2016年7月8日(金)、昨年に引き続き、「CAEユニバーシティ特別公開フォーラム」を開催いたしました。以下に概要を報告いたします。
今年で3年目となる本イベントですが、例年参加されているお客様はもちろん、昨年参加できなかったお客様等からも、事前に多くのお問い合わせをいただきました。今年は会場の都合でMAX100名に限定しての開催といたしましたが、その分内容の濃い、盛り上がる内容となりました。事前申し込みも1週間以上前に満席となり、受付を締め切りましたが、キャンセル待ちのお客様もおり、予想以上の反響を得ることができました。
前回までは、CAEユニバーシティの内容をより知っていただくために、講師による講座の内容紹介を行っていましたが、今年はもう一歩進んで、講師の講座に対する思いや、苦労話や失敗談など、CAEユニバーシティ講師の生の姿が伝わる講演をお願いしました。
企業講演者の方々にも、通り一遍の説明ではなく、できるだけ具体的に、詳細にとお願いし、聴講者の共通の悩みや、苦労している点に共感し、より興味の持てる内容になりました。
特に、新しい取り組みである「パネルディスカション」は、多くのお客様より「非常に良かった」との評価をいただきました。以下、全体の概要を記述いたします。
時間 | 講演内容 |
---|---|
10:00〜10:10 |
開会のご挨拶 サイバネットシステム株式会社 |
10:10〜10:55 |
基調講演
CAE技術者育成デンソーテクノ株式会社 技術開発センター CAE部 部長 宮田 英 様 |
11:00〜11:35 |
講師講演
流体力学実験室のこれまでとこれから 〜CFD解析と連動した実験室を目指して〜(仮) 横浜国立大学 大学院環境情報研究院 准教授 白崎 実 様 |
11:35〜12:10 |
講師講演
ブリッジ製作を通して学ぶ材料力学・CAE教育の紹介 岐阜大学 工学部 機械工学科 准教授 永井 学志 様 |
12:10〜13:10 | 昼食 |
CAE教育導入事例ご発表 | |
13:10〜13:45 |
CAE活用教育をチェック・アクション型からPDCAサイクル型へ 株式会社安川電機 品質保証部 品質向上推進グループ 担当課長 小宮 剛彦 様 |
13:45〜14:20 |
CAEユニバーシティの活用を含む社内CAE教育と普及促進への取り組み 富士電機株式会社 技術開発本部 先端技術研究所 熱応用システム研究部 エンジニアリング解析Gr グループマネージャー 山本 勉 様 |
14:20〜14:55 |
ISO/TS16949と社内CAEスキル認定制度 株式会社ホンダロック R&Dセンター 開発本部 製品開発部 研究BL EDI Gr 技術主任 多田 真和 様 |
14:55〜15:15 | コーヒーブレイク |
15:15〜15:50 |
講師講演
知識・実践・相互コミュニケーションを織り交ぜた「CAEワークショップ」のご紹介横浜国立大学 大学院環境情報研究院 准教授 松井 和己 様 |
パネルディスカッション「現場力を高める人づくりのために」 | |
15:50〜16:40 |
司会進行
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16:40〜16:50 | 閉会 |
17:00〜18:00 | 懇親会 |
デンソーテクノ株式会社
技術開発センター CAE部
部長 宮田 英 様
製品設計に役立つCAEを提供するには、設計者とCAE技術者とのコミュニケーションが重要である。このコミュニケーションを実現するためには、製品設計者と同じ土俵で、CAE技術者が設計者とコミュニケーションを取ることができるスキルが必要と考え、それを行えるCAE技術者育成に長年取り組んでいる。この取組内容をご紹介する。
横浜国立大学 大学院環境情報研究院
准教授 白崎 実 様
2015年3月に流体力学実験室が正式にスタートしてから1年半弱が経過した。これまでの状況として受講者の皆さんの反応やご意見について紹介し、これからの展開として強い要望がある流体実験とCFD解析との連携について、その方針や現状について紹介する。
岐阜大学 工学部 機械工学科
准教授 永井 学志 様
CAEユニバーシティにて「パスタブリッジを通した材料力学入門講座」を実施する機会を得たので、そのときの様子や気付きなどについて述べる。また、この講座と「FEM実験室 ―静解析編―」の講師経験を活かして、大学内で専門講義「有限要素法」を再構成し、新たに教養講義「日曜大工からはじめる力学」も立ち上げた。そこでこれらの講義から、発泡スチロールブリッジの設計・製作と、バネの塑性化実験も講演の話題としたい。
株式会社安川電機
