〜構造体と流体の相互作用を考慮した解析事例〜静止流体要素

静止流体要素とは

Release13.0より、静止流体要素 HSFLD241/242 が新機能として追加されました。静止流体要素とは、容器に囲まれた流体領域をモデル化するために使用されます。
例えば、液晶パネルのように、流体が封止されている構造物で、外力による変形を求める場合、封止されている流体の圧力変化による影響は無視することができません。また、タイヤのような気体が封止されている構造物も同様です。

静止流体要素は上記のような流体と構造の相互作用を考慮すべき問題に対して効果を発揮する要素です。
従来のバージョンでは、流体と構造の相互作用を考慮する場合、流体解析ツール、構造解析ツールを使用したFSI解析を行う必要がありましたが、静止流体要素を使用する場合、ANSYSの構造解析ツールのみで、流体と構造の相互作用を考慮した解析を行うことが可能となります。

静止流体要素の機能

静止流体要素を使用するためには、いくつかの制限事項について理解しておく必要があります。

  • 流体体積は完全に固体で囲まれ、自由表面はない。
  • 流体は一様の圧力、温度、密度とする。
  • 流体の圧力は一定と仮定されるため、スロッシングのような慣性効果は考慮できない。
  • 流体の粘性は考慮できない。

上記の制限事項を満たす流体と構造の相互作用問題において、静止流体要素は非常に有効です。
静止流体要素は構造要素と節点共有して作成します。構造体に変形が生じると、変形に応じて静止流体要素の体積が変化します。この、流体体積の変化によって発生する圧力変化を面荷重として構造要素にフィードバックし、流体と構造の相互作用を考慮します。

静止流体要素の定義方法、流体材料、境界条件

それでは、静止流体要素の作成方法、材料定義、境界条件についてご紹介します。この作業はANSYS Mechanical APDLで行います。

1) 静止流体要素の定義方法

  1. ソリッド要素またはシェル要素を使用して、構造体のモデルを構築します。
  2. ソリッド要素またはシェル要素、流体に接する節点を選択します。
  3. 流体域をコントロールするための、圧力節点を定義します。
  4. ESURFコマンドで圧力節点番号を指定し、静止流体要素を作成します。

圧力節点は流体領域内であればどの位置に作成しても構いませんが、対称モデルで静止流体要素を使用する場合には、圧力節点は必ず対称面上に作成する必要があります。

2) 静止流体要素の材料特性

流体領域が流体である場合と、気体である場合では材料定義の方法が異なります。
まず、圧縮性流体の場合、TB,FLUIDコマンドのLIQUIDオプションを使用して、TBDATAコマンドにより体積弾性率を設定します。また、必要に応じて線膨張係数や初期密度も設定します。非圧縮性流体とする場合、静止流体要素のキーオプション(6)を1にセットします。

次に、圧縮性気体の場合、TBFLUIDコマンドのGASオプションを使用して、TBDATAコマンドにより、初期密度を定義するとともに、リアルコンスタント PREFを使用して参照圧力を定義します。さらに、TREFまたはMP,REFTコマンドで参照温度を定義する必要があります。

さらに、圧力−体積曲線を使用した圧縮性流体の定義も可能です。TB,FLUIDコマンドのPVDATAオプションを使用し、TBPTコマンドを使用して曲線のデータポイントを入力します。

3) 静止流体要素の境界条件

静止流体要素に対する境界条件の設定は圧力節点に対して行います。定義可能な境界条件は質量流量や静水圧、変位拘束となります。
質量流量や静水圧といった条件は、例えば、タイヤの空気圧の変化した際の変形や、容器体積と封止した流体体積が異なる場合の変形などを求める際に使用されます。
圧力節点に対する質量流量はFコマンドのDVOLラベルで定義され、静水圧はDコマンドのHDSPラベルで定義されます。
変位拘束は対称モデルで静止流体要素を使用する際に定義します。対称モデルの場合は、圧力節点の変位自由度に対して対称境界条件を設定する必要があります。
流体は自由表面のない密閉されている状態を仮定しているため、圧力節点に質量流量や静水圧といった境界条件を設定しない場合は、流体の流出・流入が発生しないということになります。

なお、Workbench Mechanicalには静止流体要素を作成するメニューはありませんが、静止流体要素の定義に関する操作をコマンドオブジェクトで行うことで、Workbench Mechanicalでも利用することは可能です。

解析事例

1) 流体域を考慮した、液晶タッチパネルの構造解析

ガラスパネルをタッチした際に発生する変形に対して、封止された液晶の非圧縮性による流体と構造体の相互作用を考慮することは重要です。
下記の事例はガラスパネル間の流体領域に静止流体要素を使用したケース、使用しなかったケースの解析結果です。両者は同じ境界条件での解析ですが、静止流体要素を使用したケースにおいては、流体の圧力により、同じタッチ量であっても、ガラスパネルの発生応力は静止流体要素を使用した方が大きく、タッチに必要な力もより大きな力が必要な事が把握できます。

2) 空気圧を考慮したタイヤの構造解析

下記の事例はタイヤの1/4対称モデルに静止流体要素(HSFLD242)を使用した解析です。
第一荷重ステップで圧力節点に質量流量を定義し、タイヤ内に空気を注入します。第二荷重ステップでは剛体面を強制変位させ、タイヤを圧縮します。

グラフは流体領域の圧力と体積の時系列変化を示します。質量流量が増加することで、流体の圧力・体積が増加し、第二荷重ステップでタイヤを圧縮することにより、圧力は増加しますが、体積が減少している様子が確認できます。タイヤには流体領域の圧力変化に応じた面荷重が負荷され、タイヤ内の空気を考慮した解析が表現出来ています。

おわりに

静止流体要素の使用法については、ヘルプの下記項目にも記載されておりますので、併せてご確認いただけますようお願いいたします。

ANSYS 13.0 ヘルプ
 >Mechanical APDL
  >Mechanical APDL 構造解析ガイド
   >第19章 静止流体のモデル化

(CAEのあるものづくり2011年15号掲載)

関連解析事例

液晶タッチパネルの応力解析

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