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大面積有機太陽電池の欠陥解析
大面積半導体デバイスシミュレータLaoss
概要
本記事では、FLUXiM AGの大面積半導体デバイスシミュレータLaossを用いて、センチメートルサイズの有機太陽電池モジュールを解析した事例をご紹介します。Laossを活用することで、太陽電池内部の電流の流れ方や発熱の様子をシミュレーションし、性能低下の原因となる損失や欠陥の影響を詳しく調べることができます。本記事の内容は、有機太陽電池の解析だけでなく、ペロブスカイト太陽電池においてJ‑V特性に影響を与えるシャントや欠陥の理解にも役立ちます。
この資料はFLUXiM AGのResearch Blogを参考にして作成しました。詳しくはこちらをご覧ください。
解析目的および解析手法
背景と目的
太陽電池を大面積化する目的は、実験室レベルの小面積セルが持つ高い発電効率を維持しながら、設置が容易でコスト効率の高い太陽光パネルを実現することにあります。しかし、太陽光パネルは単にラボスケールのセルを拡大しただけのものではありません。数ミリメートルサイズの小面積セルからメートルサイズの大面積パネルへとスケールアップする過程では、特有の技術的課題が伴います。
小面積セルの最適化においては、層材料や膜厚の選定、そして凹凸状の界面(テクスチャ構造)の追加によって、光吸収、電荷生成、電極での電荷抽出を改善することが主に行われます。これらの最適化プロセスは、FLUXiM AGの太陽電池シミュレーションソフトウェアSetfosによって強力にサポートされており、純粋な光学特性の解析に加え、光・電気連成シミュレーションも可能です。
Setfosのような1次元(1D)シミュレーションでは積層構造の最適化は可能ですが、大面積パネルの外部電極へと向かう、電極内の面内方向の電流の流れを設計・理解・改善することはできません。この面内方向の抵抗成分は、電極構造に応じて動作電圧を低下させ、太陽電池の層構成に印加される実効電圧を減少させます。さらに、太陽電池自体に不均一性やシャント(shunt)が存在する場合があり、これらが電流の流れを変化させ、局所的な電圧降下や効率低下を招く要因となります。
本記事では、FLUXiM AGの2D + 1DソフトウェアLaossを用い、1次元の層構成モデルと2次元の面内方向シミュレーションを組み合わせることで、センチメートルサイズの有機太陽電池における損失チャネルと欠陥の影響を解明することを目的とします[1]。

図1.2D + 1DソフトウェアLaossの概略図
解析条件
本記事では、センチメートルサイズの有機太陽電池モジュールを対象に、熱画像測定およびLaossを用いた電気・熱(electro‑thermal)シミュレーションを行い、デバイス内部の温度分布を可視化・評価しました。さらに、シャントが太陽電池全体の動作に与える影響を明らかにするため、太陽電池モジュールを切断し、最も大きなシャントを除去した状態で再測定する実験を実施しました。

図2.(a)解析対象となるセンチメートルサイズの有機太陽電池モジュールと(b)熱画像 全体を測定後、太陽電池を指定された線に沿って切断し、最も大きなシャントを取り除いた状態で再測定した結果を図3に示す
解析結果
図3にシャント除去前後における太陽電池のJ-V特性と、温度分布を示します。この結果から、シャントの有無によって、電流の流れ方(電流密度分布)だけでなく、デバイス全体の温度分布までもが変化することが明らかになりました。このような変化は、Laossシミュレーションでも同様に確認できます。

図3.シャント除去前後における有機太陽電池モジュールの(a)J-V特性と、(b)温度分布 試料を切断し、最も大きなシャントを除去する過程は、Laossで再現されており、デバイス全体の温度上昇と40 mm周辺の温度上昇から確認できる
さらに、切断後のモジュールに対して、個々のシャントの影響を詳細に調べた結果を図4に示します。その結果、シャントの数や導電率が正の電圧範囲においてモジュールのJ–V特性を大きく左右することが分かりました。一方、直列接続されたサブセルのうちに1つでもシャントのないセルが存在すると、短絡条件(印加電圧0 V付近)におけるJ–Vカーブの挙動は、そのシャントのないセルによって支配されます。そのため、複数のシャントが存在していても、短絡条件付近のJ–Vカーブからは、あたかもモジュールにシャントが存在しないかのように見えます。

図4.個別のシャントを除去した場合のJ-V特性
まとめ
本記事では、Laossを活用することで、センチメートルサイズの有機太陽電池に対する電気・熱測定の結果を再現し、その挙動を理解できることを示しました。Laossは、デバイス内の面内不均一性がどのように動作へ影響しているのかを分かりやすく可視化します。さらに、こうして得られたパラメータを用いることで、実験に頼ることなく、シミュレーションだけで太陽電池モジュールの改良検討を進めることができます。
下記ボタンよりダウンロード可能な資料では、大面積有機太陽電池デバイスのEL画像と電流密度分布シミュレーションの比較、およびIR画像と電気・熱シミュレーションの比較についても記載されています。ご興味がございましたら資料ダウンロードをお願いいたします。
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