レンズ設計の職人技を「民主化」、CAEで不可能を可能にした実践事例
協和光学工業株式会社 様
属人化していた光学設計の暗黙知を、Ansys Zemax OpticStudioによって組織の資産に変換。部門間の手戻りと見積もりの不透明さという長年の課題を解消し、これまで「不可能」と判断していた案件にも対応できるようになった協和光学工業株式会社様の取り組みをご紹介します。

(左から)澤田様、石井様
今回お話をお伺いした方
協和光学工業株式会社
代表取締役社長 石井 則行 様
技術部 光学設計 澤田 真 様
背景と課題光学レンズ一筋80年余り、職人技が支えた特注レンズ事業
協和光学工業株式会社様は1940年の創業以来、光学レンズの設計・製造を手がけてきました。顕微鏡事業で培った技術を土台に、現在は半導体製造装置向けの特注光学レンズを主力事業としています。半導体チップの製造工程を光学的に検査する「マシンビジョン」の設計・製造も担い、日本の半導体産業の成長とともに事業を拡大してきました。
特注レンズの設計は、お客さまの要望と装置の物理的な制約をすり合わせながら仕様を作り込んでいく、いわば「バランスの職人芸」です。しかし完全受注生産であるがゆえに、設計ノウハウは熟練者の勘と経験に基づく暗黙知として蓄積され、共有や継承が難しいという課題を抱えていました。
光学設計と機構設計・製造との間では、毎週2〜3回の会議を数週間にわたって続けることも珍しくなく、検討がすべて白紙に戻るケースもありました。開発コストの見通しも立てにくく、余裕を持たせた見積もりを提示した結果、案件を逃してしまうこともあったといいます。
選定理由独学のエンジニアが切り拓いた、CAE本格活用への転換
2021年に未経験で入社した技術部の澤田真様は、当初は先輩の背中から学ぶ日々を過ごしていました。当時の設計ノウハウは紙の資料や過去の実績として蓄積されていたものの、詳細な設計思想や検討の経緯は現場の暗黙知として受け継がれている部分も少なくありませんでした。
澤田様はそれまで補助的に使っていたAnsys Zemax OpticStudioの本格活用に踏み切ります。操作マニュアルや初心者向けの書籍で知識を補いながら、目の前の案件でシミュレーションを繰り返す実践を重ね、体系的な光学知識を独学で習得していきました。
工夫や効果打ち合わせは十数回から1〜2往復へ、見積もり精度と営業力も向上
Ansys Zemax OpticStudioの活用により、設計段階からレンズの構成や寸法感をデータで次工程に共有できるようになりました。その結果、機構設計や製造部門からの指摘で光学設計を見直す機会がほとんどなくなり、従来十数回にのぼっていた打ち合わせが1〜2往復まで減少しています。
開発コストの見通しが立てやすくなったことで営業提案力も強化され、これまで受注が難しかった案件にも複数パターンの提案が可能になりました。20枚を超えるレンズ構成が必要となる高精度な相談に対しても、性能とコストの異なる選択肢を提示し、お客さまが納得する形での受注につなげた事例も生まれています。
今後の展望「共通言語」を武器に、新たな設計領域と事業拡大へ
協和光学工業様の製品が組み込まれる装置はライフサイクルが長く、納入後15年ほど現場で稼働し続けます。設計段階の判断が長期にわたって製品精度に影響するため、データに基づく提案力はお客さまとの信頼関係構築にも直結しています。
澤田様は今後、結像系に加えて照明系を対象とした「ノンシーケンシャルモード」の習得を進め、扱える設計領域を広げていく方針です。石井様は、これまで築いてきた信頼を土台に、半導体製造装置の他部分や半導体以外の領域への事業展開も視野に入れていると語ります。
80年続いたレンズ設計の世界を、
独学のエンジニアが変えたられた理由とは?
独学のエンジニアが変えたられた理由とは?
フルインタビューでは、澤田様が語る複数パターン提案の具体的な進め方や、予算超過の案件を受注に変えた交渉の全容、そして石井様が描く半導体分野以外への事業展開の構想まで、詳しくご覧いただけます。
2026年取材
※記載の会社名、製品名は、各社の商標または登録商標です。
※自治体・企業・人物名は、取材制作時点のものです。