コラム用語集
AI × CAE プラットフォームで実現する設計プロセス改革
――手戻り削減と検討スピード向上を実現する、設計DXの進め方
今の日本の製造業は、国際競争力と労働人口の減少という2つの側面から、設計プロセスそのものを変革することが求められています。
一方で現場では、製品の複雑化・短納期化が進むほど、設計判断に必要な情報が増え、意思決定の遅れが手戻りや開発全体の遅延につながりやすくなります。だからこそ設計管理者には、「設計の早い段階で判断材料を揃え、手戻りを減らし、検討スピードを上げる」ための仕組みづくりがこれまで以上に重要になっています。
本稿では、DX時代の製造業に必要な「設計力強化」を、CAEを“設計プロセスの中で使える形”にするという観点から整理し、
設計プロセス改革の具体的な進め方を解説します。
日本の製造業に求められるのは「設計プロセス改革」という競争力強化
GDP から見る世界に取り残される日本の現状

資料:GLOBAL NOTE 出典:IMF
国際競争力を測る代表的な指標にGDPがあります。
日本は2000年代までは世界第2位でしたが、
その後順位を落とし、近年ではドイツにも抜かれて第4位となっています。
さらに一人当たりGDPを見ると、日本はG7の中でも最下位で、アメリカの半分程度に留まっている状況です。

資料:GLOBAL NOTE 出典:IMF
加えて、少子高齢化による人口構造の急速な変化も避けて通れません。
生産年齢人口(15~64歳)は2070年にかけて、2020年と比べて約40%減少すると言われています。
人手が減る中で、企業として競争力を維持するためには、
一人当たりの生産性を上げることが必須になります。
ものづくり白書が示す、製造業の課題とこれからの打ち手
国際競争力を維持していくためには、一人当たりの生産性を引き上げることが避けて通れないテーマになっています。この点は、経済産業省・厚生労働省・文部科学省がまとめた「ものづくり白書」でも課題として挙げられており、人材の量的な不足に加えて、質的な抜本変化に対応できていないこと、さらには従来「強み」と考えてきたものが成長や変革の足かせになり得ることが示されています。

こうした背景を踏まえると、今後企業に求められるのは、企業変革力を強化するデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進と、設計力の強化です。
DX 時代における設計力強化とは
製造業ではすでにDX化に向けた取り組みが始まっており、皆さまの企業でも何らかの取り組みを進めているケースが多いでしょう。ものづくりの工程を大きく分けると、R&D・設計の「前工程」と製造の「後工程」に整理できます。後工程のDXは、生産の自動化、IoT、デジタルツインなど比較的イメージしやすい一方で、前工程では何を変えるべきかが見えにくいことも少なくありません。
しかし前工程のDXの本質は、CAEを活用して設計力を強化し、設計の生産性を上げていくことに他なりません。

DX時代の製造業においては、設計の早い段階から意思決定を支え、手戻りを減らし、検討スピードを上げるために、CAEを“設計プロセスの中で使える形”にしていく取り組みが重要になってきます。
設計者 CAE が広がらないワケとは
日本の製造業における CAE 導入率の現状

日本の製造業500社の調査では、CAE導入率は43.4%であり、企業規模が大きいほど導入率が高い傾向があります。
さらに導入企業の中では、CAE専任部隊を設置している企業が32%、CAEがわかる人を置いている企業は65%という結果も出ています。つまりCAEは「導入する」「推進体制をつくる」という点では進んでいます。
ところが現場では、CAEが設計のスピードを上げるどころか、逆に開発全体のボトルネックになってしまうケースも少なくありません。
“検証CAE”の限界

多くの企業が行っているのは「検証のためのCAE」です。
これは、試作・実験の代替として、設計が固まった後に専任者へ解析を依頼するスタイルです。
このやり方では、
- CAE専任者がすべて引き受ける構造になり、負荷が集中する
- 設計者が結果を受け取るまで時間がかかる
- ノウハウ・データが属人化し、情報がサイロ化する といった問題が顕在化します。
設計管理者の視点で見ると、これは非常に深刻です。設計判断が遅れる=開発全体が遅れるからです。
しかも製品が複雑化するほど解析難易度は増し、負荷と待ち時間はさらに増大します。
“設計者CAE” 推進企業の現状
CAEの活用を広げようとして「設計者CAE」を推進する企業もあります。典型的には、CAE専任者の知見を手順書や講習会で展開する方法です。
しかし現実には、設計現場にCAEが根付かず、苦労されている企業が多いのが実情です。なぜなら、それは「専任者と同じやり方を設計者にさせている」だけであり、設計の時間軸・判断の流れにCAEが溶け込んでいないためです。
DX時代に必要なのは「CAEの民主化」
映画「アイアンマン」から紐解く CAE の民主化とは

