて、簡単に歴史などを紹介しております。
現在PCB業界のスタンダードとして使用されているガーバーフォーマットは、半世紀以上前の1948年、 Joseph Gerber氏によって設立されたGerber Scientific Instrument (通称GSI 米国 コネチカット州) に始まります。GSI社はGERBER Variable Scale (計算尺)を開発販売し、その後プロッティングシステムを発表しました。
ガーバーフォーマットはプロッティングシステムの入力フォーマットとしてGSI社より発表され、各種のドラフティングマシンの標準フォーマットとしてEIA通信規格RS-274Dとして確立されました。そしてこのフォーマットを開発者の名を冠して「GERBER Format」と呼称するようになったのです。
ちなみにGSI社は1997年にBarco Graphics社(本社:ベルギー)に買収され、その後BarcoのPCB部門はUcamcoという名称に変更されています。
一言でプロッティングシステムと言っても、実はPCB業界以外でも非常に幅広く使われています。では、そのGSI社が販売していたプロッティングシステムには、一体どういう種類があるのでしょうか?
様々なプロッターが存在する中、PCB向けのフォトプロッターがどんなものか、をちょっと確認してみましょう!
フォトプロッターには基本的にベクターとラスター(レーザー)の2種類が存在しており、現在はレーザーが主流になってきています。しかしガーバーフォーマット(RS-274D)を理解する上ではベクターの基本理念を理解する必要があります。
Vector(Fig4-1)の示すとおり、光が一筆書きの軌道を進みながらフィルム上にターゲットのライン幅を露光して行く装置です。当然、XY座標で表現されるGERBER Format(EIA規格/RS-274D)を入力データとし露光される為、データ量に依存した描画時間が必要となります。
基本構造としてはAperture Wheel(以下AW、Tarretとも呼ばれる)円盤と光源、レンズで構成されています。
AWにはアパーチャ (フィルム/ガラス乾板製)と呼ばれる通常24-36個(EIA規格上は24)がセットされており、これにより期待する結像を描画する事が出来ます。
一般的なプリント基板はアパーチャとフィルム上に露光される最終結像サイズは1:3となっていますが、超ファインパターンの露光には1:10と言うものもあります。
この比率の基本的な目的はアパーチャの製造誤差(露光誤差)も1/nにするという事です。
また、基本構造には触れませんでしたが、当然ガーバーデータのIn/Out並びに各種設定/編集の為のコントロールターミナルも必要となります。
ベクターに対比する構造となりますが、これは皆さんが通常利用しているインクジェットプリンターと基本概念は全く同一のものであり、インクヘッドの替わりに光で露光するというものになります。
ラスターフォトプロッター(Fig4-2)での光を通常スポット(Spot)と呼び、1-2μから数十ミクロンまでのSpot径が各メーカーの開発コンセプトにより、種々提供されています。
またフォトプロッターには、構造上の定義としてFig1〜3のような『フラットタイプ』とFig-5のような『ドラムタイプ』の2種類があり、ベクターではフラットタイプが主流です。
どちらのほうが優れているかは目的によって替わり、ここでの推論は遠慮させていただきますが一般論として、フラットベッドタイプは光源から結像面までの距離が通常と遠くなり、照射Spot径より結増Spot径が大きくなるため、パターンエッジはなだらかな露光がなされ、テーブルも低速で動作するために、制御し易い構造になると言えます。
ドラムタイプはFig-5にあるように光源から結像面までの距離が至近となる為、照射Spot径とほぼ同等の結像径が得られる為、パターンエッジのクオリティーは照射Spot径が小さくなるほど、品質が向上します。
ドラムタイプの構造上の難しさは、ドラム(それなりに軽量)を高速(数百rpm)に回転させる為、露光タイミングとドラム回転の同期制御が難しいという事とメンテナンス性が課題とも言えます。
最近では、外部ドラムを回転せずにスピナーを円筒軸に配し、スピナーだけを軸移動しながら露光するタイプも出てきておりドラムタイプの弱点は克服されてきています。
もう一つの特徴としては、ドラムタイプはフラットベッドタイプと比較し、設置面積が小さくてすむと言う特徴もあります。
フォトプロッターの結像品質を説明する上で、重要なのはエッジクオリティーといわれるものです。
プリント基板製造上に利用されるフィルムの品質を確認する上で結像したラインのエッジ(サイド面)が如何に綺麗にストレートラインになっているかを、ルーペ(高倍率の虫眼鏡)を利用し確認します。これは製造工程におけるエッチングのライン品質に影響する為に重要な課題です。もちろん、結像座標の精度についても言うまでもありません。
Fig-6及びFig-7は一般論としての結像イメージを図式化したものです。
通常、ベクターフォトプロッター(Fig-6)ではライン生成には丸アパーチャ、ランド/サーマルランドについては丸/四角/アニュアリング等のアパーチャを使用しフラッシュ露光するのが一般的です。
これは丸光源が軸移動した場合には、円周上の一点のみが移動するので問題は発生しませんが角アパーチャを利用して軸移動を行った場合は、角アパーチャの一辺全体がリニアに移動する為多重露光を起こし、Fig-6の下部にあるようにハレーションを起こしてしまい、使用できなくなる為です。
ラスターフォトプロッターについては、Fig-7にあるように光の点の集合となり、大きなSpot径ではエッジがトウモロコシのような結像特性となり、Spot間の応力集中によるクラック発生等の問題があります。しかしながら最近のラスターフォトプロッターのSpot径も極小化しており、この様な問題は発生しません。
さらに、ラスターフォトプロッタ-は高速処理が可能ですので、現状ではこちらが主流となってきております。
![]() Fig6 |
![]() Fig7 |
基本: G__X±m.nY±m.nI±m.nJ±m.nD__*
基本的な考え方として、RS-274Xはレーザーフォトプロターの登場により自由度の高いアパーチャの定義、Fill(塗りつぶし)の高速化が可能になたことによるガーバーフォーマットに追加されたサブセットコマンドということになります。
下記は特殊なフォトプロッターで描写したものになります(Fig8)。これはFig9のアパーチャを開閉しながら回転することで描写します。
![]() Fig-8 超Fine Pattern (光学比10:1) |
![]() Fig 9 |