コラム
自動車軽量化に繋がるシミュレーション技術の事例4選
自動車業界で進化を続ける軽量化技術。近年、自動車の燃費向上や排出ガス削減に向けた取り組みが強化されています。そのため、軽量化技術への需要が高まっており、シミュレーション技術はその実現に貢献しています。
本記事では、自動車の軽量化が求められる背景とその実現に寄与するシミュレーション技術を紹介します。
今、自動車軽量化が求められる理由
自動車の軽量化は、燃費向上や排出ガス削減など、環境に配慮した重要な取り組みです。これにより技術革新が進み、業界全体に多大な影響を与えています。このセクションでは、自動車軽量化が求められる理由について解説します。
燃費向上と排出ガス削減によるカーボンニュートラルへの貢献

自動車の軽量化は燃費向上と排出ガス削減に直結します。なぜなら、軽量な車はエンジンやモータなどの動力源にかかる負担が少なくなり、エネルギー効率が高まることでガソリンやバッテリーの消費が減少し、結果として排出ガスが抑制されます。
具体例として、アルミニウムやカーボンファイバーのような軽量素材を使用することで、約10%の車両重量を削減すると、燃費が6-8%向上することが認められています。これらの軽量素材は、車両のボディ部品への適用が行われていて、その実現には、シミュレーション技術が貢献しています。
具体的には、コンピュータ上での仮想的な環境下で、異なる素材や構造の強度、剛性、耐久性を評価し、最適な設計を迅速に導き出すことができます。
例えば、鉄でできた部品をアルミニウム合金やカーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)といった軽量素材へ置換し、さらに強度が最大となるように形状を最適化することで、軽量かつ高強度な部品設計を行うことが可能となります。また、車両全体の重量分布や動的挙動のシミュレーションを通じて、バランスの取れた軽量化設計が実現されます。
このように自動車の軽量化は、燃費の向上と二酸化炭素(CO2)排出量の削減が期待でき、カーボンニュートラルに繋がる要素の1つです。そのため、自動車産業では軽量化技術の研究開発とその実現に取り組んでいます。
運動性能の進化によるユーザー体験の向上

車両を軽量化するメリットにユーザー体験の向上があります。軽量化は車両の運動性能を大幅に向上させます。車両の重量が減少することで、加速・減速・旋回といった運動性能が向上し、全体的なドライビング体験を進化させるからです。
具体例として、スポーツカーでは軽量化により車体が軽くなり、エンジンパワーが効率的に利用される結果、瞬時に高加速が可能になります。さらに、ブレーキング性能も向上し、より短い距離で停止することができます。軽量化による運動性能の向上は、車両操縦の楽しさを増す重要な要素です。
電動化と軽量化の相乗効果

電動化と軽量化は、現代の自動車産業において相互に補完し合う重要な要素です。特に電気自動車(EV)においては、その重いバッテリーが走行性能やエネルギー効率に大きな影響を与えます。そのため、車体の軽量化は非常に重要な課題となっています。
電動車両は重いバッテリーを搭載しているため、車体自体を軽量化することでバッテリー消費が改善され、長い距離を走行することが可能になります。また、車両が重たいとタイヤやゴムブッシュなどの衝撃吸収部品の劣化も顕著になりますが、軽量化によりこれが改善されることが期待されます。このように、電動化と軽量化は相互に関連があり、両立することで環境への配慮に大きな影響を及ぼします。
自動車軽量化に繋がるシミュレーション技術

近年では自動車軽量化に対する技術的アプローチとしてシミュレーション技術が注目を集めています。シミュレーション技術を用いることで、素材の選定や構造設計の段階で詳細な解析が可能となり、現物のプロトタイプを製作する前に性能評価が行えます。これにより、試作の回数が減少し、コストと時間の大幅な削減が期待できます。
具体的な解析分野
構造解析
構造解析は、自動車部品の応力、ひずみ、振動などの物理的特性をシミュレートするために使用されます。これにより、軽量化を図りながら強度や耐久性を確保する最適な設計が可能となります。
流体解析
流体解析は、空力特性のシミュレーションに使用されます。車両の形状やデザインを最適化して空気抵抗を減少させることで、軽量化と燃費向上に寄与します。
樹脂流動解析
樹脂流動解析は、複合材料や新しく採用する樹脂材料の成形を最適化し、強度を維持しつつ薄肉化を実現します。また、成形不良を予測し防止することで材料の無駄を減らし、部品の一体成形を促進します。
トポロジー最適化
構造部品の形状や配置を最適化することで、材料の使用量を最小限に抑えながら必要な強度や剛性を維持する技術です。これにより、軽量で効率的な部品設計が実現します。
材料モデリング
新素材(例: 炭素繊維強化プラスチック、アルミニウム合金)の特性を詳細にモデル化し、シミュレーションに組み込むことで、最適な材料選定と設計が可能になります。
積層造形(3Dプリンティング)の製造プロセス解析
積層造形シミュレーションは積層造形の成形プロセス中に発生する反りや残留応力、装置のトラブルを事前に予測して実試作の回数を減らすことで、形状精度が良く不良の少ない成形条件の効率的な検討を可能にします。
軽量化に適した部品の製造方法を検討する際に材料の無駄を抑えることができ、製造コストと時間の削減にも繋がります。トポロジー最適化の解にあわせた金型の製造が困難な場合でも解析できる手法です。
自動車軽量化におけるシミュレーション技術の事例
シミュレーション技術を活用した自動車軽量化の具体的な事例とその効果を4つ紹介します。