設計力強化のためのデジタルトランスフォーメーションには、CAEの民主化が必要ですが、多くの企業ではCAEを導入していても、実態は「設計と分離したCAE」になりがちです。
皆さまは『アイアンマン』という映画をご存じでしょうか。
『アイアンマン』では、トニー・スタークがAIアシスタントのJARVISを使い、シミュレーションを回して答えを得ながら開発を進めます。トニーは自分で計算やプログラミングをせず、JARVISの結果をもとにYES/NOの判断をします。つまり、トニーは考えることに集中できるのです。
映画の話ではありますが、「設計者が結果を受け取り、意思決定に集中できる」という点で、目指す方向を示していると言えます。
CAEの民主化を実現するために目指す方向としては、設計者の要求に対して、難しいこと抜きに結果が得られること、
そして結果データに基づいて意思決定できること。結果として、設計者は考えることに集中できる
――そのような状態になるのではないでしょうか。
設計者が本当に求めているCAEとは
設計者が「使いたい」と思えるCAEの要素は明確です。
- 難しいこと抜きにして使える
- CAEツールを覚えなくていい
- すぐに答えがわかる
- 設計検討に集中したい
- 類似の設計データを見たい
ここに対して、設計者のためのCAEを成立させる要素は次の4つです。
1.「CAEのアプリ化」:設計者に“使える形”で渡す

CAE活用を促すには、利用のハードルを下げることが重要です。その効果的な方法がCAEのアプリ化です。
CAEのワークフローをアプリに埋め込めば、設計者がCAEソフトウェアを直接操作せずとも、必要な検討を進められる環境を構築できます。
さらに用途に応じて複数のアプリを用意することで、製品開発のさまざまな局面でCAE活用の幅を広げることができます。
2.「カプセルCAE × AI」:数秒で答えが返る設計判断へ

設計現場で本当に重要なのは「解析ができること」ではなく、短時間で答えを得ることです。
ここで鍵となるのがカプセルCAEです。カプセルCAEは、3D CAEや実験結果から生成された応答曲面、縮退モデル、サロゲートAIなどを用いた“結果予測ツール”です。
ソルバーの代わりにカプセルCAEを使うことで、数秒で結果を予測することが可能になります。
これは設計管理者にとって、
- 開発スピード(検討回数)を上げられる
- 早期段階で選択肢を比較できる
- “戻れない設計判断”を減らせる
という意味で、設計プロセス改革のインパクトが非常に大きいポイントです。
3. ダッシュボード:意思決定のスピードを上げる“見える化”

インタラクティブで直感的なダッシュボードは、迅速な意思決定に役立ちます。
必要な情報を1カ所にまとめ、設計者が比較検討しながら設計空間を理解し、方向性を決めるプロセスを支援できます。
設計の現場で起きがちな「データはあるが判断できない」「比較ができない」という問題を、判断可能な情報に変えるのがダッシュボードの価値です。
4. クラウドプラットフォーム:コラボレーションと設計資産化

設計が複雑化するほど、プロジェクトはチームで進める形になります。そのとき重要なのが、リアルタイム共有できるプラットフォームです。
クラウド型プラットフォームを活用することで、
- チームメンバーと設計情報を共有しながら業務を進められる
- ダッシュボードを共有するだけで状況相談ができる
- CAEデータを「個人の過去データ」から「企業の資産」へ変えられる といった効果が得られます。
設計管理者の観点で言えば、ここが極めて重要です。属人化を解消し、再利用可能な知見の蓄積=設計組織の底上げにつながるからです。
仕組みを作れる組織へ:CAEコーディネーターという役割

ここまでの4要素(アプリ化/カプセルCAE/ダッシュボード/プラットフォーム)を成立させるには、 “使う環境を準備する人”が必要です。その役割を担うのが、CAEコーディネーターと呼ばれるCAEエキスパートです。
CAEコーディネーターは設計者の要望に対して、
- 必要なプロセスをアプリ化する
- 知見をカプセルCAEに変えていく といった仕組みづくりを担い、設計者が「使いたい」と思えるCAEを提供します。
サイバネットが提案する「設計プロセス高速化ソリューション」

これまで述べた考え方を、設計プロセスの流れとしてまとめると次のようになります。
- 設計者が設計検討で使用するアプリを用意する
- 必要なワークフローとカプセルCAEをCAEコーディネーターが作成して展開する
- 設計者はアプリを使って検討を進め、ダッシュボードで意思決定を行う
- その後、検証フェーズへ進む
そしてサイバネットシステムは、この実現のためにNoesis社のテクノロジーを活用しています。

まとめ:検証CAEだけでは間に合わない!
設計者が“設計プロセスの中で使いこなすCAE”へ
設計者が“設計プロセスの中で使いこなすCAE”へ
これまでCAE専任者を中心に回してきた「検証のためのCAE」では、DX時代に求められる設計の時間軸には追いつきません。
これから必要なのは、設計者が設計プロセスの中で使いこなすCAEです。
OptimusによるCAEのアプリ化、nvisionによるカプセル化(AI)、そしてid8 による統合環境によって、
CAEをデータドリブン型へシフトさせ、設計プロセスを改革していくことが重要な取り組みになります。
そして設計部門としては、CAEに関わる役割を明確にし、CAEの高度化と標準化を両輪で伸ばしていくことで、ものづくりDXを実現していくことが求められます。

現在、下記のような状況が少しでもあれば、まずは現状の設計プロセスとCAE活用の仕組みをヒアリングさせてください。
- CAE専任者への依頼が集中している
- 設計判断が遅れ、手戻りが増えている
- 設計者CAEの取り組みが定着しない
- 過去の解析データやノウハウを再利用できていない
貴社の状況に合わせて、設計判断を速くするポイントと、無理なく回り始める導入ステップをご提案します。
