CT による内臓脂肪計測を導入 メタボリック症候群に対応する専門外来を開設 川崎市立井田病院

「Slim Vision では、画像や解析データを記載したレポートが作成されます。画像は、内臓脂肪を赤、皮下脂肪を青で表示していますので、わかりやすくインパクトのある情報になっています。画像は視覚的に訴えられますので、百聞は一見にしかずでその後の健康指導で強い動機づけになります。」

川崎市立井田病院 循環器科 麻薙美香医長
川崎市立井田病院 放射線科 田中米雄主査

使用製品 SlimVision

川崎市立井田病院では、2007 年6 月からメタボリック症候群に対応する診療を行う「メタボリック症候群外来」を開設した。メタボリック症候群予備軍に対する検査や食事・運動などの健康指導を行う「メタボリック改善コース」の実施などを通じて継続的な健康指導や診療などを行う。同病院ではメタボリック症候群検査のメニューに、CT 画像から内臓脂肪面積を計測する「内臓脂肪計測CT」を取り入れ、内臓脂肪解析ソフトウェア「Slim Vision(サイバネット社)」が活用されている。

08 年度から始まるメタボリック症候群をターゲットにした特定健診及び特定保健指導を先取りしたメタボリック症候群外来の運用の現状と、内臓脂肪計測CT(以下fatCT)の活用について、メタボリック外来を担当する循環器科の麻薙美香医長と放射線科の田中米雄主査にお話をお伺いしました。

目次

概要メタボリック症候群に対応した検査コースと外来を開設

井田病院でスタートした「メタボリック改善コース(以下改善コース)」は、検査では血液検査の他、動脈硬化度測定、頸動脈エコー、fatCT などで総合的な判断を行うほか、栄養士、理学療法士による食事や運動に関する講義、糖尿病食をベースにした昼食などがセットになっている。

メタボリック外来(以下メタボ外来)では、改善コースの受診者への継続的なフォローを行うほか、他の医療機関や検診などでメタボリック症候群を指摘された患者の検査や指導を行うことが目的だ。

同病院でのメタボリック症候群への取り組みについて麻薙医長はつぎのようにいう。

「私は循環器科の専門医ですが、心血管系の病気は予防が一番重要です。なかでもメタボリック症候群は、代謝異常というだけではなく動脈硬化を引き起こす大きな原因になります。メタボリック症候群の初期の段階から対応することで、動脈硬化の進行を防ぎ脳卒中や心筋梗塞などの発症を予防できるのではと考えて始めました」。

メタボ外来は週1 日で約10 人。改善コースは週1 回で1 日コース4名と1 泊2 日コース1 名を行う。「基本的には、まず改善コースを受けていただきます。その中で継続的に指導、治療を行ったほうがいい方をメタボ外来で拝見します。改善コースは、原則的に検診などで脂質異常や高血圧が指摘された方が対象です。年齢層は30 代から70 代まで幅広く男女比は7:3 くらいですね」(麻薙医長)。

改善コースは6 月からスタートしたが、当初は新聞報道などもあって予約が集中して3 ヶ月待ちになったという。「一般の方の関心が予想以上に高くて驚きました。メタボリック症候群に対する本格的な特定健診が始まるのが08 年4 月ですので、今の時期にこれだけ来ていただけるのは予想外でした。一時は3 ヶ月待ちの状態になりましたが、枠を増やすなどで待ち時間を減らす努力をしています」(同)。

運用fatCT、動脈硬化測定などの検査と食事・運動指導を提供

同病院でのメタボリック症候群への取り組みのポイントは、検査だけでなく、受診者への情報の提供と外来での継続的なフォローアップを行うことだ。

「改善コースでは、まず各種の検査で自分の身体の状態を把握していただきます。その上で身体に何か問題があれば、メタボ外来でのフォローやかかりつけ医へご紹介します。我々の目的は、検診後もしっかりとフォローして生活習慣を変える健康指導まで行うことです。従来の人間ドックや検診では、検査値に問題があってもそれが受診行動に繋がっていませんでした。来年度からの特定健診では、健康指導にも取り組むことになっていますが、ここでも、検診の結果についても責任を持ってフォローする体制を作りました」(麻薙医長)。

