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メタレンズとは?原理・設計フロー・設計事例を徹底解説

METALENS SOLUTION

光学分野に革命を起こす!近年注目が集まっているメタレンズについて、
その概要から、設計フローや解析事例、設計ツールをご紹介いたします。

INDEX

  • 半導体業界も注目!メタレンズの基本原理と従来レンズとの違い
  • メタレンズの設計手法をステップ解説
  • メタレンズ関連資料・過去セミナー動画
  • メタレンズ設計に使える光学解析ソフトウェア

半導体業界も注目!
メタレンズの基本原理と従来レンズとの違い

TOPIC 1

高度化する自動運転の実現など、高解像のマイクロ光学センサーの需要が増える中、急激に注目が高まる光学技術「メタレンズ」。
光学関連業界はもちろん、その製造プロセスから半導体業界の新しいポートフォリオとしても注目を集めています。

従来のレンズは、ガラスやプラスチックなどの材料を研磨して作成していました。対してメタレンズは、半導体製造現場ですでに使われている装置を用いて大量生産することが可能とされ、かつ制御性に優れ高性能・超薄型と、これまでの光学レンズの常識を覆す技術です。

現在は大学による生産手法の最適化など技術的には研究開発のフェーズといえます。だからこそ、スマートフォン、監視カメラ、VR/ARデバイスなど、より小型で高性能なレンズ技術が求められるカメラセンサー分野にいち早くメタレンズを活用することができれば、一気に市場を掴める可能性があります。

本ページでは、そんなメタレンズについて、概要や設計フローなどを解説します。

メタレンズの原理と特長

メタレンズは、従来のレンズとは異なる原理で集光するレンズです。
従来のレンズは、ガラスやプラスチックなどの材料を用いて光を屈折させ、焦点を結びますが、メタレンズは メタマテリアル と呼ばれる特殊な材料を用いて、光の振る舞いを制御します。

メタマテリアルとは、通常の材料にはない特異な光学特性を持つ人工的な材料です。光の波長よりも細かな構造を制御することで、光を操作します。これにより非常に高い分解能で物体を観察したり、光を通常のレンズではできない方法で操作することが可能になります。
これを用いれば、厚みが髪の毛よりも薄いレンズや、光の波長や偏光ごとに特性が異なるレンズなども実現できる可能性があります

またメタレンズは、ナノサイズの構造体を平板上に配置して光を操作するため、非常に薄く、軽量で、従来のレンズよりも高い自由度を持っているのも大きな特長です。

実用化ももうすぐ?
期待される活用分野

メタレンズの技術はここ数年で急速に発展してきましたが、未だ研究段階のフェーズで、完全な実用には至っていません。
今後、大量生産が実現すれば、様々な分野での活用が見込まれます。

拡張現実(AR)デバイス   AR-VRページへ  >

ARデバイスの透過型ディスプレイやヘッドマウントディスプレイ(HMD)に活用すれば、デバイスをより小型化し、ARコンテンツが現実世界と自然に融合した、より鮮明でリアルな体験をユーザーに提供できるようになると考えられます。

カメラシステム

従来のレンズに比べ薄くて軽量でありながら、広い視野角や高い解像度を提供できます。
スマートフォンのカメラに取り入れれば、カメラの出っ張りを完全にフラットにできるかもしれません。
赤外線や温度など人間の目には見えない情報を取得するカメラ等では、実用化も近いと言われています。

医療機器   ヘルスケアソリューションページへ  >

内視鏡や顕微鏡にメタレンズを利用することで、高い解像度、深い被写界深度、より高度な情報の取得により詳細な診断や手術が可能になるかもしれません。医療機器のサイズも小型化でき、操作性や患者の負担が軽減できます。

光学センサー

LiDARセンサーや3Dセンサーにおいて大幅な光学系の小型化が可能です。
すでに製品化されているものもあり、さらに自動運転車やロボットの精密なナビゲーション・認識機能への拡大が期待されます。

メタレンズの3つの課題と設計の未来

このように、光学をはじめとした多数の分野にイノベーションを起こすと期待されているメタレンズですが、実用にあたってはまだまだ課題もあります。

製造精度の問題

メタレンズは非常に小さなスケールでの製造が要求されるため、高い製造精度が必要です。ナノスケールでの精密な構造を持つため、製造過程での微小な誤差が光学性能に大きな影響を与える可能性があります。

材料の制約

メタレンズの設計には適切な材料が必要です。これらの材料は高い屈折率や特定の波長に対する適切な透過率を持つ必要がありますが、現在の技術ではこの材料の選択肢が限られています。また、新しい材料の開発には多くの研究とコストがかかります。

設計の複雑さ

メタレンズは複雑なナノ構造を持っており、これを正確に設計するためには高度なシミュレーション技術と専門知識が必要です。
特に、異なる波長や入射角に対して最適な性能を発揮するように設計することは困難であり、設計の最適化には多くの試行錯誤が伴います。

これらの課題を解決するため、今も世界で研究が進められています。
2025年1月には、東京大学大学院の研究で、半導体露光プロセスのみを用いて平面レンズを大量生産することが可能な手法を開発することに成功したとの発表がありました。技術としての実用化も日々近づいています。

このように、メタレンズは製造面からみると半導体技術でありながら、実用においては新たな市場と応用領域を生み出す革新的な光学技術として、広く業界の注目を集めているのです。

