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ドローンとフェイスシールドの衝突解析
次世代モビリティ 基盤技術開発における安全性/信頼性の確認 | モデル提供元:長岡技術科学大学 高橋 憲吾 先生

こんな方におすすめ
NEDO ReAMo(次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト)において、ドローン安全性の検証を進められている企業様、研究者様
解析概要
近年、経産省や国交省主導によりドローンを物流、交通の次世代移動手段とするべく研究開発が進んでおり、特に市街地での運行における安全性の確保、法整備が急務として進められております。
本件は高速回転するドローンのプロペラが実験者のフェイスシールドに衝突した際の影響、破損挙動をシミュレーションを用いて予測する目的となります。破損挙動の解析は非線形性が強く、陰解法では収束が困難であるため、陽解法ソルバーであるAnsys LS-DYNA(以下LS-DYNA)を用いて衝突解析を実施いたしました。
背景/課題
ドローンプロペラから操縦者を保護するためにフェイスシールドを用いますが、ドローンプロペラの衝撃力により破損しない強度、靭性を持っていることが求められます。
また、ドローンプロペラとフェイスシールドの衝突挙動は非線形性が強く、陰解法では収束が困難となります。そこで、陽解法ソルバーである Ansys LS-DYNA による衝突解析を実施し、ドローンプロペラ衝突時のフェイスシールド変形挙動を可視化することで衝撃力に対する強度を有しているか確認いたします。
解析目的および解析手法
解析対象
(図1)のドローンプロペラが高速回転 (8,000[rpm]) している状態で 2[m/s] の速度で射出され、フェイスシールドに衝突した際の挙動を解析するために実施いたします。

(図1)解析モデル
解析手法
Ansys LS-DYNAによる3 次元動的構造解析を行います。
実験では、ドローンプロペラやバッテリーは装置によって射出されますが、解析時間短縮のため、ドローンプロペラはフェイスシールドに衝突する直前に作成され、解析条件として、2.0[m/s] の並進速度とドローンプロペラに 8000[rpm] の回転速度を初期状態として設定し、解析実行直後には設定した初期速度で運動するように設定しています。
衝突直前から、0.02[sec] までの動的挙動を解析で求めます。
解析条件
メッシュを(図2)に示します。

(図2)メッシュ
解析の仕様
解析モデル
フェイスシールドは薄板のため、シェル要素を使用してモデル化しました。
ドローンプロペラは弾性体としてモデル作成していますが、プロペラ下部のモーターとバッテリーは剛体としてモデル化しています。
材料物性
材料特性は Ansys Workbench に搭載されているサンプルデータから下記の物性値を使用
カーボンファイバー ポリカーボネート
弾塑性用応力ひずみ曲線 なし あり
解析条件
・フェイスシールド中心とプロペラ軸の角度は30°
・接触条件
フェイスガードとプロペラ間は Sliding Energy が取得できる接触を設定
・拘束条件
フェイスガードはフレーム取り付部を完全拘束
・荷重条件
プロペラの回転速度は 8,000[rpm]
プロペラ、モーター/バッテリーは初期速度 2.0[m/s] で運動
・パーツの剛性挙動
・モーター/バッテリーは剛体ボディとする
解析結果
ドローンプロペラとフェイスシールドの衝突状態を図3に示します。
フェイスシールドに生じた塑性ひずみ分布 (time=0.02[sec] 時点) を 図4に示します。
フェイスシールドに高速回転するドローンプロペラが繰り返し衝突することで大きな塑性ひずみが発生していることが解ります。

(図3)ドローンプロペラとフェイスシールドの衝突

(図4)フェイスシールドに生じた塑性ひずみ分布 (time=0.02[sec] 時点)
解析結果の評価
ドローンプロペラが衝突した際のフェイスシールドの変形挙動や塑性ひずみの発生状態を得ることが出来ました。また、ソルバーのエネルギー収支結果より、接触時の摩擦エネルギー などを取得することができます 。
本解析の効果
解析的には非常に困難な短時間の接触衝突問題を Ansys LS-DYNA による陽解法動解析を実施することで安定して解を得ることができました。今後、ポリカーボネートに設定する材料物性値をアップデートすることで、プロペラの衝突によりフェイスシールドの破損状況、破損後の挙動を確認することも可能です。
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