いまさらきけない光学計算第4回:点像分布関数の計算

この記事の内容

3: 点像分布関数を計算してみる

3-1: 位相変換作用

実際に点像分布関数を計算する前に、凸レンズに関して考えてみましょう。
凸レンズは、入射する光線を集光する作用があります。即ち、発散光や平行光線を焦点へ集光させる機能を持つレンズが凸レンズです。この現象を「波面」という観点から見直してみると、発散波面や平行波面を集光波面へと変換する機能を持つレンズが凸レンズ、と言えます。

仮に完全に1点に集光する波面があるとすれば、この波面は焦点を中心とした球面形状となります(この球面からの誤差が収差です。また波の性質により、完全に1点には集光しません)。このように、発散波面や平行波面を焦点へと向かう集光波面へと変換する作用を持つレンズが凸レンズです。

レンズには波面の形状(等位相面)を変更する働きがあります。波面の形状が変わるということは、レンズを通過する際に、通過する位置に応じた位相差が付加されるということに他なりません。その結果、平面波や発散波面は集光波面へと変換されます。これが、レンズの位相変換作用です。(凹レンズは波面に対して凸レンズと逆の作用があります。)

3-2: 2次元で計算してみましょう。(収束球面波を平面内で計算)

ここから、少しだけ難しくなります。2-4までは、2つ、または4つの点光源から放たれる光を利用して計算を行いました。これは、ある程度の間隔を置いて離散的に光源が配置されている状態で、ちょうど平面波がスリットを通過し、伝搬するケースに相当しました(いち平面内の計算ではありますが)。このとき、スリットの直前と直後では光の位相に変化はありませんでした。下図のようなイメージです。


平面上のN個の点光源は、平面波がN本のスリットを通過することに相当します。

レンズを通過する波面を考える場合、レンズの位相変換作用を想定し、平面波から収束球面波への変換が必要です。即ち、位置に応じた位相差を付加します。こうして焦点付近の強度を計算すると、本来は開口から非常に遠い位置にしか現れない干渉パターンが、比較的近い位置(焦点位置)に現れるようになります。

今、厚み0の理想レンズ(平面波を完全な球面波へ変換する作用を持つ凸レンズ)で考えて見ましょう。 この厚み0の理想レンズへ入射する平面波は、位相変換作用により焦点へ向かう収束球面波へと変換されます。次のようなイメージです。

平面上のN個の点光源に対し、収束球面波となるよう位置に応じて位相差を付加し、焦点位置で強度を計算すると、理想レンズのPSFが得られます。Nの値を増やすことで、スリットではなく、ある程度の幅を持つ開口を通過する連続な波面の離散的な近似が得られます。

このようにして、実際に計算した結果は以下の通りです。2次元平面内の計算ではありますが、ピークに加え、周囲の輪帯も現れました。これが点像分布関数です。

2次元平面内の計算は、ここまでです。次は3次元空間内に拡張して見ます。

3-3: 3次元で計算してみましょう。(収束球面波を空間内で計算)

2次元平面内でPSFを計算することが出来ました。続いては、3次元空間内で考えてみます。ここからは空間内に配置された、ある平面から別の平面への計算です。左側の開口面に理想レンズが配置され、入射する平面波を焦点面へ向かう収束球面波へと変換する、と仮定しています。

上図の場合、矩形開口から出てくる光(現実には連続した球面波)を縦横N個ずつの点光源で表現しています。無限遠からの波面が、矩形に切り取られた状態で焦点へと集光します。

矩形開口(右下)、円形開口(左下)を計算した場合、得られる点像は次のようになります。

矩形開口の場合、強度のピークを中心として、縦横方向に次の強度が現れました。
続いて円形開口の場合です。

円形開口の場合、円形開口内部(波面が通過)では振幅を与え、開口外部(波面が遮断)では振幅を0として計算を行います。

円形開口の場合、強度のピークを取り巻くように輪帯状の強度分布が現れました。

矩形開口、円形開口ともに、光学のテキストでおなじみのパターンが現れました。

4:まとめ

今回、PSF(点像分布関数)に関して説明しました。いかがでしたか?
球面波からスタートし、振幅の重ね合わせや瞬間的な強度、および時間平均を取った強度の計算に加え、フレネル領域、フラウンホーファー領域に対応する計算式の導出を経て、実際に点像分布関数の計算へと進みました。
基本的には、「球面波」を表す式と、「波面」という概念を知っていれば計算することが出来てしまいます。(数値計算には多少のプログラミングの知識は必要ですが・・・)
それぞれのパート毎に計算過程を振り返ると、特に難しい点はなかったと思います。しかしその途中の計算過程を省略したり、後回にしたりしてしまうと、「あれ?」「これ何?」「どういう意味?」という箇所が出てきます。
そこで、市販の光学参考書で省略されてしまいがちな箇所を補うつもりで記述してみました。多少なりとも皆様の理解の手助けとなれば幸いです。

(点像分布関数の計算 おわり)

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