メタレンズの基本的な設計手法をステップ解説

TOPIC 2

では、具体的にどのように設計を行うのでしょうか?
メタレンズの設計には、微小なナノ構造(メタ原子)の解析から、レンズ寸法に合わせてメタ原子を配置する手法、メタレンズ全体としてどのような振る舞いを示すのかの光の伝搬特性解析など、様々な段階での設計が必要となります。
ここではもっとも基本的な設計フローについて解説します。

1.メタ原子の特性解析

ナノフォトニクス解析ツールを活用し、例えばメタ原子として円柱ピラーを選択した場合にはピラー径や高さによる特性の変化を解析することで、設計に必要な寸法の把握を行えます。
製造の制約が事前にわかっている場合はそれをフィードバックすることでスムースに試作に移行できます。

2.メタ原子の配置検討

要求仕様が高いほど高度なアルゴリズムが必要となる場合がありますが、この例では設計したい位相に合致するピラーの半径を決定することで一意にメタレンズの構造を決める事ができます。

3.光学特性解析

焦点距離やPSF(点像強度分布)等の確認を行います。この際に設計波長以外の特性や斜め入射による影響もチェックします。

さらに設計ツールの設定調整を行うことで、色消しメタレンズ、偏光依存型メタレンズなど、様々な特性を持ったメタレンズを設計することができます。

メタレンズ関連資料・過去セミナー動画

TOPIC 3

ここでは、当社のメタレンズ設計支援に関わる概要資料や、過去に開催したセミナー動画、設計事例などをご覧いただけます。

メタレンズ・メタサーフェスとは?設計解析に必要なCAE環境紹介
(ダウンロード資料)

メタレンズ・メタサーフェスとは?といった概要と、当社によくいただくメタレンズ・メタサーフェスに関するご質問とソリューション、設計に用いる光学製品の機能一覧・比較表を掲載したダウンロード資料です。当社の提供するメタレンズ設計・解析環境について簡単にご紹介しています。

Lumericalによるメタレンズの設計事例のご紹介
(過去セミナー動画)

このセミナーでは、メタレンズとは?といった基本的な概要説明と、メタレンズ設計の具体的なフローについて、実際の設計画面のデモを交えながら解説します。
単一ナノ構造の解析からメタレンズの焦点分布の評価までを、光学ソフトAnsys Lumericalを用いて実施しました。無料でご覧いただけますので、メタレンズ・メタサーフェスの研究開発をされている方、メタレンズの設計に興味のある方はぜひご覧ください。(動画時間 27:39)

メタサーフェス設計の実践ガイド
~基本設計から公差解析までワンストップで実現~(過去セミナー動画)

本セミナーでは、微細構造・メタサーフェス解析ソフトウェアPlanOpSimを用いて、mmオーダーのメタサーフェス解析方法から、ビームシェイパやカラールーティング・ホログラフィック用途のメタサーフェス設計例、メタサーフェスの感度解析やモンテカルロ解析をPlanOpSim上で実践する手法をご紹介いたします。PlanOpSimについて、メタサーフェス設計ツールとしてのオペレーションがいかに簡便かご体感いただけます。(動画時間 51:58)

メタレンズ設計に使える光学解析ソフトウェア

TOPIC 4

当社で取り扱っている光学解析ソフトウェアのうち、メタレンズ設計に適した製品をご紹介します。

微細構造・メタサーフェス解析ソフトウェア PlanOpSim

ナノ構造設計から製造用のレイアウトファイルの出力までを一貫して行うことができ、メタサーフェス・微細光学素子の設計・開発を促進します。
計算専用のハードウェアが不要で、特殊な要件のメタレンズ設計にも対応しています。
また、開発元との協業により、設計したメタレンズの試作支援まで対応可能です。
メタレンズを取り入れたいが、試作・製造に課題があり踏み出せない・・というお客様はぜひ一度ご相談ください。

光学設計ソフトウェア Ansys Zemax OpticStudio

多種多様な業界で光学製品の設計開発に用いられており、結像光学系、照明光学系、レーザー光学系などアプリケーションを問わずモデリングが可能です。
Ansys Lumericalなどと連携することで、メタレンズの設計・解析が効率的に行えます。

フォトニクス解析ソフトウェア Ansys Lumerical

ナノサイズの光シミュレーションを可能にし、ナノ構造デバイス、光回路システムの開発を支援します。メタレンズ解析では、RCWAを用いた単位構造の解析から、FDTDによるメタレンズ全体の伝搬解析までの一連の解析が可能です。

当社では、ソフトウェアの本導入前に使用感や適応性を確認したいというご要望にお答えし、これらの製品について無償トライアル版をご用意しております。
そのほか、「自社のニーズに対してどの製品が向いているかわからない」「具体的な費用感を知りたい」などのご相談は、以下お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

サイバネット 光学エンジニアリングサービス

  • メタレンズ技術を自社レンズや光源と合わせたらどうなるか解析したい
  • ノウハウがないので実際の設計方法を手順化してレクチャーしてほしい
  • 光学解析に加え熱や構造など総合的な解析が必要になったが知識がない

このようなご相談については、当社のエンジニアリングサービスをご利用ください。
多くの企業様からメタレンズの相談を受けてきた経験豊富なメンバーが、御社の課題解決のサポートをさせていただきます。