ストークスパラメータの最後に、偏光度、という指標をみてみます。偏光度とは、文字通り偏光の程度を示す指標です。ストークスパラメータを使用し、次のように定義されます。
このDOPは、完全に1つの偏光状態のみを持つ光であれば1(完全偏光と呼びます)となり、全く偏光状態がわからない(無偏光または非偏光とよびます)の場合は0となります。 全体の何割かはXXX偏光である、またはXXX偏光とYYY偏光とZZZ偏光とが混ざっている、などという場合には、0 〜 1の値を取ります。
完全偏光の場合を考えて見ます。
例として、円偏光のケースを考えて見ましょう。円偏光ですから、位相差は±π/2です。
以上の式のそれぞれにφ=±π/2を、及びA0y = A0xを代入すると、
となり、DOPを計算すると、1となります。
次に無偏光(非偏光)の場合を考えて見ます。
読んで字のごとく、偏光の向きに偏りがなく、あらゆる方向に光が振動しているため、強度のみが観測され、どの測定方向の強度も等しくなります。即ち、
となります。そのため、ストークスパラメータは、以下のようになります。
最後に部分偏光を考えてみます。
ここまでに完全偏光と無偏光の場合を計算したので、両者を混ぜてみましょう。これで部分偏光となるはずです。
完全偏光を表すストークスパラメータを以下のように表します。添え字Aを追加します。
次に、無偏光を表す場合を以下のように表します。添え字Bを追加しました。
ここから部分偏光を表すストークスパラメータは両者の和を取り、以下のようになります。
お互い、干渉しないもの(インコヒーレント)として足し合わせています。
よって、偏光度DOPを見積もってみると、分子、分母の2乗がそれぞれ
となるため、差を取ると次のようになります。
更に変形して整理すると、
が導かれ、結局、
となります。部分偏光ということが分かります。
ストークスパラメータとは、偏光状態を表すもので、測定可能な強度により構成されます。
偏光を表す、という意味ではジョーンズベクトルと同じですが、実測可能な数値により表現される、という点が大きく異なります。あとはストークスパラメータを用いると「偏光度」が記述できるという点が特徴的です(ジョーンズベクトルは1つの偏光状態のみを表現します)。ストークスパラメータも、一つ一つ導出してみると、そんなに難しい点はなかった(?)・・・のではないでしょうか。
ここまで、偏光計算に良く登場するジョーンズベクトル、ジョーンズマトリクス、ストークスパラメータについて、順を追って説明しました。どうでしたか? 計算のキモとなる考え方は、そんなに難しくないと思います。振幅を2方向に分解する、という考え方さえわかってしまえば、後はベクトルや行列の計算に過ぎません。
また、ジョーンズベクトルに対してジョーンズマトリクスがあるように、ストークスパラメータに対応する行列も存在し、この行列はミューラーマトリクスと呼ばれています。4 x 4 行列です。成分が16個もあります。これは、機会があれば、取り上げたいと思います。
今回はここまで。