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Hyperfluorescent OLEDおよびTADF OLEDのモデリングと高効率化

有機EL・太陽電池シミュレータSetfos、電気・光学特性測定装置Paios

カテゴリ:設計/解析事例 機能:モデリング、電気特性解析 業界:有機EL(OLED)

概要

本記事では、Paiosによる実測とSetfosによるシミュレーションを組み合わせ、TADF/Hyperfluorescent OLEDの動作メカニズムを解析した事例を紹介します。TADF分子および蛍光分子のドーパント濃度が異なる4種類の有機ELデバイスを対象に、シミュレーションモデルを構築し、発光層内の電荷再結合領域や電荷密度分布を解析しました。さらに、C-V特性の再現、電流効率ロールオフの要因解析、TADF分子濃度の最適化検討も実施しています。本記事は、PaiosとSetfosがTADF/Hyperfluorescent OLEDの解析および最適設計に有効なツールであることを示しています。

この資料はFLUXiM AGのResearch Blogを参考にして作成しました。詳しくはこちらをご覧ください。なお、本事例はFLUXiM AGとCynora GmbHとの共同研究成果をもとにしています。

解析目的および解析手法

背景と目的

有機EL(OLED)の効率は、この数十年にわたり継続的に向上してきました。高効率化を実現する技術として熱活性化遅延蛍光(thermally activated delayed fluorescence, TADF)分子を用いたTADF OLEDとHyperfluorescent OLEDが挙げられます。これらは発光に至るメカニズムが異なります[1]。

  • TADF OLED:TADF分子そのものを発光層(emitter)として使用するデバイスです。熱エネルギーを利用して三重項励起子を一重項へ変換することで、高い量子効率を実現します。
  • Hyperfluorescent OLED:TADF分子を、蛍光分子へエネルギーを渡すための分子(intermediate molecule)として利用するデバイスです。TADF分子で生成された一重項励起子が、蛍光共鳴エネルギー移動(Förster resonant energy transfer, FRET)によって蛍光分子へと受け渡します。最終的には蛍光分子が発光するため、TADF OLEDの高効率と蛍光材料の高い色純度を両立できます。

図1. TADF OLED(左)とHyperfluorescent OLED(右)の発光メカニズム

図2. 第1世代(蛍光)、第3世代(TADF)、および第4世代(Hyperfluorescent)OLEDの発光スペクトル(左)と色度図(右)

従来の設計と比較すると、Hyperfluorescent OLEDはより多くの励起子過程が関与します。こうした複雑性の増大により、電気光学シミュレーションツールなしで損失チャネルを見積もり、外部量子効率を最適化することは困難になります。
本記事ではTADF分子のドーピング濃度およびHyperfluorescent成分の有無が異なる4種類のTADF/Hyperfluorescent OLEDに対して測定結果の解析とシミュレーションの考察を行います。Paiosによる実測とSetfosによるシミュレーションを組み合わせることで、デバイス内部の動作メカニズムを理解し、ドーパント濃度の最適化による性能向上の可能性を検討します。

デバイスおよびシミュレーション手法

本事例では、Cynora GmbH社が製作した、ゲストドーパント濃度の異なる4種類のTADF/Hyperfluorescent OLEDを解析対象としました(表1)。2種類のデバイスはTADF分子(GD-1)のみを含み、残りの2種類はTADF分子に加えて蛍光分子(GD-2)を含んでいます。GD-1濃度は15 wt%および30 wt%の2条件を評価しました。

  GD-1 only GD-1 and 2
15wt% GD-1 試料1 試料2
30wt% GD-1 試料3 試料4

図3は、各デバイスにおいて変更した発光層(EML)のパラメータをまとめたものです。それ以外のシミュレーションパラメータは全デバイスで共通としました。本記事では、Paiosで取得した電気特性測定結果をもとに、Setfosを用いてデバイスシミュレーションモデルを構築しました。

図3. 各デバイスの測定結果を再現するために変更した発光層(EML)のパラメータ

解析結果

図4にJ-V特性の測定とシミュレーション結果を示します。この結果は線形スケールおよび対数スケールともに広い電流範囲にわたり非常に良い一致を示しており、構築したシミュレーションモデルの妥当性を示しています。

図4. J-V特性のシミュレーション(四角)と測定(線)
線形スケール(左図)および対数スケール(右図)での比較を示す

図5に、シミュレーションによって得られた電荷再結合プロファイルを示します。GD-1含有量の少ないデバイス(試料1、2)では、電荷再結合はHBLとの界面でのみ発生するのに対し、GD-1含有量の高いデバイス(試料3、4)では、再結合が発光層全体にわたって分布しており、両側の隣接層との界面付近でピークが確認できます。この知見は、同一試料を用いた光学特性評価によっても確認されています。

図5. 電荷再結合プロファイルのシミュレーション
ここでは発光層のみを示し、左端は電子ブロック層(EBL)との界面、右端は正孔ブロック層(HBL)との界面に対応する

図6は、4つのデバイスにおける発光層(EML)内の自由正孔(実線)およびトラップされた正孔(破線)の電荷密度分布を示しています。シミュレーションにおいてGD-2由来の正孔トラップを導入した結果、発光層内の多くの正孔がトラップされることが分かりました。トラップされた正孔は電荷輸送に寄与しないため、自由正孔密度は1~2桁低下します。その結果、電流輸送に寄与するキャリア数が減少し、GD-2を含むデバイスでは電流密度が低下することが示されました。

図6. 発光層内の自由正孔(実線)およびトラップされた正孔(破線)の電荷密度プロファイル

まとめ

本記事ではパラメータがわずかに異なる複数の有機ELデバイスに対して、Paiosによる実測とSetfosによるシミュレーションを組み合わせた解析を実施することで、TADF/Hyperfluorescent OLEDの動作メカニズムを詳細に理解できることを示しました。定常状態シミュレーションにより、ドーパント濃度の違いが発光層内部の再結合領域に大きな影響を与えることが明らかになりました。

下記ボタンよりダウンロード可能な資料では、C-V特性や電流効率ロールオフをシミュレーションで再現する手法に加え、GD-1のドーパント濃度がデバイス性能に与える影響や、ドーパント濃度の最適化について詳しく解説しています。測定とシミュレーションを組み合わせたOLED解析にご興味のある方は、ぜひ資料をダウンロードしてご覧ください。

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