Speos形式→Zemax形式変換サービスのご紹介
Speos形式のファイルをZemaxで扱うには?各形式の違いと変換時の考慮ポイントをまとめて解説
概要
当社では散乱特性(BSDF/BRDF/BTDF)測定サービスをご提供しています。実測結果は、まずAnsys Speos(以下、Speos)形式で取得・整備されます。設計の事情によりAnsys Zemax OpticStudio(以下Zemax)形式での活用が必要な場合、単純な座標変換や単位変換だけでは精度低下やプロットの疎密が発生します。
本記事では、両形式の違いと変換時の落とし穴、そして当社が提供するSpeos→Zemax変換サービスをご紹介します。
なぜ形式変換が難しいのか
測定した散乱特性をCAEで活用する現場では、ベンダーや案件ごとにファイル形式の違いという壁が立ちはだかります。特にSpeosとZemaxでは角度の定義、つまり座標系が異なっているため、その差を無視してデータを移すと迷光やグレアの評価、さらには配光や透過の定量結果がずれてしまい、設計判断に深刻な影響を及ぼす可能性があります。したがって、形式の違いを十分に理解したうえで、角度マッピング、正規化、補間、そして検証といった一連の工程を組み込んだ変換設計を行うことが不可欠です。
以下に、Zemax形式とSpeos形式の違いを示します。
表1:Zemax形式とSpeos形式の主な違い(実務視点)
観点 | Speos | Zemax | 実務上の影響 |
角度・座標系 | 球座標系 | 円錐座標系 | 変換によるサンプリングの疎密の発生 |
単位・正規化 | BRDF/BTDF/BSDFのsr⁻¹等で管理、積分整合を重視 | 形式によりスカラー/規格化の扱いに差 | 光束の値を崩さない変換設計が必要 |
サンプリング | 不等間隔も可 | 等間隔のみ |

図1: Speos形式の角度定義

図2: Zemax形式の角度定義
このように、SpeosとZemaxは角度の定義方法が異なるため、単純に座標変換を行うだけではデータの分布が均一にならず、抜けや偏りが生じてしまいます。
たとえば、Speosの球座標で「仰角15度ごと・方位角30度ごと」に等間隔で並んだプロットをZemaxの円錐座標に変換すると、一部では点が密集し、逆に一部では点がまったく存在しないエリアが生まれます。つまり、座標系を変換しただけでは散乱データが正しく再現されず、そのまま使うと評価や設計判断に誤差が入り込んでしまうのです。

図3.入射角45°のときのプロット
当社のSpeos形式→Zemax形式変換サービス
このような背景から、当社ではSpeos形式で測定された散乱データをZemax形式へ正しく変換するための専用サービスをご提供しています。単純な座標変換では失われがちな光学的な整合性を保つために、角度のマッピングや正規化、再サンプリング、補間といった工程を組み込み、用途に応じて調整したデータをお渡しします。これにより、設計や評価の現場で安心してZemax形式をご活用いただけます。
入力データと出力データ
入力データ: Speos形式の実測散乱データ(BRDF/BTDF/BSDF)、測定条件(θi、φ基準、サンプリング情報 など)
出力データ: Zemaxで利用可能な散乱プロパティ一式
当社で行うデータ変換作業
1. 角度・座標の前処理チェック
Speos形式の測定データについて、角度定義や座標系が正しく整合しているかを確認し、変換後のデータが正しく意味を持つように前提条件をそろえます。
2. 角度マッピングと正規化
SpeosとZemaxで異なる座標系を対応づける(マッピングする)と同時に、光束(フラックス)が変換前後で保存されるよう正規化処理を行います。これにより、散乱特性の物理的な整合性を維持します。
3. 再サンプリング/補間(お客様用途に合わせたチューニング)
データ点の分布に粗密が生じるため、欠けている部分を補間するほか、サンプリング間隔を調整します。お客様の用途(たとえば迷光評価や配光計算など)に合わせた最適化を行います。
4. Zemax上での確認→納品
変換したデータを実際にZemaxへ取り込み、想定どおりに散乱特性が反映されるかどうかをチェックします。ここで異常があれば再度調整を行い、問題なければ出力して納品します。
サービスの流れ
当社の変換サービスは、最初の要件ヒアリングから納品まで一貫してサポートいたします。まずはお客様のご利用環境や評価指標をお伺いしたうえで変換設計を行い、Speos形式からZemax形式への変換処理と確認を経て、Zemaxでそのまま活用できるデータを納品します。
また、ご希望に応じてお客様専用のマクロを作成し、設定、角度の切替、確認用グラフの出力などの自動化にも対応します。
納品物(一例)
- Zemaxで利用可能な散乱データ一式
- 変換条件をまとめた仕様書(角度マッピング・正規化・補間条件などを明記)
- 専用マクロ(実行手順書付きで、設定変更や確認用グラフ出力にも対応)