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構造解析

Ansysによるダイカスト金型に発生する各種現象の検討

岐阜大学 様

Ansysによるダイカスト金型に発生する各種現象の検討

CAEのあるものづくり CAEのあるものづくり vol.31|公開日:2019年11月

目次

  1. 背景と目的
  2. ダイカスト金型の変形解析モデルの検討[3]
  3. 金型の変形に起因する鋳ばり発生位置の予測
  4. ダイカスト金型の冷却孔に発生する割れ原因の検討
  5. まとめ

背景と目的

ダイカストはその生産性や成形できる形状の自由度の高さなどから、様々な工業製品の製造方法として広く活用されています。また、ひとつの型での生産量も多く、その寿命管理は生産管理上極めて重要な課題です。ダイカストの工程中では、金型に急激な温度や圧力の変化が発生します。これらが要因となり、ヒートチェック、焼付き、割れなど様々な損傷が発生し、金型の寿命低下や製品の品質低下を招いています [1]、[2] 。また、プロセス中の金型の状態変化に起因してダイカスト品には形状、および寸法精度の低下、バリの発生等の問題もあります。このメカニズムについては未解明なものも多いですが、その理由は、ダイカストは極めて複雑系の問題であることや、金型内の現象を直接計測することが困難であることが挙げられます。一方、近年のコンピュータシミュレーション技術の向上は目覚ましく、詳細な現象の観察とその結果をもとにしたシミュレーションによる分析を組み合わせれば、より多くの有用な情報を得ることが可能となっています。
本報では、ダイカストのプロセス中の金型に発生する現象の解明を目的とし、Ansysによるマルチフィジックス解析により検討した事例を紹介します。

ダイカスト金型の変形解析モデルの検討 [3]

ダイカスト金型は、金型の内側と外側から熱的、機械的な荷重を受けることによって、1プロセス中で非定常な変形となります。内側からの荷重の要因としては、溶湯による金型への入熱、冷却回路による抜熱、およびダイカスト時の圧力等が考えられます。一方、外側からの荷重の要因としては、成形機による型締めが考えられます。これらが入力荷重となり、金型の構造や材料の物性値に応じて最終的な金型の変形が決定されると考えられます。そこで、ダイカストのプロセス中に発生する金型の変形に起因するダイカスト品の不良現象の解明を目的として、ダイカスト金型として適当な解析モデルを検討しました。
前述したように、金型の変形要因のひとつにダイカスト中の金型の温度変化が挙げられます。温度を計測する方法には様々な方法がありますが、それぞれメリット、デメリットがあります。本研究では、金型の広い範囲の温度分布を把握することが重要と考え、取り出しロボットを活用した放射温度計による温度計測を行いました。その計測結果をもとにしてダイカストのプロセスシミュレーション(使用コード:ADSTEFAN)を実施し、①溶湯射出、②キュアリング、③型開き、④ダイカスト品取出し、⑤スプレー・エアブロー、⑥型締めの各工程の熱伝達係数を推定することによって1プロセス中の金型温度の変化を計算しました。その結果を用いて、Ansysによる伝熱・構造連成解析を実施することによって金型の変形を推定しました。金型材は弾塑性加工硬化モデルとし、室温から600℃までの応力とひずみの関係は2直線近似により表現しました。
金型の変形状態を検討する前に、成形機による型締め中の金型の変形状態を3次元デジタイザにより計測したところ金型は型締め方向だけではなく、天地方向に対しても変形していることが分かりました(図1)。

図1 3次元デジタイザによる型締め時の金型の挙動
図1 3次元デジタイザによる型締め時の金型の挙動

そこで、金型の変形に対して成形機の構造が影響していると考え、金型変形解析には成形機の諸元を反映させた解析モデルを用いました(図2)。

図2 成形機-金型の複合モデルによる変形解析結果(x 200)
図2 成形機-金型の複合モデルによる変形解析結果(x 200)

表1に金型内に設置したひずみゲージによる型締め時のひずみ値とシミュレーションにより計算したひずみ値の比較を示します。両者の値はほぼ一致しており、解析モデルとして妥当であると考えられました。

表1 型締め時の金型内のひずみ実測値と計算値の比較
表1 型締め時の金型内のひずみ実測値と計算値の比較

成形機の構造を考慮したうえで金型の変形状態を数値シミュレーションにより検証した報告は他にもあります[4]。しかしながら、本研究のように実測結果をもとにした検証例は少ないです。金型のみを解析モデルとしてその変形状態を検討する場合、適切な境界条件を与えることができれば有用な情報を得ることは可能であると考えられます。一方、成形機と金型をひとつの系として捉えたシミュレーションでは計算コストはかかりますが、金型に変形を発生させる様々な要因を含めて検討することが可能となり、より多くの重要な情報を得ることが可能になると考えられます。

- 参考文献 -
[1]西直美:型技術,27(2012),pp.18-25.
[2]日原政彦:電気加工学会誌,35(2011),pp.1-11.
[3]山縣裕,重永佳郎,谷川昌司,新川真人,機論C,79-806(2013),pp.3920-3929.
[4]たとえばChayapathi,A.,Kesavan,V.,and Miller,R.A.,DIECASTING ENGINEER,44(2000),pp.60-68.

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