積層造形解析とAIを用いて実現する効率的な軽量材料の設計方法
積層造形技術を用いることで、各製品で必要とされる多種多様なニーズに応える軽量材料が設計できるようになります。この資料では従来の製造手法と比べてリードタイムが長くなる積層造形に対し、CAEによる学習データの蓄積とAIを用いることで効率的に設計する方法を紹介します。

トポロジー最適化により、パーツ質量を55%軽量化した方法
フォーミュラSAEの競技大会でレースカーの制作に取り組んでいる学生エンジニアがトポロジー最適化により、ステアリング支持部の質量を55%(450gから220g)、ベルクランクの質量を37%(345gから220g)それぞれ軽量化することに成功しました。彼らがどのように設計し、車両の軽量化を実現させたか。その物語を紹介します。

流量と空気抵抗をシミュレーションで評価しラジエータ全体のサイズと重量を約25%削減
学生フォーミュラ2020のエンジニアリング設計審査で優勝した インド工科大学ボンベイ校の学生チーム。彼らはシミュレーション技術を通じ、最終設計でウイング取り付け構造の40%軽量化、ラジエータ全体のサイズと重量を約25%減少させるだけでなくセルの温度を15%下げることに成功しました。 彼らが活用したシミュレーション技術とプロセスについて紹介します。

代替部品開発の効率化による軽量化へのアプローチ方法
重たい金属製品から樹脂部品へパーツを置き換えることで、自動車の軽量化に繋げることができます。この資料では、複数のシミュレーション技術を組み合わせることで、樹脂代替製品の使用段階における性能評価を事前検証できるソリューションを紹介します。
その他、自動車に関する分野のソリューションについては、こちらよりご覧ください。
自動車軽量化の未来
自動車軽量化は、環境保護と持続可能な交通システムの実現に向けて大きな進展が期待されています。
軽量な新素材の開発と、新素材を適切に使用するために必要なシミュレーション技術の進化により、複雑な形状の部品を効率的に製造できれば軽量化の可能性が広がります。EV車などの電動化が進む中で、バッテリーの軽量化と高効率化も重要な課題となり、エネルギー消費の削減と走行距離の延長が期待されます。
将来的には、現在よりも高度なAI(人工知能)を活用した設計最適化技術の導入により、さらに高性能かつ環境に優しい車両の開発が予想されます。これにより、カーボンニュートラル社会の実現に近づくことが期待されます。
私たちは35年以上の歴史で培った経験と、豊富なシミュレーション技術で課題を解決します
サイバネットでは世界シェアトップクラスのCAE製品をご提供しています。取り扱いベンダーは35社以上、お取引先は 2,100企業、300大学・研究機関の実績があります。国内大手製造業の92%が当社のお客様です。
1985年に事業を開始してから今までの歴史で培った経験をもとにお客様の課題を解決します。



サイバネットが提供するシミュレーション技術

よくある質問
Q.自社でのシミュレーションが難しいのですが、委託できますか?
A.サイバネットにてシミュレーションの業務委託も承っております。詳しくは 「エンジニアリングサービス 」をご覧ください。
Q.課題がありますが、何から手をつけたらよいか分かりません。
A.どのような現象をシミュレーションしたいかを、フォームよりお知らせください。経験豊富なサイバネットのエンジニアが適切なアプローチ方法をご提案させていただきます。
Q.自社と似た事例を詳しく知りたいです。
A.製造業を中心に様々な導入事例がございます。詳しくはお問い合わせください。
Q.費用はどのくらいかかりますか?
A.お客様の希望や目的によって変わってまいります。まずはお客様のお話をお聞かせください。
カーボンニュートラル実現に繋がる取組みを一緒にはじめませんか?
サイバネットが提供するシミュレーション技術で、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みのお手伝いをさせてください。製造業・研究機関を中心にサポートをしておりますが、その他の業種についてもご相談を承っております。
「自社に適したアプローチ方法は何か」「より具体的な事例が聞きたい」「どのくらいの費用がかかるのか知りたい」など、疑問に思うことがありましたら フォームよりお問い合わせください。担当者よりご連絡しヒアリングをさせていただきます。