携帯用入力機器の設計

Symbol Technologies

FEAで6フィートの高さから落としても無事堅固なコンピューター

6フィート (183cm) 以上の高さから繰り返しコンクリート上に落としても大丈夫な、堅固な携帯用ペン入力コンピューターの設計を想像してみてください。

これは、バーコード・スキャナー、携帯用端末、および無線データ通信装置の一流メーカーであるSymbol Technologies社(ニューヨーク州Bohemia)にとっての難題でした。同社の携帯用データ収集装置の多くは、配達、レンタル・カー会社での来客の対応、倉庫での棚卸、小売店での商品の陳列、および工場での作業の記録に従事している人たちによって常に持ち運ばれています。

PPT 4600は、競争の激化しつつあるペン入力コンピューター市場で競合他社からリードするために設計されたものです。広範なユーザー調査と顧客インタビューで市場が望んでいるのは次のようなものであることがわかりました。つまり、486をベースとしたWindows互換機で、スキャナーを搭載し、1日中操作可能なほどコンパクトで軽量化(約2ポンド - 900g)されており、ただし数フィート上から作業場のコンクリートのような硬い床に落としても大丈夫な大画面の装置だということです。

「そもそもそれは無理な注文だと思いました。」とSymbol社の機械工学部長Mitch Maiman氏は語ります。「そのような小型軽量な装置に装備とパワーを詰め込むことだけでも相当な難題でした。MIL規格の6.6フィート (2m) 落下試験に合格するように設計するというのは、当市場では聞いたことがありません。当然ながら、業界専門家たちはそれが実現できるとは考えませんでした。」

設計と解析の同時進行

しかしSymbol社は、業界専門家たちの考えが間違いだったことを立証しました。開発チームは、同社が製品実現プロセス (PRP) において確立した指針に沿って、Plato(プラトン)というコード・ネームのもとに活動を遂行しました。このプロセスの目的は、機能的なプロジェクト・チームを確立し、製品開発を通じてチーム間の連絡を効率化し、それによって設計と解析を並行して実行できるようにすることです。その結果、開発周期の早期に設計を精緻化でき、時間の節約、コストの低減、パーツ数の削減、製品パフォーマンスの向上、および製造性の改善につながりました。

PPT 4600の開発は、Silicon Graphics社の強力なIndigoワークステーションで行いました。内部のパーツ、アセンブリー、および人間工学的な面を含む機械的設計には、Structural Dynamics Research社(オハイオ州Milford)のI-DEAS Masterシリーズを使用しました。そして、応力、たわみ、及び動特性の解析には、有限要素法解析プログラムANSYSを採用しました。

解析担当者のHenry Grossfeld博士と機械設計チームは一致団結して作業に当たり、製品が必要なパフォーマンスを示すまで、パーツの設計、予想される荷重下におけるパーツの挙動の評価、およびジオメトリーの改良を繰り返しました。

プロジェクトの初期段階において、工業デザイナーがユニットの基本形状を設計しました。続いて、機械技師がすべての必要なコンポーネントを筐体内に配置しました。同時に、Grossfeld博士が解析作業のプリとしてユニットの有限要素モデルを作成し、設計の進行に合わせて解析を進めました。

Grossfeld博士は次のように述べています。「この工程の評価すべき点は、解析が設計と並行して行われたことです。進行に伴って、変更を即座に設計に反映しました。」

チームのメンバーが互いにすぐ近くにいたため、連絡はオープンかつ直接的に行われました。Grossfeld博士は、解析によって問題点を発見すると、それをただちに設計者に話しました。するとその場で、設計者はコンポーネントを再配置したり、補強リブを追加したり、支持物の厚さを変更したりといった解決策を案出しました。

大きな変更の場合、たいていCADジオメトリーをI-DEASで修正し、新しいジオメトリーをANSYSに転送しました。また、モデル内の大きな領域を代表する要素は、いわゆるスーパーエレメントにグループ化することにより、解析を単純化し短縮しました。

プロジェクトには、いくつかの主要な設計検討の繰り返しが必要でした。各設計案の検討において、異なる落下角度と方向について、一連の解析を行いました。「ユニットのあらゆる表面、縁、および頂点について、落下の衝撃を解析しました」とGrossfeld博士は述べます。「モデル全体で合計14,000以上の要素があり、製品にはプラスチックやゴムから金属やガラスにいたる様々なタイプの材料が含まれていました。これは、疑いなく私たちが今までに製品に対して行った最も徹底的な解析です。」

ガラスの保護

プロジェクトの主任機械技師Rob Doran氏によれば、設計における最大の難問でかつプロジェクトの成功のカギは、5.7インチのLCD(液晶ディスプレー)画面の保護でした。

