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熱流体解析

国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS) 様

国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS) 様:次世代のエネルギーとして期待高い水素液化システムの開発に Ansysシミュレーションを活用

概要

今回のインタビューでは、国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)の神谷様、沼澤様にご協力いただきました。
NIMSの液体水素材料研究センターでは、高効率での液体水素の製造を可能とする磁気冷凍技術に関わる材料、システムの開発が行われています。センターのミッションや技術の実用化、社会実装を目指した取り組みや展望、また活用されているAnsysにおける成果や課題などについてお話を伺いました。

今回お話をお伺いした方 エネルギー・環境材料研究拠点
液体水素材料研究センター 副センター長/磁気冷凍システムグループリーダー
神谷 宏治 様
液体水素材料研究センター NIMS特別研究員
沼澤 健則 様
※以下お客様の敬称は省略させていただきます。

物質を実用的に「使われる」材料へ発展させる

物質・材料研究機構の概要と、液体水素材料研究センターのミッションについてお聞かせください。

神谷

端的に言うと、万物の最も基本的な構成要素である物質を、実用的な「使われる」材料に発展させるための研究・開発をすることです。この分野における日本のレベルは高く、NIMSは世界でも上位10位内に入る材料研究所で、国内外から成果を求められています。

沼澤

NIMSの成果の有名なところでは、LED材料のサイアロンの発見があります。発光体ですね。基本的な材料になる部分を発見した方がいて、その方は実は企業の出身です。企業で基礎研究をやっていくのは難しいので、NIMSで引き受けて開発を進めました。

神谷

あとは、高温超伝導もありますね。

沼澤

当時はヨーロッパのベッドノルツ、ミューラーが発見した高温超伝導体が世界で初めてでしたが、その次の次ぐらいに性能の高い、ビスマス系の高温超伝導体を日本で発見し、エポックメーキングな出来事となりました。今は実用化され、実際に超伝導の繊維にしています。

神谷

そのような社会に還元できるような技術を開発することを目的として、2019年に液体水素材料研究センターが設立されました。水素の研究者を集約し、NIMSに水素センターがあることをアピールする意味もありました。同時にJSTのプロジェクトが始まり、私も原子力機構からこちらに移ったのです。水素センターのミッションは、従来技術の液化機では到達し得ない高い液化効率を持つ液化機を開発し、社会実装にまで持っていくことです。現在、産業用液化機としてはヨーロッパのエア・リキード、リンデがほぼ市場を独占していますが、その状況を変えたい。磁気冷凍は材料指向な例で、日本が強みを持っています。特にNIMSの開発力が強いので、この技術を完成させて世界に広めていければと思っています。より安くて競争力の強い、タンカーなど水素の容器に使える材料を日本で開発することもミッションです。

磁気冷凍技術で常に世界トップを目指す

神谷

磁気冷凍の技術を以てすれば、様々な温度で高効率な冷凍の技術を展開できます。この技術で月面や宇宙へ展開しようという話も進んでいて、それも重要なセンターのミッションになりつつあります。あとは、多様なエネルギー貯蔵。液体空気貯蔵電力貯蔵という技術があり、既存の冷凍機ではなく磁気冷凍を使えば全体の効率が上がる。そういった研究もあります。

沼澤

磁気冷凍材料全般ではアメリカで最も進んでいましたが、NIMSには底力があります。いろいろと新しい材料が発見されて、有望なものが増えている。磁気冷凍に関しては他の追随を許さないほどの精度を持っています。このプロジェクトには材料メーカーが参加して、実用化の試みも始まっています。企業によっては原材料の確保から実際に作って、使い、再利用まで考えています。使い終わった後に必ず使えなくなる材料が出てきますが、それを再利用して一つの循環を作り上げる。そこまで視野に入れた材料開発が進んでいます。

神谷

材料の開発だけでなく、それを磁気冷凍で必要な球形にするNIMSの技術は抜きん出ています。必要な装置がすべて揃っていて、潤沢に使えます。熱プラズマという方法で材料をきれいな球にするのは大変です。見つかった、だけでは使えず、それを使える形にする技術のレベルも高い。

