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はじめての最適化(第2回)

第1回は最適化問題の定義とその分類に加え、最適解を探索するための代表的なアルゴリズムについて説明しました。今回は対象の設計空間を分析するための各種手法およびバラツキを考慮するための、ロバスト性・信頼性の評価について説明します。

設計空間の分析

ここまでは最適化アルゴリズムについて説明しましたが、実際に最適化を行う際にはどのアルゴリズムを選択するかがポイントとなります。前述のとおり対象の最適化問題にあわせて適切な最適化アルゴリズムを選択するため、事前に対象問題の特徴を把握しておくことが重要です。

一般的に対象の設計空間の特徴を把握するため、実験計画法によるサンプリングや応答曲面法による近似式(応答曲面モデル)が利用されます。これにより様々な情報を得て、最適化アルゴリズムの選択だけでなく、重要な設計変数の見極めなどが行われます。

実験計画法

ある現象における母集団を調査するとき、通常すべてを調べることができないため、いくつかのケースをサンプリングし、そこから母集団が予測されます。このときサンプリングの方法には実験計画法が一般的に利用されています。実験計画法は少ない実験で効率的に多くの情報を得られることで知られています。
実験計画法では最適化とは異なる用語が使用されています。基本的な用語を以下に示します。

因子 最適化における設計変数に相当

応答 最適化における目的関数や制約条件に相当

水準 定義された因子の範囲の分割数

主効果 ある因子単独の変化が応答に与える影響

交互作用

複数の因子の変化が影響してはじめて応答に現れる効果(図1)

また実験計画法には色々な実験計画があり、それぞれ因子の組み合わせ、総実験数、得られる情報が異なります。
そのため、最適化アルゴリズムと同様に使用する目的に応じて適切な実験計画を選択する必要があります。代表的な実験計画法には、各因子を総当りで実験する要因計画や実験回数を削減するための工夫が施された部分要因計画、指定した実験数で設計空間を可能な限り均一にサンプリングするラテン超方格法などがあります。

図1 主効果と交互作用

要因計画

指定した水準で各因子を総当りで実験します。
例えば2水準要因計画の場合、各因子の下限値、上限値の2水準を総当りで実験します。得られる情報は各因子の1次の効果と交互作用の効果を把握することができます。総実験数は、水準数に因子が累乗でかかるため、2n 回となります。このような古典的な実験計画法は設計変数の組み合わせ方が単純で理解しやすく、さらに交互作用の情報も得られます。しかし一方で、因子の数が増えると総実験数が爆発的に増加するという課題があります。(図2)

図2 2水準要因計画

部分要因計画

要因計画の一部の実験を削減して、総実験図4 ラテン超方格法数を低減させた実験計画の1つです。実験から得られる情報の主効果と交互作用を交絡させる(同一のものとみなす)ことにより、実験数を削減しています。その結果、実験数を減らした分の情報が欠落します。このため、通常は交互作用がない、あるいは主効果に比べて明らかに交互作用が小さいなどといった前提が必要となります。(図3)

図3 部分要因計画

ラテン超方格法

一般的な実験計画法の総実験数は、基本的に水準数と因子の数によって総実験数が決定します。そのため、総実験数が実施可能な程度であれば問題ありませんが、膨大な実験が必要となった場合に実施が困難となります。そこでラテン超方格法では、柔軟に実験を実施できるように総実験数を指定することができ、指定された実験数で可能な限り設計空間を均一にサンプリングするように因子の組み合わせが生成されます。基本的な考え方は、各因子の範囲を実験数で分割し、その格子状の空間の各行、各列で必ず実験が実施されるような因子の組み合わせが生成されます。
特にCAEとあわせて利用する場合は1回の解析時間がわかるため、例えば夜間や休日など実験に費やせる時間から総実験数を逆算して指定できるメリットがあります。(図4)以上のような実験計画法により母集団のサンプリングを行い、得られたデータから様々な情報を取得します。例えば一般的な散布図やヒストグラムのほか次のようなグラフによりデータを可視化し分析します。(図5)

図4 ラテン超方格法

図5 一般的なグラフ

相関図

各変数間の相関性を相関係数により表します。
(-1:負の相関 ⇔ 0:無相関 ⇔ 1:正の相関)(図6)

図6 相関図

平行座標プロット

全ての変数を平行な軸に並べ、実験データをそれぞれの変数値を通過する線分で表します。2次元/3次元の散布図などで可視化が難しい多変数のデータの傾向把握に役立ちます。隣接する変数間の線分が平行に近いほど正の相関を意味し、線分が1点で交差するほど負の相関を意味します。(図7)

