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解析事例

構造解析

ボールペンの落下解析

Ansys MechanicalとAnsys LS-DYNAの連成

はじめに

ボールペンを床に落下させた際に生じる内部部品の変形や応力分布は、実験では観察することができません。そのため落下時の挙動を観察するためには、解析を行う必要があります。ボールペンの落下解析は、バネの接触状態が短時間で何度も変化するなど非線形性が強く、陰解法では収束が困難です。しかし、はじめにバネが収縮しテンションがかかっている初期状態を求める必要があるため、落下解析を得意とする陽解法では、計算時間が増加してしまいます。
そこで、本稿ではAnsys Mechanical(以下Mechanical)とAnsys LS-DYNA(以下LS-DYNA)の連成により、初期状態を陰解法で求めた落下解析の事例を紹介します。

解析モデル

(図1)のボールペンモデルを1000mmの高さから落下させた際に生じる内部の変形や、応力の伝達を確認します。バネの初期状態は、ストッパーをすり抜けています。

(図1)解析モデル

メッシュを(図2)に示します。低次要素を用いており節点数は約5万7千でした。

(図2)メッシュ

解析手法

Ansys Mechanicalの静的構造で初期状態を作成し、LS-DYNAで落下解析を行います。

(図3)解析システム連成

解析モデルと解析条件

ノック式のボールペンを想定し、ペン先とバネは構造用鋼、その他の部品はポリカーボネートで設定しています。
静的構造の解析条件を(図4)、LS-DYNAの解析条件を(図5)に示します。

(図4)静的構造解析条件

(図5)LS-DYNA解析条件

LS-DYNAでは、落下高さを入力すると初期速度を自動計算する機能があるため、1000mmの落下高さを設定し、速度を設定しました。
また、[Dynamic Relaxation](動的緩和)を使用し静的平衡状態を求めることで、初期状態を計算しています。(図6)にLS-DYNAの解析設定を示します。

(図6)LS-DYNA解析設定

解析結果

MechanicalおよびLS-DYNAによる解析で得られた結果として、次の2点を示します。
 ・静的構造解析後の変形・応力分布
 ・落下解析時の変形形状・応力の伝達

静的構造解析の結果を(図7)に示します。
ペン先が出ている状態での自己接触を含む変形形状と、バネに生じる応力を確認することができます。縮めたバネの内側に高い応力が生じています。

図7)左:静的構造全変形量分布、右:静的構造相当応力分布

LS-DYNAの結果を(図8)に示します。ペン先からの落下により、内部の芯がたわみ、バネの応力分布が変化している様子が観察できます。

(図8)左:LS-DYNA相当応力分布

解析によって得られた効果

ボールペンの落下時に生じるたわみと、それにより変化するバネの接触状態と応力の伝達を解析で確認することができました。
初期の応力状態を考慮した落下解析に対してMechanicalとLS-DYNAを連成することで、長い事象時間の解析コストを少なくできる陰解法のメリットと、非線形性の強い問題を計算することができる陽解法のメリットを組み合わせた解析を行うことができました。MechanicalとLS-DYNAの連成は、Workbench上で簡単に設定することができました。

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