沼澤

ほかには、GM冷凍機と呼ばれる極低温の冷凍機があります。超電導磁石MRIなどに使う超電導磁石ですが、そこには粒にする材料が必要で、それがないと冷えません。それは日本がほぼ100%独占しています。今後は磁気冷凍の分野でも開発を進め、世界で常にトップを目指すことがミッションです。

神谷

磁気作業物質は、非常に水素にもろい金属間合物である場合が多いです。そこでこれをコーティングして使おうという発想で、その材料の性能を発揮しつつも水素の脆化を起こさせないというコーティングの研究も一番進んでいます。

沼澤

水素が物質の中に入ると物質は分解しやすくなるので、それにバリアをして阻止する必要があります。粒の一個一個にコーティングする技術が必要で、それを開発しているチームもあります。

神谷

磁気冷凍には磁石が必要です。うちは高温超電導で有名という話をしましたが、その特質を生かして優れたコイルを作る技術の研究グループもあります。液体水素は我々のセンターにとってうってつけの研究テーマです。同じ研究組織の中で、全員のチームでできる環境は他にないでしょう。

物質を実用化レベルまで持っていくことの難しさ

なるほど、お話をお伺いしていると、上流から下流まで幅広くカバーされているのですね。

神谷

冷凍機の専門家は二人います。私は材料については他のNIMSの職員さんほど明るくないのですが、少しずつ勉強しながらトータルコーディネートをしています。

沼澤

磁気冷凍もある意味で難しい。材料は絶対に必要だし、磁石も必要です。しかし、それをトータルで組み上げて冷凍サイクルを作るというシステム化が非常に難しいですね。全部のことを理解していなくてはならず、どれか一つでも欠けたらうまくいきません。総合的に俯瞰して、まとめあげていくということが神谷には求められています。

神谷

NIMSのYouTubeチャンネルに、磁気熱量効果、磁気冷凍という動画があります。キュッと引き抜くとサーモグラフィで冷えた、となって感動的ですが、せいぜい2 、3度しか冷えません。それは素晴らしい現象ですが、そのままでは実用に結びつかない。熱流体の冷凍機としての知識が必要になります。一粒一粒はたった2度、3度の温度差ですが、蓄冷器全体でつなげると10度、20度という実用的な温度差を生み出せる装置が完成します。

弊社

サイクルとしての、システムとしての組み方で工夫している部分も大きいのですね。

神谷

はい。蓄冷器には有限の長さがあって、ローカルには本当に数ケルビンの実力しかない温度差しか生み出さない材料をつなぎ合わせることで、熱のバケツリレーを発生させます。小さなサイクルがたくさん繋がって全体ですごく大きな温度差を出すというのが、今回の磁気冷凍の肝です。

弊社

なるほど。実験機で動いているのを見せて頂いたことはありますが、内部はそういう仕組みになっていたのですね。

神谷

NIMSの材料の研究者は一個一個の粒を発見するのは得意ですが、それを形にするのは別の仕事です。

沼澤

これからのプロジェクトでは大型化を目指すので、何十キロも作らないといけません。低コストで大量生産するには、企業と一緒にやる必要があります。
1gしかできないのであれば100年経っても実用化できません。それを10キロ、100キロにしなければなりません。いい材料ができた、では1キロ持ってきてくださいと言っても、1グラムしか作れないことが非常に多いです。

弊社

物質と材料の間を埋めないと、実用化は無理ということですね。

神谷

そうです。意外にそういう視点で研究されている方は少ないです。物性物理は奥深く、学問の意義としては高いですが、そこで終わると全体が進まなくなります。性能の良い材料の使い道の案をたくさん考えておかないと、システムとして成立しないわけです。

沼澤

プロジェクトにはNIMSから数十名が参加していますが、特に材料研究者が多い。その中から出てくる最も使える成果は1件か2件です。数十の材料を開発していますが、各々の研究者が各々の視点でやっていて、それをないがしろにすべきではない。一方、材料開発の世界では、100 個ある中から一つしか成功しないことはよくあります。では他が全部無駄になるかと言えばそうではなく、必ず別のフェーズで役に立つ。材料開発で、NIMSで一番重要な部分は多様性です。多くの研究者がいて、皆考えが違う。約800人の研究者が、800の別のことを考えている、それに独自の案でアプローチさせる。その中から上手に拾い出すのが神谷の仕事です。

