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コンバータ(Converter)

コンバータ(Converter)とは ~電圧を自在に操るエネルギー変換の要~

コンバータ(Converter)とは、電力の種類(直流/交流)や電圧・周波数を変換する電力変換装置の総称です。入力と出力の電力の種類に応じて、以下のように分類されます。

DC-DCコンバータ:直流(DC)→ 直流(DC)
AC-DCコンバータ(整流器):交流(AC)→ 直流(DC)
DC-ACコンバータ(インバータ):直流(DC)→ 交流(AC)
AC-ACコンバータ(マトリックスコンバータ):交流(AC)→ 交流(AC)

今回はこの中でも特に、DC-DCコンバータに焦点を当てて解説します。
DC-DCコンバータとは、直流電力の電圧を上げたり下げたりするための装置です。
例えば、電圧を下げる「降圧コンバータ(Buck Converter)」や、電圧を上げる「昇圧コンバータ(Boost Converter)」などが代表的です。

インバータが「DCをACへ変換」するのに対し、DC-DCコンバータはDC同士の電圧変換を担います。
このため、バッテリー制御や電源装置、EV、産業機器など、あらゆる電力システムの“前段”で重要な役割を果たします。
近年では、高効率・高密度・デジタル制御化が進み、MBD(モデルベース開発)を用いたシミュレーション設計が主流になっています。

DC-DCコンバータの基本原理

DC-DCコンバータは、パワーデバイス(MOSFETなど)を高速にON/OFF制御することで、入力された直流電圧の平均値を変化させ、目的の電圧レベルに変換します。

動作の仕組み(例:降圧DC-DCコンバータ)

  1. 直流電源の供給
     バッテリーや整流回路などから直流電圧を入力します。
  2. パワーデバイスによるスイッチング制御
     MOSFETなどの半導体素子をPWM(パルス幅変調)制御で高速にON/OFFすることで、インダクタに電流を断続的に流し、出力電圧の平均値を調整します。このスイッチング動作により、電圧を下げる(降圧)ことが可能になります。
  3. フィルタ回路による電圧の平滑化
     インダクタとコンデンサからなるLCフィルタを通すことで、スイッチングによって発生するリップル成分を除去し、安定した直流電圧を出力します。

主な用途

  • 自動車(EV):バッテリー電圧(高電圧DC)をモータ制御や車載電子機器の低電圧DCに変換
  • 家電・OA機器:DC電源の安定化・ノイズ抑制
  • 再生可能エネルギー:太陽光パネルのDC電圧を蓄電池やインバータに適した電圧へ変換
  • 産業機械:サーボドライバ・PLC内の安定電源供給
  • 通信装置:基地局やネットワーク機器に対して、安定した低ノイズDC電源を供給

MBD(モデルベース開発)とインバータ

MBDを活用したコンバータ開発では、制御モデルとプラントモデルを明確に分けて構築し、制御アルゴリズムと電力変換特性を統合的に評価します。

  • 物理モデル(プラントモデル):スイッチング損失、インダクタ電流、コンデンサ電圧、熱特性などの電気特性
  • 制御モデル:PWM制御、電圧制御、保護ロジックなどのアルゴリズム設計

これにより、試作段階に入る前から「効率」「過渡応答」「ノイズ」「温度上昇」といった主要な性能指標を仮想環境で総合的に最適化できます。さらに、制御モデルと物理モデルを連携させることで、制御アルゴリズムの変更が物理挙動に与える影響を即座に確認でき、設計の最適化が可能になります。これにより、実機試験の回数を削減し、開発コスト・リスクを大幅に削減できます。

コンバータは、電力制御システムの心臓部ともいえる存在です。MBDを活用することで、電力変換特性と制御アルゴリズムを同時に最適化し、高効率・高信頼性・迅速な開発を実現できます。

特に次世代モビリティ(EV・HEVなど)や再生可能エネルギー分野では、コンバータの性能がシステム全体のエネルギー効率や安定性を左右するため、設計段階での精度が極めて重要です。

さらに、近年注目されている「デジタルツイン型の電源設計」として、試作に頼らず設計の妥当性を検証できるため、今後の電力変換技術における標準的な開発手法として、MBDの活用はますます広がっていくでしょう

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電動化ソリューションのご紹介 パワーエレクトロニクス編

Ansys Twin Builderなどを活用したマルチフィジックス解析により、パワーデバイスの発熱や特性変動を考慮したモデル構築を可能にします。電動化開発における課題解決の具体的なアプローチを紹介しており、CAE活用のヒントが得られる内容です。

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