複合材料の解析について

はじめに

 金属材料に比べ軽量で、比強度や比剛性の面で優れている複合材料(CFRPやGFRPなど)が、工業製品に用いられるケースが増えてきています。また、新しい素材を用いた複合材料の開発・製品化も進められています。しかしながら、複合材を用いた製品を従来のCAEツールでモデル化および評価を行おうとした場合、複合材特有の設定項目(繊維方向や積層数など)が煩わしかったり、評価基準に合った評価を行うため結果の加工が必要であったりと、効率よく作業を行うことが難しい面が多々あります。

「ANSYS Composite PrepPost(以下ACP)」は、ANSYS Workbench環境で利用可能な積層シェル要素専用のプリポストです。ACPを使うことで、積層シェル要素特有のモデル化および評価を効率良く行なうことができます。今回は、このACPの解析フローおよび特徴についてご紹介いたします。


図1 ACPの適用分野

ACPによる解析のフロー

ACPによる解析フローは、以下の通りです。

  1. まず、ANSYS Workbench Mechanica(l 旧Workbench Simulation。以下AWM)を起動して、サーフェースモデルに対してシェルメッシュを作成します。AWMの持つCADモデルのインポート機能やシェルメッシング機能をフルにご利用いただけます。
  2. 境界条件を設定します。ここでの操作環境も通常のAWMを用いるため、直感的かつ簡単な操作で境界条件を設定可能です。
  3. AWMのメニューからACPを立ち上げます(図2)。するとACPが別画面として起動し、自動的にメッシュと境界条件がインポートされます。このとき内部では、メッシュと境界条件を含むANSYSのCDBファイルが作成され、ACPが立ち上がった後に、自動的にCDBファイルを読み込んでいます。

    図2 AWMからACPを立ち上げ

    このように、ACPはCDBファイルのインポートに対応しているため、AWMの代わりに、ANSYS Mechanical APDL(旧Classic。以下 Mechanical APDL)でシェルメッシュと境界条件を定義し、CDBとしてインポートすることも可能です。ACPが起動したら、ACPのGUIから、積層材の材料特性と各層の定義を行います。材料は、密度と直交異方性の物性値が入力可能です。積層要素に特化したGUIを使用することにより、効率的に材料特性や積層情報を定義していくことが可能です。また繊維方向の定義では、Mechanical APDLの場合はAPDL(ANSYSのマクロ処理言語)によるマクロを作成していたような処理も、ACPでは簡単に定義できます(詳細は後述)。
  4. 積層材の材料特性と各層の定義が終了したら、後は解析を実行するだけです。解析の実行はACPのメニューから行います。ACPのメニューより解析を実行させると、バックグラウンドでANSYSソルバーが起動し、Batch処理にて解析を実行します。内部では全ての入力データを含むCDBファイルを作成して、それをANSYSソルバーに渡しています(図3)


    図3 ACPからANSYSバッチランを実行

  5. 解析が終了するとANSYSの結果ファイル(.rst)が作成されますが、それを読み込むことによってACPにてポスト処理を行うことが可能です。各層ごとの変位・ひずみ・応力をコンター図で出力できるほか、積層要素に特化した結果も評価することが可能です(詳細は後述)。

ACPの特徴

このように、ACPを利用することで効率的な積層シェル要素の解析が可能です。また従来のMechanical APDLを利用した積層シェル要素の解析と比較して、ACPには以下の3つの特徴があります。

Workbench環境に統合された使いやすい操作性

従来、積層要素の解析といえばMechanical APDLで行うことが一般的でした。これはすなわち、積層要素のためのANSYSコマンドの知識が必要であることを意味しています。AWMの場合もシェルメッシングは可能ですが、そもそもAWMが積層要素に対応していません。そのためAWMで積層要素の解析を行いたい場合は、コマンドオブジェクトによって積層材特有の設定をする必要があり、やはり初心者には敷居の高い作業でした。

しかしACPを利用することにより、メッシュと境界条件の設定はAWMで、また材料と積層の設定はACPでと、直感的で使いやすいGUIを使いながら、ANSYSのコマンドの知識がない方でも複雑な積層モデルを作成して解析することが可能です。

多彩なプリ/ポスト機能

ACPでは、複合材特有の設定項目となる、「積層数」や「繊維(強化材)方向」の設定を容易に設定することができます。特に「繊維方向」の設定に関しては、基準となる座標系(直交、円筒、球)を利用することにより、Mechanical APDLよりも簡単に繊維方向を設定することができます(図4)。


図4 座標系による繊維方向の設定

また積層断面表示により、積層構造が想定した通り設定できているかを、視覚的に確認することができます(図5)。


図5 積層状態表示

さらにポスト処理においては、ANSYSのポストプロセッサ(POST1)では用意されていないものも含む、積層材の破損に関する以下の代表的な損傷評価基準が標準で用意されております。

また、これらの損傷評価基準をコンター図として表示させることも可能です(図6)。


図6 損傷評価基準のコンター表示

ドレーピング機能

通常積層材は、成型加工において薄板形状のものを構造物本来の形状に成型されます。ここで任意の形状に成型されたことで、薄板形状では規則正しく並んでいた繊維方向が変化することになります。この場合、繊維がどの方向に向くのかを予測し、それをFEMモデルに定義することは非常に困難ですが、ACPのドレーピング機能を使用することで、繊維の方向を自動計算できます(図7)。


図7 ドレーピング機能

最後に

これまで述べてきたように、ACPはWorkbench環境との親和性も高く、更に複合材に特化した豊富なプリ/ポスト機能を有しているため、Workbench環境で複合材の設計を行いたい方や、複合材の各種設定・評価を効率よく行いたい方にとって、非常に魅力ある製品だと言えます。現在、複合材の解析でお困りの方は、この新しい複合材専用プリポストツールを是非一度ご検討ください。

CAEのあるものづくり2011年13号掲載

関連情報

[複合材料専用プリ・ポスト] ANSYS Composite PrepPost

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