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VSG 制御(Virtual Synchronous Generator)

VSG制御とは?仮想同期発電機の基本

VSG制御(Virtual Synchronous Generator)とは、インバータに仮想的な同期発電機の特性を持たせ、電力系統の安定性を高めるための制御方式です。従来の大規模発電所では同期発電機の慣性が系統安定に寄与していましたが、再生可能エネルギー由来のインバータ電源は物理的な慣性を持たないため、周波数変動や電圧安定性の低下が課題となっています。そこでVSG制御を導入することで、インバータがあたかも同期発電機のように振る舞い、同期機のような電圧制御と無効電力の動的応答を実現できます。これにより、再生可能エネルギーが高比率で導入される電力系統でも、電力品質と安定性を確保することが可能になります。

VSG制御のメリットと応用分野

VSG制御を導入する最大のメリットは、系統の周波数安定化と電圧サポートです。インバータ電源が仮想的な慣性を模擬することで、急な負荷変動時にも周波数変動を抑えることが可能です。また、同期発電機と同様に無効電力を供給できるため、電圧維持にも効果があります。

応用分野としては、太陽光発電や風力発電のような再生可能エネルギーシステム、マイクログリッド、独立電源システムなどが挙げられます。特に、VSG制御は「グリッドフォーミング制御」の一種として位置付けられ、従来の「グリッドフォロワー型インバータ」に比べて、電力系統の安定性に積極的に貢献できる点が特徴です。さらに、制御モデルを用いたMBD開発を活用することで、VSGアルゴリズムを仮想環境で事前検証でき、設計効率の向上やリスク低減に役立ちます。

VSG 制御導入のポイントと今後の展望

VSG制御を効果的に導入するには、いくつかのポイントがあります。第一に、制御パラメータの最適化です。慣性定数や制御ゲインの設定は系統の安定性に大きく影響するため、シミュレーションを通じた最適化が必要です。第二に、システム全体での協調制御が重要です。複数のVSGインバータが並列運転する場合、インバータ間の協調だけでなく、周辺の系統との動的な整合性も考慮する必要があります。これにより、系統全体の安定性を確保されます。そのため、モデルベースでの検証環境構築が欠かせません。

現在は、AIや最適化アルゴリズムを組み合わせて動的に制御パラメータを調整するより高度なVSG制御や、系統全体を見据えた分散協調制御の研究が進んでいます。再生可能エネルギー比率が高まる中で、VSG制御は次世代の系統安定化技術としてますます重要性を増すと考えられます。

VSG制御は、再生可能エネルギー普及に伴う系統安定性の課題を解決するカギとなる技術です。インバータを同期発電機のように振る舞わせることで、周波数や電圧の安定化に寄与し、マイクログリッドやスマートグリッドの実現を支えます。MBDによる事前検証やパラメータ最適化を組み合わせれば、開発効率を高めつつ高品質な電力システムを構築することが可能です。

事例/活用例

電動化ソリューション紹介 -太陽光発電編-

太陽光発電を活用した製品開発やシステム設計にあたって、モデル構築・シミュレーションを通じた検証支援の枠組みを紹介しています。太陽光パネル・変換器・系統連携・制御(MPPT/VSGなど)を含む複雑な構成要素を統合モデル化し、開発段階での課題を事前に把握・対処できるようにする内容です。近年注目されるペロブスカイト太陽電池のような次世代技術も、こうしたモデルベースの設計検証を通じて効率的に評価・最適化が可能となります。

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