磁気冷凍技術の 社会実装プロジェクトの現状

磁気冷凍は10年のプロジェクトとお聞きしましたが、現時点で成功していること、逆に直面している課題などは何でしょうか。

沼澤

プロジェクトは2018年11月に採択されたので、今は5年目になります。始めの4年間(ステージⅠ)は、磁気冷凍機が本当にきちんと冷えて液化水素を作れるかという概念実証を行いました。これは成功して、去年の11月頃にステージゲートという審査に通って今はステージⅡです。ステージⅡは3年で大型化が目標ですが、ステージⅢでは社会実装できる水準の冷凍機までブラッシュアップします。これは未来社会創造事業大規模プロジェクトで、ステージⅠまでは基礎研究でJSTの予算でかなり自由に多様な研究を行えたのですが、ステージⅡからは企業の参加が必須で、技術を実用化してビジネスの一歩手前まで持っていくことが目標です。ステージⅡ、Ⅲは一種のマッチングファンドで、企業もある程度お金と人を出します。現時点で企業14社、9つの研究機関が参加していますが、今後企業の数が増える可能性もあります。水素の実用化、エネルギー原料の確保は関心を集めていて、参加したいという企業も多いです。

神谷

このプロジェクトでは、効率よく水素を液化して、水素の価格を流通しやすいレベルまで落とすことを目指しています。現在、標準状態(0℃、1気圧での1m3 のガス)で約100円の水素を、2030年までに30円までにするという政府の政策目標があり、その一環を担っています。100円の中で3分の1は液化に使われます。まずはそこの効率を上げる必要がありますが、既存の冷凍機ではそれが困難で、そこの壁を打ち破れるのは、磁気冷凍に代表される革新的な次世代冷凍機です。既存の冷凍機のサイクルは、コンプレッサーで圧縮して、それを別のところで冷やし、室外機で冷やして膨張するという単純なもので、インプットするエネルギーの半分が熱として無駄に放熱されると、その時点で効率が50%になる。水素の液化でいうと、典型的には液化効率25%くらいが最大です。つまり、1投入すれば液化できるものを4くらい投入する必要があり、3くらいが無駄になるのです。25%を50%にまで上げたいのですが、磁気冷凍ならそれができます。磁気冷凍の材料を拾い集めて2度、3度という温度変化を与えてもできないので、その材料を束ねてシステム化して大きな温度差を生むということです。

AMR(蓄冷型能動的磁気冷凍)の開発に成功

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AMR(蓄冷型能動的磁気冷凍)

神谷

ですから、まずはAMR(蓄冷型能動的磁気冷凍、Active Magnetic refrigerator)を開発して、それによって液体水素を冷やして世界で初めて液化させることが最初のミッションでした。それを昨年、フェーズⅠにて世界で初めて実現できたので、プレス発表して論文にしました。今後はそれを大型化していきます。10年後には1日で100キロの液体水素を作る能力を備えた冷凍機を生産して、液化効率50%超えを実現するという目標があります。原理はわかっていますが、この部品はここで良いのか、アスペクト比がこういうのが良いのか、とかいうような議論が無限にあります。原理上では効率が良くても、それを実際の容器としてどういう大きさにするのかを考えるには数値計算が必要になるので、Ansysをフル活用して今進めています。それがうまくマッチすれば、フェーズⅡの目標も達成されると思います。

次世代エネルギーとして活用が促進されるには、インフラの部分も整えていく必要もあるかと思うのですが、その辺りでも何か活動が進んでいるのでしょうか。

沼澤

山梨県が最も水素エネルギーに熱心で、メガソーラーを自前で持っていて運用しています。そして、それの一部の動力、エネルギーを使って実際に水素を作っています。立派な水素製造施設を作って、周りの工場やスーパーなどに水素を出荷して水素エネルギーを使ってもらい、一種のサプライチェーンを構築しようとしています。いわゆるPtoG(Power to Gas)がメインですが、PtoL 、すなわち液化水素も商品の中に入れたい。たまたま我々のプロジェクトにとある企業が入っていただいているのですが、その企業が山梨県とタイアップして磁気冷凍技術を持っていきます。そこで、グリーン水素という、再生利用エネルギーで作った水素を初めて液化しようという話が進んでいます。ソーラーの太陽電池であれば系統と言っていますが、送電線にも入りきれないぐらいたくさん発電されていて、電力会社も困ってしまって。例えば九州だと日照時間が長いので使い切れずに捨てているような状況です。ソーラーエネルギーを、水素製造用に特化しようとしている会社もある。我々は水素ガスを液化する技術を持っているので、磁気冷凍実装が実現すれば地産地消のエネルギーになります。

