いまさらきけない光学計算第6回:偏光を計算するために

この記事の内容

1: ジョーンズベクトル

0-1〜3では、偏光に関しておさらいを行いました。振幅をベクトルとみなし、光の進行方向に対して垂直な2成分へ分解して考えました。
この章では、偏光を上手に扱い、計算に組み込むための道具を紹介します。まずは「ジョーンズベクトル」です。
簡単に説明すると、光の進行方向に垂直な2方向の振幅を仮定し、本来の光の振幅を表します。考え方のスタートが、「2方向の振幅」というところがポイントです。

何かな感じがしませんか?

この考え方、既に触れた考え方と同じです。以下の式です。


A(Z)Ax(Z), Ay(Z) を用いてベクトルとして書き直すと、

J = {Ax(Z), Ay(Z)}

となります。
ただひとつ、ジョーンズベクトルは、複素数を使って波を表現するという点が異なります。Phaser表記で波を表します。これまでのコサインを用いた実数表記を複素数表記に書き換えると、次のようになります。


iは虚数単位、k=2π/λ(波数)、φはAx(Z)に対するAy(Z)の位相差、です。

従って、A(Z)を成分で記述すると以下のようになります。


この式の後半部分、ベクトル部分


がジョーンズベクトルです。書き方は何通りかあり、参考書によっては、


や、絶対値を1に規格化した


という表記となっていることもあります。どれも本質は同じですので、自身が理解しやすい形式でご理解下さい。

よく、ジョーンズベクトルのみで○○○偏光、×××偏光などと表現されます。はじめのうちは、ジョーンズベクトルだけを見ても、どんな偏光状態を表しているか、すぐには分かりません。慣れるまでは、以下の例のようにフェーサー表記に置き換え位相差を計算してみましょう。どのような偏光状態を表しているかが簡単に分かります。次の例で少し練習してみましょう。

例:ジョーンズベクトルが(1,i)の場合、

{A0x,A0yexp(iφ)} と比較して、A0x = 1としてみます。
すると、ジョーンズベクトルの絶対値から、A0y = 1 がすぐに求まり、残るexp(iφ) = iを満たすφを解けば終わりです。(1= exp(i*0)と置いても分かりやすいと思います。)
複素平面を描き、「i 」をPhaser表記で表すと、i = cos(π/2)+i*sin(π/2) = exp(i*π/2)
であることが分かります。

Ax(Z)= exp(i*0)、Ay(Z)= exp{i*(π/2)}

よって、φ= π/2となり、Ay(Z)Ax(Z)に対してπ/2 [rad]進んでいる、ということが分かります。即ち、(1,i)というジョーンズベクトルは、右回り円偏光を表すことが分かります。
Ax(Z),Ay(Z)を平面上に表現すると次のようになります。

(イラストの都合上、実軸Re と虚数軸Imの方向を入れ替えています。)
更に、Ax(Z), Ay(Z)を合成すると、次のようになります。

他にも何パターンか実行してみると、より理解が深まりますので、お試し下さい。

練習のついでに、いくつか典型的なジョーンズベクトル作ってみましょう。
ジョーンズベクトルをJ とします。


直線偏光の場合、位相差0またはπ[rad]です。位相差 φ=0 [rad]の場合を考えてみますね。すると、


となります。

次に円偏光を考えて見ます。円偏光の場合、
A0x = A0y 且つ 位相差φがπ/2[rad](進んでいる)または-π/2[rad](遅れている)でした。

位相差 φ=π/2 の場合を考えて見ます。この場合、


となり、既に見た型が登場しました。では、位相差が-π/2[rad]の場合はどうなるのでしょうか?これはご自身で計算してみましょう。

ジョーンズベクトル まとめ

偏光の状態を記述するためのジョーンズベクトル、ご理解いただけましたか?
言葉で書くと、以下のように表すことが出来ます。


Z方向へ進む光の振幅を、直交するXY方向へ分解し、位相差をもつ2つの振幅で表現する、という点が肝です。ここさえ押さえておけば、かなり素直でわかりやすい表記方法だと思います。いかがでしょうか? 書き方も1つではなく、何パターンかあります。
いろいろなパターンを作成し、フェーサー表記とジョーンズベクトルの対応に慣れれば、特に難しいところはありません。

<< 前へ | 次へ >>

目次

 


お問い合わせ