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構造解析(こうぞうかいせき)

英訳:structural analysis

構造解析とは

構造解析の概要

構造解析とは、構造物や物体に荷重をかけたとき、それに対して変形や内力(応力)がどの程度発生するのかを計算して数値化し、それに基づいて定量的な評価や分析をすることです。変形や応力の他、構造物や物体が持つ振動数の計算も構造解析の対象です。昔は、変形や応力の値を求める構造計算は手計算や計算尺などで行われていました。現在、構造計算はコンピュータープログラム化されており、シミュレーションソフトウェアを用いて行います。


図1 Ansys による構造解析

有限要素法(Finite Element Method:FEM)は構造力学における数値解析の代表的手法です。構造物や物体を小さな要素(Elements)に分割して、方程式を用いて計算し近似解を求めて、構造物にかかる荷重により発生する変位や応力の値や分布を導きます。構造解析ソフトウェアの計算手法として、有限要素法はよく採用されています。

構造解析の目的とメリット

構造解析は、構造物や物体にかかる変形や応力を把握することで、設計物の破損や破壊の可能性を予測し、安全性を評価することが目的です。

構造解析でシミュレーションソフトウェアを活用することで、手計算ほどの手間がかからないことと併せて、人の思考では限界のある複雑な計算や解析が行えます。シミュレーションソフトウェアでは、3Dデータとコンターのマッピングによる計算結果の可視化が行えます。

シミュレーションソフトウェアを用いて構造解析することで、品質向上や開発期間短縮、コストダウンといった効果の他、「勘」や「コツ」頼りになっていた設計を理論化することを助けます。また、宇宙空間や原子炉の中など、人が生身で立ち入ることができない場面や、実験が難しい場合などで、構造評価することが可能になります。

構造解析と応力解析の違い

応力とは、構造物や物体の強度を示すための指標の1つで、単位面積に対してかかる外力(荷重)に対応する内力のことを示します。応力解析は、応力の数値や力の分布を把握することで強度を評価します。応力解析は、構造解析の手法の1つです。

構造解析の手法と種類

線形構造解析

構造解析における「線形」とは構造物や物体にかかる荷重と変位(変形量)が比例関係にあることを示し、直線状に右上がりのグラフとなります。線形構造解析は、変形や応力の計算結果が線形のグラフで予想ができる範囲での計算ということになります。

非線形構造解析

構造解析における「非線形」とは構造物や物体にかかる荷重と変位が比例関係にならないことを示します。構造物や物体にかかる荷重と変位を表すグラフの線形は、緩やかに曲がりながら右上がりになったり、波打ったりなどさまざまです。要するに、線形解析よりもはるかに複雑な計算を伴うことになります。

固有値解析

構造物や物体が持つ振動数(固有振動数)を計算し、それに基づいて定量的な評価や分析をすることです。構造物の破損や破壊の原因となり得る共振などを評価します。

座屈解析

「座屈」とは、構造物に荷重を徐々に負荷したとき、ある荷重で急に変形が大きなたわみを生じる現象を示します。

動解析

構造解析における「動解析」とは、時間経過に伴う荷重の変化を考慮する解析のことを示します。対して、時間経過による荷重の変化を考慮しない解析のことを「静解析」といいます。

伝熱解析

伝熱解析は、固体中や流体中の熱の伝わり具合や分布を計算して評価するものです。構造解析においては、温度変化による物体の膨張・収縮で生じる応力を計算する際に用います。

構造解析がよく使用される業界や製品

自動車

自動車においては、車両のボディやエンジン、シャシー、エアコンやECUなどのエレクトロニクスコンポーネントなどあらゆる部分の設計で構造解析が行われています。自動車は人の命を預かる存在であることから、強度や安全性については慎重に評価しなければなりません。実機試作をしての実験には大きなコストや時間がかかるため、解析をうまく活用することでコストダウンや開発期間短縮が期待できます。

金属加工

金属加工においては、板金に金型を押し当てて塑性変形させる加工(塑性加工、プレス加工)の成形性や加工後の形状予測などに構造解析が活用されます。板金を曲げる際には大きな荷重をかける必要がありますが、適度な荷重でないと材料を破損させてしまう、あるいは強度が失われるおそれがあります。金属加工においては、熟練の職人の勘が頼りにされてきましたが、若手への技能伝承などの観点で構造解析の活用は有効です。
自動車部品の板金加工解析の事例はこちら >>

ゴム製品

ゴム材料は柔軟性があり、荷重をかけたときにはダイナミックに変形します。また緩衝材やパッキンとして多用されることから、変形では物体との接触が伴います。荷重をかけた際の変形や応力の推移は非線形となり、計算の難易度が高まります。非線形構造解析ソフトウェアではゴム材料の特性に適した関数(解析モデル)を用いて複雑な計算を支援します。
Ansys Workbench を使ったゴム材料の解析事例はこちら >>