改善コースでは、検査だけでなく看護師、栄養士、理学療法士によるメタボリック症候群の基本的な知識や健康のための食事や運動に関する講義を提供する。また、外来では、半年後の目標体重を設定し、月1 回医師による問診、理学療法士や栄養士による面接を行う。

「医師を中心に各専門職がチームを組んで対応します。栄養士、理学療法士、心理療法士、糖尿病看護認定看護師などがタッグを組んで、いろいろな面から問題点を見つけて指導していくことがねらいです。面接では、食事内容や運動量をチェックして個人個人の問題点をフォローして、その方の体質や生活にあわせたオーダーメイドの指導を行っていきます」(同)。

fatCT内臓脂肪の正確な把握のためにCT 画像から面積を計測

メタボリック症候群では、特に内臓脂肪の蓄積が問題視されている。改めて麻薙医長に内臓脂肪の危険性について聞いてみた。

「肥満の中でも特に内臓型の肥満は、高血圧、脂質異常、高血糖などの危険因子が加わることで、動脈硬化になり心臓病や脳卒中などの疾患に繋がる確率が高いといわれています。内臓脂肪は、単に内臓についた『脂』というだけではなく、ホルモンやアディポサイトカインなどの生理活性物質を分泌するひとつの『臓器』と考えられます。アディポサイトカインには、動脈硬化を進行させる悪い作用をする種類があり、内臓脂肪はその原因物質を出す『悪い臓器』です」。

メタボリック症候群の診断基準は、ウエスト径(腹囲)が男性で85 p、女性90 p以上であり、(1)中性脂肪が150mg/dl 以上またはHDL コレステロールが40mg/dl 未満 (2)血圧が130/85mmHg 以上 (3)空腹時血糖が110mg/dl 以上、のうち2 項目以上で当てはまることとされている。なかでも特定健診でも腹囲の計測が取り入れられたように、メタボリック症候群の診断では内臓脂肪の蓄積を判断することが必要だ。

「特定健診では、立位での腹囲が診断基準になりますが、この値が男性より女性が大きいのは日本だけで、そのあたりでまだ議論があるところです。内臓脂肪を正確に把握するには、腹囲の計測だけでは限界がありますので、当病院では内臓脂肪の診断、解析のためにCT 画像から内臓脂肪面積を計測するソフトウェアSlim Vision を導入しました」(麻薙医長)。

fatCT では、臍の位置で撮影した画像を解析して内臓脂肪の部分の面積が100cm2以上がメタボリック症候群の指標となる。


内臓脂肪計測CT のレポート。
内臓脂肪を赤、皮下脂肪を青で
色づけした画像と計測値を記載する

「Slim Vision では、画像や解析データを記載したレポートが作成されます。画像は、内臓脂肪を赤、皮下脂肪を青で表示していますので、わかりやすくインパクトのある情報になっています。画像は視覚的に訴えられますので、百聞は一見にしかずでその後の健康指導で強い動機づけになります。fatCT は、放射線科の協力で予約なしで当日に撮影できます。外来でのオーダでもX 線や心電図などのように当日検査で結果も出ます。検診や健康指導ではタイミングがポイントで受診者が思い立った時にすぐに検査ができる体制を整えていきたいですね」(同)。



CT はシングルで
1日30 件以上の検査を行う

麻薙医長は、腹囲と内臓脂肪面積の関係について、つぎのようにいう。「男性は、女性と比べて内臓脂肪がつきやすいのですが、fatCT でも女性と同じウエスト径でも内臓脂肪が多いことがわかります。これまでの印象では、女性はウェストが90p以上でもfatCT では内臓脂肪が少ないことが多いです。今後、データを蓄積して、腹囲と内臓脂肪の量や血液検査のデータとの関係を明らかにできるといいですね。外来では半年後に再度fatCT を撮影しますので、内臓脂肪の減少がどれくらい検査データに影響するかなどの統計も取れるのではと期待しています」

