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インバータ(Inverter)

インバータ(Inverter)とは~直流から交流へ、エネルギーを自在に操る変換技術~

インバータ(Inverter)とは、直流電力(DC)を交流電力(AC)に変換する電力変換装置です。
その名称は、交流→直流の「順変換(整流)」に対して、直流→交流の「逆変換」を行うことから、「invert(反転)」という語が使われています。
モータ駆動、再生可能エネルギー、電動車など、電力変換が求められる多くの分野で使用される重要な基幹技術です。

近年では、パワーエレクトロニクス技術の進展により、高効率化・高信頼性化・小型化が進んでいます。
設計段階からシステム全体の動作をモデル化し、回路特性や制御アルゴリズムを仮想環境で検証できるMBD(モデルベース開発)の活用が一般化しています。
これにより、実機試作前に動作確認や最適化が可能となり、開発期間の短縮や品質向上に大きく貢献しています。

インバータの基本原理

インバータの基本的な動作は、パワーデバイス(MOSFETやIGBTなど)を高速にON/OFF制御することで、直流電圧の極性を周期的に反転させ、出力端に交流波形(矩形波)を生成することです。

動作の仕組み(例:単相インバータ)

  1. 直流電源の供給
     バッテリーや整流回路などから直流電圧を入力します。
  2. パワーデバイスによるスイッチング制御
     MOSFETやIGBTなどの半導体素子をPWM(パルス幅変調)などの制御手法を用いて高速でON/OFFすることで、出力電圧の極性を周期的に反転させ、矩形波を生成します。
  3. フィルタ回路による波形整形
     LCフィルタなどを通すことで、矩形波の高周波成分を除去し、滑らかな交流波形に整形します。


 
主な用途

  • モータ駆動:EVや産業機器でのトルク・速度制御
  • 家電製品:エアコンや洗濯機の省エネ運転
  • 再生可能エネルギー:太陽光・風力発電の系統連系
  • UPS(無停電電源装置):停電時の電力供給
  • 輸送・産業分野:鉄道や大型機械の可変速制御

MBD(モデルベース開発)とインバータ

MBDでは、インバータシステムを以下の2つのモデルから構成し、統合的にシミュレーションを行います。

  • 物理モデル(プラントモデル):スイッチング素子、負荷、寄生要素、モータの電磁・機械特性など
  • 制御モデル:PWM制御、電流制御、保護ロジックなど

この構成により、スイッチング損失や導通損失を含む電力変換効率、スイッチング素子の温度上昇、モータのトルクリップルといった設計上の重要指標を、試作前に定量的に評価することが可能です。
さらに、制御モデルと物理モデルを連携させることで、制御アルゴリズムの変更が物理挙動に与える影響を即座に確認でき、設計の最適化が可能になります。これにより、実機試験の回数を削減し、開発コスト・リスクを大幅に削減できます。

インバータは、制御アルゴリズムと電力変換回路の両方を統合した複合システムであり、MBDではこれらを連携させた統合シミュレーションにより、設計初期から高精度な評価が可能です。
シミュレーションにより、実機では測定や再現に手間や制約が伴うスイッチング波形や電流応答を、短時間かつ高精度に可視化・解析でき、効率・応答性・信頼性の最適化が設計初期から可能です。結果として、開発期間の短縮と高信頼性設計の両立が実現可能となります。

MBDによるインバータ開発は、次世代モビリティやスマートファクトリ分野において、「電力制御のデジタルツイン」として重要な位置づけを占めており、システム全体の性能向上と開発効率化に大きく貢献します。

事例/活用例

電動化ソリューション紹介 -太陽光発電編-

太陽光発電を活用した製品開発やシステム設計にあたって、モデル構築・シミュレーションを通じた検証支援の枠組みを紹介しています。太陽光パネル・変換器・系統連携・制御(MPPT/VSGなど)を含む複雑な構成要素を統合モデル化し、開発段階での課題を事前に把握・対処できるようにする内容です。近年注目されるペロブスカイト太陽電池のような次世代技術も、こうしたモデルベースの設計検証を通じて効率的に評価・最適化が可能となります。

電動化ソリューションのご紹介 パワーエレクトロニクス編

Ansys Twin Builderなどを活用したマルチフィジックス解析により、パワーデバイスの発熱や特性変動を考慮したモデル構築を可能にします。電動化開発における課題解決の具体的なアプローチを紹介しており、CAE活用のヒントが得られる内容です。

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