品質保証部 品質向上推進グループ
担当課長 小宮 剛彦 様
弊社では開発・設計の品質向上のため、フロントローディング設計を推進している。CAEはフロントローディング設計の有効な手段のひとつである。これまでCAE活用のための操作教育や要素技術の社内研修を実施していたが、その実力が不明という課題があった。 そこで、実力把握に”CAE環境調査”を利用して教育計画を立案し、”FEM実験室”の社内開催などを実行中である。こうしたCAE活用のための取り組みを紹介する。
富士電機株式会社
技術開発本部 先端技術研究所 熱応用システム研究部
エンジニアリング解析Gr グループマネージャー 山本 勉 様
弊社では、発電や変電向けのプラント機器から、パワーエレクトロニクス製品、パワー半導体、自動販売機まで、構造や設計課題が異なる様々な製品を対象として、CAE活用による高性能化や開発期間短縮に取り組んでいる。全社横断での教育や情報交換を目的とした「CAE連絡会」活動を実施しており、「FEM実験室」などを活用した教育も行っている。
今回は、CAE教育を中心とした連絡会での活動について紹介する。
株式会社ホンダロック
R&Dセンター 開発本部 製品開発部 研究BL EDI Gr
技術主任 多田 真和 様
弊社は安心と安全に関わる4輪、2輪部品の開発・製造をしており、開発段階でCAEを活用することで開発品質の改善、向上に日々努めている。開発品質の改善、向上に向けてISO/TSなどの規格に基づき社内規定、開発フロー、技術者教育の整備もされている。弊社では自社製品を題材としたCAE教育を実施しているが、開発におけるCAE活用の効果をより高めるために新たに社内CAEスキル資格の認定制度を定め、役職に応じた技術者の能力開発を強化している。その取り組みを紹介する。
横浜国立大学 大学院環境情報研究院
准教授 松井 和己 様
CAE技術を設計や開発の現場で活用するためには,CAEに関する知識や操作スキルだけでなく,製品知識などの幅広い知識が必要です.さらに,設計案やCAEに対する考えかたを他者に正しく伝える技術も,CAEを活用していくために不可欠な技術です.
これらの複合的な知識・技術を具体的な例題を取りあげながら身につけるために,CAEグループワークを企画しました.特に,自社製品を対象にしたワークショップは疑似OJTとしても有効です.本セッションでは,その概要をご紹介します.
コミュニケーションをテーマとした設計者の育成や、技術者のローテーションなどにも言及した、具体的なお話をいただきました。他の企業様からも多くの質問をいただき、関心の高いテーマであることが伺えました。
流体力学実験室のこれまでの分析を踏まえて、今後の展開についてお話しいただきました。特にCFD解析との連携は受講者の興味あるところです。
パスタでブリッジを作成し、強度実験を行いながら材料力学や構造力学の基礎を学習するユニークな実習講座についての講演をいただきました。
CAEユニバーシティのCAE環境調査や実験室シリーズなどの、社内教育への有効活用例を講演いただきました。かなり具体的な説明で盛り上がりました。お人柄ともいえますが、周囲を引き込む話術はさすがでした。
CAE教育を中心とした「CAE連絡会」活動について、全社横断の教育や情報交換の取り組みを通した、「コミュニケーション」の重要性をご公演いただきました。淡々とした語り口調で内容に引き込まれる素晴らしい講演でした。
新たに社内に導入した「社内CAEスキル資格の認定制度」について、役職に応じた技術者の能力開発の強化の取り組みと有効性をご公演いただきました。CAE導入までの道のりや費用対効果の現状を聞けて勉強になりましたとお声も頂き、大変注目を浴びる講演内容でした。
松井先生による「CAEワークショップ」の取り組みをご公演いただきました。
自社製品等、興味ある題材をテーマに取り上げ、講師のアドバイスを受けながら、受講者自らが考え、作業し、最後に成果を発表するという、座学では経験できないOJTスタイル参加型の講座紹介です。
「現場力を高める人づくりのために=人財育成とCAE活用の方向性を見いだす」を目的に、CAE教育を利用する側×教育を提供する側でディスカッションが繰り広げられ、司会、只野先生の一歩踏み込んだ質問が双方の本音を引き出しました。教育に情熱的な講師が抱く教育の”理想“と現場事情の”現実“の温度差を垣間見られ、非常に面白く、来場者の方々からとても興味深かったとご意見いただきました。
ご参加いただいた皆様、事例発表をいただいた皆様には厚くお礼申し上げます。
また来年もCAE技術教育、人材育成に携わる皆様、興味をお持ちの皆様を対象として、お役に立つ情報を提供できる場を設けたいと考えております。