図7 平行座標プロット

自己組織化マップ

多変数の大量のデータを2次元平面へ写像したマップを作ります。このときデータの類似度をマップ上の距離で表します。その結果、類似度の高いデータ同士がマップ上で隣接する領域に配置されます。一般的なグラフで分析が困難な多次元データに対して、データの傾向や相関関係を視覚的に理解する手助けとなります。(図8)

図8 自己組織化マップ

応答曲面法

実験計画法により得られた離散的なデータを連続的な曲面へ近似する方法を応答曲面法と呼び、作成された近似式を応答曲面モデルと呼びます。応答曲面モデルを作成することで、目的関数の特性を可視化するだけでなく、目的関数への影響が強い重要な設計変数の見極めなどを行うことが可能になります。主な手法として、最小二乗法による多項式近似や補間によるRBF(Radial basis function)などがあります。(図9)

図9 最小二乗法と補間

多項式

多項式による近似では、多項式の各項の係数を最小二乗法により求めます。具体的には、実験データと応答曲面モデルの予測値の差の2乗を全データ分 総和し、この総和が最小となる各項の係数を求めます。従って、実験データ全体の傾向を捉えた応答曲面モデルを作成することができます。一方で各実験データに対しては多かれ少なかれ誤差が含まれるため、データ自身に測定誤差などが含まれる場合は、それを滑らかにする作用として働きますが、もともとデータに非線形性の強い傾向が含まれる場合は、その非線形性をうまく表現できない場合があります。(図10)

図10 多項式(1次の例)

RBF

放射基底関数と呼ばれる基本的な関数形状を複数重ね合わせることで、全体の曲面を作成します。原則的に実験データを通過する曲面が作られるため、非線形性の強いデータをうまく表現することができます。但し、多項式の近似とは逆にデータ自身に誤差が含まれる場合には、その誤差も含めて曲面が作成されるため、過剰に複雑な曲面が作成されるリスクもあります。(図11)

図11 RBF

これらの手法により応答曲面モデルが作成されると、曲面を可視化したり、目的関数への影響が強い重要な設計変数の見極めなどを行うことが可能になります。例えば一般的な2次元や3次元の曲面を可視化することにより、対象の問題が単峰性か多峰性かを確認したり、最適解がどの領域に存在しそうかといった見当をつけることができます。(図12)

図12 一般的なグラフ

また設計変数を多数扱う場合には、3次元での可視化が困難となりますが、全変数の組み合わせに対する2次元や3次元の曲面を一覧で表示することにより多変数での特性を把握しやすくなります。(図13)

図13 セクションとマルチ3D

その他、目的関数への影響の強さを設計変数ごとに確認したり、より詳細な設計変数の効果(1次、2次の効果や交互作用の効果)ごとに確認することもできます。(図14)

図14 寄与度とSobol

また制約条件の多い問題においては、設計空間上のどの領域に制約条件を満たす領域が存在するか可視化し、最適化にて探索する領域を事前に絞り込むことも可能です。あるいは最適解に対してどの制約条件が厳しく影響しているかなど把握することができます。(図15)

図15 トラストリージョン

これまで説明した応答曲面モデルですが、あくまで近似式であるため、実際に利用する際は作成後に精度の確認を必ず行う必要があります。一般的に利用される指標として決定係数R2 が知られています。

決定係数R2

データと応答曲面モデルのフィッティング の良さを表す指標で、0 〜 1の値を示します。(0:誤差大⇔ 1:誤差小) この指標は以下の式により算出されます。
第2項の分母はデータとデータの平均値の差を2乗して総和しており、もともとのデータが平均値に対してどの程度ばらついているかを表しています。これに対し、第2項の分子はデータと応答曲面モデルの予測値の差を2乗して総和しており、データがモデルに対してどの程度ばらついているかを表しています。そのため、データとモデルのフィッティングが良い場合、分子は0へと近づき、決定係数は1へと近づきます。(図16)

図16 決定係数

最適化問題の分類

定義した最適化問題は様々な基準により分類することができます。最適化問題にはそれぞれ特徴があり、それに応じて適切な最適化アルゴリズムを選択する必要があります。ここでは最適化アルゴリズムを選択するにあたり、どのような最適化問題の分類があるか、いくつかの例を挙げます。

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