神谷

そういう形で色々と声をかけて頂いていますね。離島などに風車を置けばいいのですが、電気を送る権利(送電権利)がない人達がいる。そうすると、ここに水素を貯めたらいいのに、という人もいて。いろいろな需要があります。

沼澤

大規模な液化機はまだ少し先ですね。その前に、比較的小規模のメガソーラーぐらいがぴったりです。
今市販されている冷凍機を持っていくとコストがかかります。建物をしっかりと作って、コンプレッサーを頑丈に設置して、といわゆる定置型の装置が必要になりますが、神谷方式だとトラックで運んで設置すれば次の日から動かせます。そういったメリットを十分生かした上で、事業化が進んでいけばいいと思います。自分のところで作りたい、売りたいという会社があるので、今後普及すると思います。

ありがとうございます。現在はフェーズⅡのスケールアップの段階とのことですが、何か課題はございますか。

神谷

超電導マグネットを大きくすることは課題の一つです。今は直径内径が大体12センチほどのコイルを使っていますが、それがどこまで大きな超電導コイルにできるのか。できたとしても、それだけの大きな強い磁場と、サイズの大きなコイルが我々のプロジェクトの中に組み込めるのか。そこに入れる磁性体の材料も多くなる。さらには、磁場同士をキャンセルさせるような磁気力。磁気回路の設計が今後重要になるのかなと。材料的には、大量生産の課題もあります。

沼澤

今までは一つの材料だけを使っているものの、それだと温度が広くなると一つの材料でカバーできなくなる。そこで2つの材料を使う、と。NIMSでは、既に発見された材料は様々な温度に適用できるように組成を変えられます。今度は、この一つの容器の中で温度スパンができるので、その中にあった材料をそれぞれの温度スパンに入れますが、非常にリスキーです。この温度だけだと非常にいい性能が出るが、他の温度では我関せずで、全く性能が出ないことがあるからです。性能が出る温度を作れればいいですが、はじめの状態は一定温度になっているわけで。きちんとした温度勾配ができるかは、未知の分野です。

シミュレーションの活用における課題

そこでシミュレーションが生きてくるという訳ですね。現在シミュレーションをご活用されている中で、何か課題などがあればお聞かせいただけますか。

沼澤

最近の成果として、今出ている実験の状況をシミュレーションできるようになりました。ですが、現実には実験結果がよくわからなくてAnsysで確認したというケースです。やはり、Ansysに求められるのは予測だと思います。事前のA・B・C案の実験をいちいち装置に合わせて作るのは大変なので、事前にシミュレーションをして検討できることが理想です。

神谷

マンパワーによるところと、Ansysで磁気冷凍を再現するのが思ったほど簡単ではなかったということが正直なところです。それがようやく目途がついてきて、これからです。この装置で、どれぐらいの冷凍能力でいけるかを示せるようになってきた。理想的にロスがなければ何ワット行く、ということが、もう少しで断言できるようになるかなと。

沼澤

それをぜひ頑張ってもらいたいです。ある温度勾配があれば、その排熱する温度と吸熱する温度で、どれぐらいの磁気熱量効果でどれだけの熱量の交換をするのかがわかるので、カルノーサイクルとか冷凍サイクル、磁気冷凍のAMRサイクルでもいいのですが、それの理想値としてのパターンをエスティメートするのは簡単です。しかも、それにざっくり効率50%だから半分、と計算で求めていて、それでも当たらずとも遠からずです。だから、本質的にはそれで正しいが、内部でどういうことが起きているのか、バケツリレーが実はどこかで休んでしまってうまくいっていない、とか、そういうことがあればそもそもの過程が変わるので、そこを一番知りたいですね。

