CYBERNET

スズキ株式会社

渕山 隆 様
井出 亮太 様
堀井 佐知 様
松浦 遼 様

管理職がCAEの本質を学ぶ機会に。分業体制でもエンジニアとしての成長を促進

スズキ様では、CAEを本格的に習得する機会のなかった管理職や係長といった役職者の社員に向けて、サイバネットのCAE教育プログラム「CAEユニバーシティ」を導入されました。これにより、開発現場でCAEに基づいた適切な判断が下されるようになり、効率的な開発に貢献しています。

開催の目的

・管理職や係長といった役職者の社員にCAEの理解を深めてもらう。
・習得した知識と現場の経験を結びつける場を作る。

自社の課題

・CAEへの理解を深める機会がないまま管理職や係長といった役職者になった社員にとって、部下がCAEを使用する時の適切な判断が難しくなっていた。
・設計、解析、実験の分業でエンジニアの成長が阻まれていた。
・開発したCAE技術が適切に活用されていなかった。

期待した効果

・知識と実現象を結びつけることでエンジニアとして成長してもらう。
・CAEに関して適切な判断ができる管理職を育てる。
・CAE技術を適切に活用できるようになってもらう。

CAE推進部門:技術教育からCAE技術開発まで幅広くカバー

Q 御社の事業内容や皆さんの業務について教えてください。

弊社では四輪、二輪、船外機などを開発、製造、販売しています。「一. お客様の立場になって価値ある製品を作ろう 二. 協力一致清新な会社を建設しよう 三. 自己の向上につとめ常に意欲的に前進しよう」という社是を掲げて日々の業務を行っています。社是は1962年に制定され、表現を2023年に改訂しましたが、理念は当初から全く変わっていません。

私たちCAE推進課はIT本部に所属しています。ITの部門と実際に設計開発を行う部門の橋渡しをするような役割が多いですね。CAEの推進全般に関わっており、今回のようなCAE教育の企画や、CAE技術の開発などを行います。CAE教育では、新入社員や新しくCAEに取り組む社員の基礎教育を実施しております。技術教育全体の取りまとめは技術戦略本部の技術教育課が担っており、そちらと一体となって教育に関する取り組みを実施しています。技術開発については、例えば車体への着雪現象を予測する解析手法を開発し、テストコースでの実験と併用して車両開発の効率化を促進するといったことを行っています。

スズキ製品

社是

スズキのCAE教育

導入の背景:アクティブラーニングの重要性が浮上

Q CAEユニバーシティの導入の背景には、どのような課題意識があったのでしょうか。

従来は基礎教育で得た知識と現場経験が自然に結びついていく環境がありました。ですが実験や解析、設計の分業が進んで、これらすべてを経験することが難しくなり、エンジニアとして成長していくのに時間がかかるようになってしまっていました。そのため、実験を行いながらシミュレーションについて学べるアクティブラーニングの手法を取り入れるべきではないかという意見が社内で出ていました。私たちは「腹落ちする」と表現していますが、実際に手を動かして、納得できる形でCAEの知識を習得してもらう必要があると考えたのです。

また、若手には早期にCAEの基礎教育を受けてもらっているのですが、その一方で明らかになってきたのが、彼らの上司のほうがCAEに馴染む機会を持てないまま部下を持つ立場になってしまっていたということでした。

Q 具体的にはどのような問題が起こったのでしょうか。

例えば、試験中に破断した部品の改善案について、開発を急ぐためCAEの精度検証をせず計算結果だけで、上司がゴーサインを出そうとしたことがあります。CAEで計算するだけで実験の置き換えになると考えたのでしょう。このように、CAEの本質をわかっていないと、「CAEは万能だ」と考えて工程を進めてしまったり、逆に「CAEは信用できない」とみなされたりしてしまいます。