Doran氏によれば、PPT 4600のために最初に提案されたガラス画面は、従来のペン入力コンピューターのなかで最も大きなものでした。また、落下に関する要求事項は、以前の製品に比べてはるかに厳しいものでした。

さらに厄介なことには、ディスプレイの供給業者は、許容荷重や許容応力に関するデータをいっさい持っていませんでした。「私たちはゼロから始めなければなりませんでした」とDoran氏は語ります。「しかし、最後には画面の物理的限界についてディスプレイのメーカー側より良く知るようになりました。」これは、ガラスのディスプレイを様々な高さから落下させ、ディスプレイに取り付けたひずみ計から測定値を集め、データを解析結果と比較することによって行われました。

画面にかかる応力を求めるに当たり、ユニットのいわゆる過渡動的応答(つまり、時間とともに変化する短期的な落下衝撃力)を加味して解析を行わなければなりませんでした。今回の場合では、荷重がゼロから最大に変更するまでに数ミリ秒しかかからず、材料の剛性が荷重とともに変化します。さらに、ばね状のギャップ要素からなるメッシュによって剛性を表すことで、コンクリートの床を正確にモデル化しなければなりませんでした。

「私たちは、このような問題にはANSYSを使用します。私たちの知る限りでは、非常に高い精度で広範な非線形動的解析を行える唯一のシステムだからです」とDoran氏は述べます。「他にもソルバーはありますし、かなり優れた非線形機能を持つものもあります。しかし、ANSYSほど広範なものはありません。ANSYSはずっと安定性があり、高速で余分なメモリーを必要としません。さらに、堅固な消費者製品を解析する上で必要な多くの要素タイプを持っています。」 解析が進行するにつれて、プロジェクト・チームのメンバーは、画面の変形、およびたった千分の数インチのギャップによって隔てられている2枚のガラスの共振運動も研究しなければならないことに気付きました。位相を異にして運動している2枚のガラスが互いにぶつかるのを予測するために、ANSYSを用いて固有振動数および振動モードを求めました。

「当プロジェクトにおける設計の道しるべとして、解析は計り知れないほど貴重でした」とDoran氏は述べます。「直感的に見れば、緩衝マウントを柔らかくしたほうが衝撃を吸収しやすいように思われます。しかし実際には、ANSYSによる解析の結果、堅い懸架装置のほうが優れており、柔らかい懸架装置ではガラスがゆがむ時間が長くなるだけであり、したがって応力レベルが高くなることが分かりました。このように複雑な問題の場合、適時に解を得るために解析は必要不可欠です。」

解析から得られた情報に基づいて、設計者たちは、ガラスのたわみを制限し応力を低減するように、ケースの構成を一体式構造に変更しました。その結果、落下に際して画面を適切に保護できる緩衝マウント式懸架装置を開発し、特許を取得しました。

さらに、ディスプレーを研究する過程で、解析を拡張して他のいくつかのサブシステムも含め、サブシステムのパーツが落下に際して壊れないことを確認しました。それらのサブシステムは、ユニットのバッテリーを所定の位置に保持するラッチ機構、回転するスキャナー・ヘッドを保持するクリップおよびばね装置、ならびにバーコードの目標にレーザー光線を照射する射出窓などです。

シミュレートした各落下試験ごとに、様々なコンポーネントに問題が発見され、それに応じて設計を変更しました。続いて解析を再実行し、設計をふたたび修正し、ユニットが満足の行くパフォーマンスを示すまで、この手順を繰り返しました。この反復式設計プロセスに続いて試作品で落下試験を行いましたが、その試作品は完璧なパフォーマンスを示しました。

設計の初期における解析の価値

機械工学部長Mitch Maiman氏は、PPT 4600プロジェクトが成功した理由を、設計のあらゆる段階で広範に解析を使用したことであると考えています。同氏は次のように述べています。「製品の最終的な検定において試作実験に時間を費やす代わりに、基本的に製品はのっけから順調に滑り出しました。この節約は計り知れません。」

同氏によれば、このプロジェクトにおいては、非線形荷重と過渡的動特性を解析する能力が特に重要でした。

「ANSYSの高度な幅広い解析機能がなかったなら、弊社は未だに当プロジェクトに取り組んでいたことでしょう」とMaiman氏は言います。「それがANSYSを使用する理由です。ANSYS以外のものでは目的は果たせなかったでしょう。パッケージはPPT 4600に関する弊社の経営目的を果たす上で確実に役立ちました。今後のプロジェクトにおいても広範に使用して行くつもりです。」

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