神谷

AMRで理想的なサイクルが実現するか否かは実験だけだとわからないので、それは数値計算と一緒で今後進めるべきことです。

沼澤

金沢大学で、今言ったシンプルなモデルでのシミュレーションをやっています。今言った熱のバランスだけでやっていますが、それでもあたらずとも遠からずではあります。少なくとも理想的な値はそれでわかりますが、実際のロスがどうなったのかはAnsysでないとわからないのかなと。

神谷

現実の形状とか、3Dや2Dで初めてわかることはあるので、そこに特化していくでしょうね。金沢大の計算コードはすごくいいと思いますが、それに対してAnsysはやはりかなり真面目に解くので。ワンサイクル10時間かかっているので、5サイクルだと50時間かかってしまいます。Ansysは、スパコンに繋げることができるのでしょうか。NIMSにも徐々にスパコンの導入が始まっているので。

弊社

やはり解析時間は皆さん多くの方が悩まれる部分です。スパコンについては、大学などでお持ちのスパコンでも回せておりますし、基本的にはご利用いただけると思います。解析速度という点では、マシンスペックも大事ですが、ライセンスの部分でも解決できるかと思います。今4並列でやっているのが辛いところかもしれません。

神谷

担当者にもそういう気持ちはあって、計算を流しながらモデル開発をするというような、次の手を打とうと思っているのですが、厳密にはライセンスが2 つないとできないと。

弊社

いえ、ライセンスを増やすというより、ソルバーとプリポストのライセンスを分けるだけでも、十分な効果が見込めます。計算を流している間に設定の方をする、CADをいじるということができるようになりますので。丸々 2本購入するのではなくて、1 本を分割して使えるようにするイメージです。そうすることで、2本買うよりも安くなります。

神谷

なるほど、分かりました。また今度お時間があるときにでも詳細を聞かせていただければと思います。

沼澤

投資に見合う価値があるなら、もちろんライセンスの本数を増やすことはできます。お金を管理している側から見て、払った分のパフォーマンスが得られるかどうかは常に関心事ですから。

神谷

御社には、いま、液化機のモデリングをお手伝い頂いていて、そこはお持ちのノウハウを元に手厚いサポートをしてくださり、大変助かっています。一方、磁気熱、磁気冷凍をAMRでの再現することは可能になりましたが、一筋縄ではいかなかった。Ansys では、温度の関数で上がることはできても、温度と磁場の関数の2変数で上がることがデフォルトではできなかったので、様々な工夫をしました。Ansys 社に、今後は標準仕様でそういうことをできるように訴えたいなと。磁気冷凍が成功して世に出始めると、Ansys社のおかげ、という話になると思います。そういうのをやりたいと思っている物理屋さんは結構多いはずで、それができないのはもったいないので、ぜひ前向きにご検討頂きたいです。

弊社

その点は開発元へ要望を出しております。一般的な汎用ソフトウェアとして、ユーザーが比熱を変にいじっておかしな結果が出てしまわないようにする、といった親心のようなものがあるかもしれません。
一般的な材料では、比熱は温度だけの関数でなければ熱力学のいろいろな関係式が破綻する、という理論的な背景があるので、基本的にはいじれないようになっているようです。実在気体モデルなど、一部に比熱をカスタマイズする機能も用意されてはいますが、固体材料など他の部分ではある種ブロックされている状況です。ここを変更できるようにするとなると、結構大きな仕様変更になると思うので、どこまでできるかわかりませんが、こういう背景は伝えているので、要望を聞いていただけると良いですね。

沼澤

我々にとっては肝ですので、ぜひ対応をお願いしたいですね。

神谷

デフォルトではそれで良いのですが、ユーザー定義関数(User-Defined Function)ではそういうのができるようにしておくとか、そういう柔軟性があってもいいのではないでしょうか。

弊社

なるほど、貴重なご意見ありがとうございました。まだまだプロジェクトは継続していきますので、磁気冷凍技術の実現に向けて、引き続きサポートさせていただきたいと思います。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

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磁気冷凍システム開発グループの皆さまとAMR(蓄冷型能動的磁気冷凍)

エネルギー・環境材料研究拠点 液体水素材料研究センター
神谷様、沼澤様には、お忙しいところインタビューにご協力いただき誠にありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。

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