展望予防のためには継続的なフォローアップが重要な課題

同病院でのメタボリック症候群へのこれからの取り組みについて麻薙医長はつぎのようにいう。

「動脈硬化は、症状がなく知らない間に進行します。発見されたときはすでに重症ということがあります。それを早期発見して、できるだけ薬に頼らず生活習慣の改善によって自分の健康を守るようなスタイルを作りたいというのが、今回の取り組みの一番の願いです」。

今後の課題について聞いてみた。「これからの健康管理、疾病予防は、08 年度からの特定健診の基本的な考え方がそうであるように、健康診断で何らかのデータに問題があった方が、そのままにならないようなシステムを作ることが重要です。メタボ外来や改善コースが、自分の身体が『何かおかしい』『何とかしたい』と思った時に、すぐに受診ができる受け皿になれたらいいと考えています。その中で、井田病院は地域の中核病院として、専門家によるチームでの対応と高度な検査まで提供できます。健康になるための情報や手段を、医療として提供することが我々のチームとしての役割です。その意味で、受けてみたいと思った時にできるだけ早く受けられるような体制を整えることが大切で、これからもう少し検査枠を増やしていく予定です」(同)。

メタボ外来及び改善コースでは、麻薙医長をはじめ多くのスタッフが関わる。

「メタボリック外来は、コメディカルの看護師や理学療法士などの支えがあって成立しています。健康指導や健康管理は、個人の意欲を継続させることが成功の鍵になります。医療側からの一方的なアプローチだけでなく、患者さんとの信頼関係を作りながら、継続的に一緒に取り組んでいけるようなパートナーシップを築いていくことが理想ですね」。

08 年度からの特定健診・健康指導への取り組みでは、まだまだ試行錯誤が続く。井田病院での一歩先のアプローチの成果が期待される。

田中米雄主査に聞く
シンプルな操作のSlim Vision で当日検査を実現


右が田中主査、左は柳井田看護師

川崎市立井田病院は、神奈川県内に5 施設あるがん拠点病院のひとつとして、がん検診はもとより、予防医学にも力点を置いて取り組んでおります。その一環としてメタボリック症候群へ対応した外来と検査コースを新たに設けました。目玉のひとつとして挙げられるのが、メタボリック症候群検診コースの項目の中に、内臓脂肪をCTで計測する方法を導入したことです。fatCT にはいくつか製品があったのですが、サイバネットの「Slim Vision」を紹介されました。学会等で実際に製品にふれてみて、会社としてのレスポンスがよかったのが好印象でした。また、競合製品と比べても安価だった点も大きかったですね。

製品の使い勝手は、シンプルで使いやすいことが一番です。撮影した画像を取り込んでワンクリックで解析できますので、操作性や使い方に何か特別なことがあるわけではありません。放射線科ではヘリカルCT1 台で運用していますが、この体制でfatCTの当日検査を行い、その日のうちに結果を診療科に提供しています。CT は1 日約30 件撮影していますが、通常のCT 検査を行いながらの運用ですのでfatCT に関しては撮影から解析まで手間がかからずできるのは、現場として大変助かります。

これから先の期待としては、今後メタボリック外来のデータが蓄積された時に、前回検査と比較して改善度合いなどをグラフで表示できるようになるといいですね。

当院では外来で継続的にフォローしていますので、生活習慣の改善とfatCT の相関データが出てくるでしょう。体重や血糖値の改善による内臓脂肪の変化がわかれば、健康管理の動機付けに役立つのではないでしょうか。

 

お忙しい中、インタビューにご協力いただきまして、誠にありがとうございました。

 

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