事例紹介
リターンパス不連続(GVプレーンまたぎ)改善によるEMI低減
解析分野 : 電磁界解析 業界:自動車・エレクトロニクス
解析概要
DEMITASNXにより抽出されたリターンパス不連続(GVプレーンまたぎ)箇所を対象に、Ansys SIwaveを用いて電磁界解析を実施しました。対象ネットの配線層構成を変更し、改善前後の特性を比較することで、リターンパス不連続がEMIに与える影響を検証しています。
- Sパラメータ解析による線路特性の比較
- 近傍電磁界分布の評価
- 遠方電磁界の比較

こんな方におすすめ
- 高速信号を扱う多層基板設計において、EMI対策に課題を感じている方
- 配線層の切り替えやリターンパスの影響を定量的に評価したい方
- EMI対策の属人化を解消し、設計品質を安定させたい方
背景/課題
プリント基板設計におけるEMI対策では、信号のリターンパスが適切に確保されているかが重要な要素となります。特に高速信号では、リターン電流は信号配線の近傍を流れる特性を持つため、配線層の切り替えやプレーン構成の不整合によってリターンパスが分断されると、電流経路が分散し、不要な放射ノイズの原因となります。
しかし、こうした問題は基板全体の構造や配線状態に依存するため、設計段階で直感的に把握することが困難です。また、電磁界シミュレーションは有効である一方、解析対象の選定やモデル作成に時間と専門知識を要するため、すべての候補箇所を網羅的に評価することは現実的ではありません。その結果、潜在的なEMIリスクを十分に把握できないまま設計が進み、試作・評価段階で問題が顕在化し、手戻りや開発期間の長期化につながるという課題があります。
解析の仕様
解析モデル

サンプル基板データ
サンプル基板データを使用してEMIチェックを実行します。そして、EMIチェックの結果より、代表的な項目、ネットを選び、シミュレーションを実行して、その信憑性を確認します。
EMIチェックを実行した結果です。

サンプル基板データに対してEMIチェックを実行し、その結果から代表的なエラーを抽出します。本事例では、リターンパス不連続(GVプレーンまたぎ)として検出されたネット「D31」を対象に解析を行いました。

解析対象ネットはネット、D31、は、左の図となります。左側のふたつのLSIと、右側の四つのメモリアイシーに接続されています。左側のふたつのLSIから、L3層を通り、中央のIC付近で、ボトム層である6層に切り替わっています。
対象ネットは複数のLSIおよびメモリIC間を接続しており、途中で配線層が切り替わる構成となっています。特に、L3層からL6層への切り替えによりリターンパスが不連続となる点がEMIチェックで問題として指摘されました。
本解析では、この層切り替えを見直し、L6層を使用していた配線をL3層へ変更することで、リターンパスの連続性を確保した場合の影響を評価しました。
Ansys SIwaveによるSパラメータ解析(U8-U2)
Ansys SIwaveによるSパラメータ解析によって、線路の特性を見ます。部品U8からU2のSパラメータを比較したものです。配線変更前後で線路特性に大きな差は見られず、伝送特性への影響は限定的であることが確認されました。

Sパラメータ解析結果
解析結果
解析結果
近傍電界の解析結果を確認します。

近傍電界のコンター図
近傍電界のコンター図では、改善後の方が電界分布が低減していることが確認されました。特に、ビアによる層切り替え部分において顕著な差が見られ、リターンパス不連続がノイズ発生に大きく影響していることが分かります。改善した部分の先の配線(右上)でも電界分布の低下が確認できます。電界強度のグラフにおいても、改善前後の差が明確に確認されました。

近傍電磁界 電界強度

遠方電界においても、改善後は全体的にノイズレベルが低減していることが確認されました。特に特定周波数帯において、約10〜17 dBμVの低減効果が確認されました。
本解析の効果
今回、DEMITASNXによるEMIルールチェックで基板全体のリターンパス不連続箇所を抽出し、その中から影響が懸念される配線をAnsys SIwaveで解析することで、問題箇所の電磁的な影響を定量的に評価できるようになりました。
本事例では、配線層構成の見直しによりリターンパスの連続性を確保した結果、近傍電磁界および遠方放射の双方でノイズ低減効果を確認し、最大で約10〜17dBの改善が得られました。これにより、ルールチェック結果の妥当性を裏付けるとともに、効果的な設計改善の判断が可能となり、効率的なEMI対策検討に寄与します。
