剥離解析について

はじめに

剥離とは、初期形状において接着・結合していたモデルが、抵抗を生じながら分離する挙動を指します。表1は、ANSYS Classic環境における、接触タイプの種類とそれぞれにおける挙動を区分したものです。これまでの接触解析において接触境界面の挙動は、摩擦を除いて完全抵抗か無抵抗の両極しか選択することができませんでした。
今回紹介する剥離機能を用いることで、表の赤枠部のように、接線方向・分離方向双方に条件的な抵抗を表現することが可能です。具体的には、異種材料境界において生じる層間剥離、接着剤接合部の粘着性分離、基板はんだの分離など境界面の亀裂進展のモデル化に有効です。ここでは、剥離機能の概要と定義方法についてご紹介します。

表1 接触タイプの種類と挙動区分

  接線方向(滑り) 法線方向(分離)
  無抵抗 条件抵抗 完全抵抗 無抵抗 条件抵抗 完全抵抗
標準(摩擦なし)        
標準(摩擦あり)        
滑りなし        
分離なし        
固着        
分離なし(剥離)        
固着(剥離)        

材料モデル概要

剥離機能に関しては、v11.0より既存の接触要素に材料モデル(材料特性)の追加を行う方法が新機能として追加されました。剥離の材料モデルでは、分離距離(CBDD)で指定する方法と臨界破壊エネルギー(CBDE)で指定する方法の2種類があります。これらを用いて、接触境界面で生じる表面力(PRES)分離距離(GAP)の関係を定義します。
図1は、横軸を接触境界面で生じるギャップ(GAP)、縦軸を接触応力(PRES)とした場合の剥離挙動になります。接触アルゴリズムが拡大ラグランジェ法又はペナルティ法の場合、接触剛性FKNの値に応じて、

F = K ・ D ( F:接触応力、K:接触剛性、D:ギャップ/食込み量)

の式から、距離と接触応力の関係が求まります。図では最初の傾きがそれにあたります。通常はこの傾きを維持することになりますが、剥離を定義することで、接触応力の最大値(σmax)を指定でき、以降は接触応力が低下する(境界面に生じる力が低下し分離しやすくなる)挙動を表現します。つまりここから剥離が始まることになります。剥離後は完全に接触応力が零になる(境界面に生じる力がなくなり、完全な分離状態になる)分離距離までの傾きを辿る挙動をとります。この傾きは、CBDDであれば剥離終了時の完全分離距離を、CBDEであればグラフが描く三角形の面積(臨界破壊エネルギー)の指定で表現します。


図1 剥離材料モデルの挙動(接触応力 vs ギャップ)

解析設定手順と条件

基本的な操作の流れは以下の通りです。

  1. 剥離面を節点共有しない状態にてモデルを作成 (GUI対応)
  2. 接触要素の定義 (GUI対応)
  3. 粘着領域材料モデル TB,CZMの定義 (GUI非対応)
  4. 接触要素を生成(コンタクト面、ターゲット面)( GUI対応)
    TBコマンドで剥離材料モデルを設定した材料番号をアクティブにすること

手順“3”において材料を定義する以外は一般的な接触要素の設定手順と同じでGUI操作による作成を行って頂いても結構です。手順“3”の入力コマンドは以下に記載します。

分離距離(CBDD)

入力コマンド
TB,CZM,材料番号,1,1,CBDD
TBDATA,1,c1,c2,c3,c4

c1 −σmax 法線方向の接触応力の最大値
c2 −Ucn 剥離終了時の接触ギャップ
c3 −τmax 接線方向の接触応力と等価の最大値
c4 −Uct 剥離終了時の接線方向の滑り

分離距離(CBDE)

入力コマンド
TB,CZM,材料番号,1,1,CBDE
TBDATA,1,c1,c2,c3,c4

c1 − σmax 法線方向の接触応力の最大値
c2 − Gcn 法線分離のための臨界破壊エネルギー
c3 −τmax 接線方向の接触応力と等価の最大値
c4 − Gct 接線滑りのための臨界破壊エネルギー

剥離解析例

図2は、BGAパッケージモデルにおける剥離解析の相当応力コンター図です。解析初期では剥離は生じておらず、応力が生じています。解析が進むにつれ応力が減少している様子がわかります。これは接触応力の最大値を超える応力が生じ、剥離が生じていることになります。
最終状態では、完全に剥離し応力が生じていません。このように、接触境界面に生じる接触応力によって、剥離の表現が可能となります。


図2  BGAパッケージモデルの剥離解析(ANSYS / PLANE182)

 


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