構造解析ツールAnsys

Ansysとは

Ansys は、米国Ansys社が開発した、世界中の企業・研究機関で導入されているマルチフィジックスCAEシステムです。航空宇宙、自動車、機械、電機、電子、医療工学など幅広い産業の製品開発に携わるエンジニアや設計者たちが使用しています。

Ansysの誕生は1970年代であり、長い歴史あるコンピューター解析プログラムでもあります。その歴史の中で、構造、振動、伝熱、電磁場、圧電、音響、熱流体、落下衝突、回路、システム解析とラインアップを拡充してきました。
Ansys についてはこちら >>

Ansysの特徴

Ansysは、多岐にわたる分野の解析プログラムと併せ、異分野の解析を複数連成させて複雑な物理現象について解析する「マルチフィジックス解析」ができることが特色です。さらに次世代操作環境であるAnsys Workbenchでは、1つのプラットフォームからさまざまな分野の解析ソルバーにアクセスでき、さらに使いやすいメッシュ生成ツールやデータ管理システムも利用できます。Ansysは解析のスペシャリストから、解析の初・中級者である設計者まで、さまざまなスキルレベルのユーザーに配慮したUIを備えています。

Ansysの構造解析例

・プラスチック容器の強度評価:静止流体要素を用いた非線形座屈解析
容器や包装の設計開発では、搬送や輸送時の耐久性を評価するため、試作品を用いた圧縮試験が実施されます。Ansysを用いた構造解析でその実験に相当する評価を行うことが可能です。
ペットボトルの強度評価の事例はこちら>>

・移動する物体を加熱する輻射伝熱解析:構造-伝熱ダイレクト連成解析事例
製品や部品の製造過程では、コンベヤーで製品を炉に送り加熱する工程がしばしばあります。Ansysによる構造-伝熱連成解析では、コンベヤーでの動きを考慮した製品の加熱状況を確認することが可能です。
構造-伝熱ダイレクト連成解析事例はこちら>>

・その他の構造解析事例
上記の他にも、サイバネットのWebサイトでは構造解析の事例を複数紹介しています。
構造解析事例の一覧はこちら>>

構造解析のAnsys製品一覧

Ansys Mechanical(構造・伝熱解析パッケージ)

構造解析システムであるAnsys Mechanicalにおいて、伝熱-構造の連成解析が行えるパッケージです。伝熱解析は、定常伝熱解析(非線形伝熱解析および非線形伝熱解析)と過渡伝熱解析に対応します。
Ansys Mechanicalの詳細はこちら >>


図3 Ansys Mechanical

Ansys LS-DYNA(落下・衝突解析)

LSTC社が開発する衝撃解析用のソルバーであるLS-DYNAをAnsysの操作環境に統合した製品です。収束計算を必要としない陽解法ソルバーを採用していることが特色で、非線形問題である落下・衝突に関連する製品や部品の挙動を高速かつ高精度に計算します。
Ansys LS-DYNAの詳細はこちら >>


図4 Ansys LS-DYNA

Ansys Autodyn(爆発・衝撃解析)

爆発・衝撃をはじめとした非線形時刻歴応答解析専用ツールです。現在はAnsys社である旧Century Dynamics社が開発した高速・超高速ひずみ速度問題を得意とする陽解法ソルバーを備えます。落下、衝突解析のほか、爆発、衝撃波にまつわる製品や部品の挙動の解析が行えます。
Ansys Autodynの詳細はこちら >>

Ansys nCode DesignLife(疲労解析モジュール)

Ansysで解析した結果を利用できる疲労解析環境です。Pythonを使用して疲労解析メソッドをカスタマイズすることも可能です。
Ansys nCode DesignLife の詳細はこちら >>

Ansys Additive Print/Additive Suite(金属3Dプリンター専用シミュレーション)

金属3Dプリンターにおける粉末焼結積層プロセスでの造形品の残留応力や変形、造形不良などの予測が行えます。
Ansys Additive Print/Additive Suiteの詳細はこちら >>

Ansys Sherlock(エレクトロニクス設計向け信頼性分析ソフトウェア)

設計の初期段階において、コンポーネント、回路基板、システムレベルで電子ハードウェアの寿命を迅速かつ正確に予測することができるツールです。
Ansys Sherlockの詳細はこちら >>


図5 Ansys Sherlock

Ansys Motion(高速Flexible Multi-Body Dynamics)

剛体と弾性体で構成する大規模モデルの変形について高速かつ精確な解析ができるツールです。機構、強度、振動、熱伝導、疲労といった幅広い解析が行えます。
Ansys Motionの詳細はこちら >>


図6 Ansys Motion


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