また既に実験で性能が評価されているにも関わらず、インパクトのある解析画像で説明するためだけにCAEを行うというような不適切な使い方もありました。

せっかく開発したCAEの解析手法が使われないという残念なこともありました。その部署では開発した解析手法が十分に理解されずに実験が続けられていたのです。その後、実験の手間を減らすためCAEの活用について相談を受けた際、数年前に開発済みだと伝えたことがあります。これらは上司のCAEに対する理解不足で起こったことです 。

導入の決め手:講義時間の短縮など柔軟に対応してもらえた

Q どのようにCAEユニバーシティの導入を進めていきましたか。

さまざまな課題に向き合う中で、サイバネットが実施しているCAEユニバーシティのことを知りました。同社が開催しているフォーラムなどに参加し、教育内容や導入方法などを詳しく調べていく中で、CAE実験室という実験を伴う講座が私たちの持つ課題の解決に非常に役立つと感じました。内容は基礎的ですが、管理職向けに実施することもあると聞き、ぜひお願いしたいということになりました。

本来は6時間のプログラムだったのですが、お昼をまたぐのと半日で終わるのとでは、受講者の心理的ハードルが大きく変わってきます。サイバネットには時間を短縮してもらうなど柔軟に対応していただけたことも採用の決め手の一つになりました。

受講者の評価:上司がCAEを理解するのに非常に有用

Q どのような内容を実施しているのでしょうか。

CAEユニバーシティは2018年から導入しました。単発で実施した他の講座もありますが、「上司向けCAE基礎講座」は年2回のペースで継続して実施しています。1回につき半日で終わるもので、毎回約20~25名が参加しており、累計で約260名が受講しています。

実施テーマは構造解析分野のはりの4点曲げ試験です。大学の材料力学で習う式で計算できるような実験内容になっており、実験結果と計算結果を比較します。大学では大体近い値が出たというところで終わりですが、この講座ではそこからがスタートになります。値がずれた原因を20個考えてもらいますが、非常に議論が盛り上がります。

中にはCAEと実験は一致して当たり前だと思っている人もいるのですが、このような単純な現象ですらぴったり合うことはありません。ここで、「CAEは実際の実験をすべて再現するものではない。CAEと実験の違いは何なのか?検討に必要なCAEの精度は?などを認識したうえで、適切に使わなければいけない」ということが腹落ちするような仕掛けになっています。

講座の様子

実験風景

Q 受講者からはどんな感想がありましたか。

アンケート結果によると、「CAEの使い方や評価の仕方をよく理解できた」、「業務に役立つ内容だった」といった声を多くいただいています。過去のアンケートでは、講座満足度が89%、講師満足度は95%、理解度も92%でした。「上司として誤った指示を出さないように、CAEを適正に理解するのに非常に有用」という声もあり、管理職の方にもCAEの基本が身についてきていると感じます。

直近3年間のアンケート結果

もしCAEユニバーシティを導入していなければ、理解不足の上司が減らず、効率のよい開発を目指すという会社の方針に逆行する状態になっていたと思います。同じような課題を持っている現場の方には、若手だけでなく上司への教育もおすすめしたいです。

CAEはわからないから使わないとか、技術を開発したが使われていないといったこともなくなってきていると感じます。多くの方から高評価をいただいているので、これからも継続したいと考えています。

今後の取り組み:新分野の教育コンテンツに期待

Q サイバネットへの期待と今後の予定を教えてください。

サイバネットには、新しい分野の教育コンテンツを期待しています。現在は構造系の曲げという基本的なテーマで実施していただいていますが、これからのEV開発では1Dシミュレーションやモデルベースのシミュレーションが活用されますので、そういった分野でも上司の教育が必要になってくると思います。

これからもさまざま部署と協力し、新しい分野の教育も取り入れてCAEを推進していきたいと考えています。

鈴木式織機の前にて
ご利用いただいた企業様

社名:スズキ株式会社
事業内容:「価値ある製品」づくりを、
四輪車事業、二輪車事業、マリン事業などで展開
従業員数:72,372名(連結)(2024年3月末現在)