油井圧力の検証

膨張する海中ガスの強烈な力を抑え、安全に保つ衝撃吸収装置への適用

深海採掘における極度の圧力は、時には奇妙でかつ危険な現象を引き起こします。例えば、海水の2マイル下、さらに海底の2マイル下をドリルで掘り進む場合に遭遇する、ガスの泡の爆弾のような爆発力もそのような危険な現象の一つです。

油田の熟練技術者は、これらの油井の底で出来たピンポンサイズのガスの泡は、それが表面に到着する時までに小型自動車の大きさにまで膨張すると指摘します。100万年の圧縮から急激に解放されるような高圧ガスは、海底にある油井の鉄管や、岩や海の中で油井の保護シェルとなっている上昇管の中で、猛烈に減圧するわけです。そのため、「ムーン・プール」と呼ばれる採掘船(あるいは作業場)のさらに高い所に位置する油井の最上部では、石油業者が「キック」と呼ぶ衝撃を取り除く為の、重量にして何万ポンドもの鉄製の装置があります。

これらに使用されている変換機や、それに付属する噴出阻止装置(BOP)のような設備の設計および建造は、テキサス州ヒューストンのStewart &Stevenson Services Inc.(S&S 社)の海上採掘技術事業の中心となっています。その他の事業の多くは、上昇管(海洋の底からの表面へ上昇する石油やガスの誘導となる管)そのものと、上昇管を組み合わせたシステムを採掘船へ接続するための設計及び建造です。1998 年のS&S 社の販売は12 億ドルを上回りました。

転換機の試作テスト部品の一部

上図は、転換機の試作テスト部品の一部です。主軸は、長さ15フィート以上。17フィート以上ある試作テスト部品は、テストを繰り返し、機材間の接続を調整してきました。Pro/ENGINEER で作成されたこのモデルは、DesignSpace を使用して解析されました。

最近では、採掘船による作業は10,000フィートの深海にまで及んでおり、12,000フィートにおける作業もそう遠い話ではありません。しかしそれは中間地点でしかなく、石油とガスを探査する採掘者たちは、地殻の内部へと向ってさらに10,000フィートまで掘り進めていくわけです。

これは、単に技術的な集約だけでなく、資本集約も望まれます。まず新しい採掘船には4億ドル以上の費用が必要です。そして船の採掘プロジェクトに要する装備一式には、2,500万ドル以上かかることも有り得ます。S&S 社は、造船所経営以外にこのような船の設備を供給する最大手なのです。例えば主要な顧客としてGlobal Marine 社が挙げられます。

採掘に関わる物理的現象は、大きな収益にもなりますが、逆にそこには大きなリスクも潜んでいます。当然のことながら、油井をより深くまで掘り進めていくと、圧力もさらに高くなっていきます。深い海底油田での圧力は、1インチ当たり30,000ポンド近くまで達します。さらに、高い圧力によって発生した衝撃は、急激に、つまり非線形的に増幅するのです。これは石油やガスが数千トンの海水や泥を通って海表面へ上昇して爆発する影響による結果です。これが変換機や、噴出阻止装置の工業技術を、いっそう重要なものにしています。

試作テスト部品の断面図です。
上図は、試作テスト部品の断面図です。
長いシリンダーが主軸、短いシリンダーが中間軸です。
ハウジングのない変換機が下方に表示されています。

石油やガスは、海面までに非常に長い距離を上昇してくるため、その振動が起こす信号によって、採掘技術者や船のクルーは上昇後の衝撃に備えることができます。今や全ての油井で、泥用のポンプに振動計と流水計が付けられています。そのため採掘者は、どの程度掘り進んだか、またどのくらい上昇してきているかを把握できるのです。そして上昇流が、下降流を超えた時、衝撃がやってきます。この2つの割合の差が、爆弾の力に匹敵するようなその衝撃の大きさになるのです。

これら全てが、海上での採掘においては常識です。「このように、深く高圧での仕事ではありますが、どの海底油井も独特なやりがいがあります。」と、S&S 社の設計技術者、Michael Giles は語ります。また、これらの設備には多大な投資も重要ですが、新しい設計や改造における解析検証が常に必要とされます。S&S 社においては、ANSYS,Inc.(ANSYS 社)が提供している設計検証及 び最適化のソフトウェアDesignSpace をこの解析検証に活用しています。

当時Giles 氏や、同僚の技術者のBrian Sneed 氏は、Parametric Technology Corporation (PTC 社:マサチューセッツ州ウォルサム)のPro/ENGINEER Release 21と、その統合環境上で利用できるDesignSpace Version4.1.1を使用していました。(現在このDesignSpace はVersion5.0.1で近日中に5.0.2をリリースします。)また業務の中では、Autodesk,Inc.(Autodesk 社:カリフォルニア州サン・ラファエル)のAutoCAD Release14やAutoCAD 2000のベータ版などを採用している場合もありました。「Global Marine 社の要求の特異性により、変換機や、噴出阻止装置は完璧な設計がなされました。」と、S&S 社の工学研究開発部長、Richard Olson 氏は述べています。「これら2つ装置を組み合わせることは、海上の産業にとって稀なことであり、我々にとっても初めてのことでした。」変換機は、常に上昇機の一番上にあります。その変換機をマニホールドとして操作することによって、上昇管を通って固定されたタンクと加工機械装置の中へ上ってくるガス、石油、海水、採掘泥を通過させることになるのです。

ここで採用している直径43インチのピストンとドームを用いた噴出阻止装置は、変換機の一番上に据えられます。衝撃があった際には、噴出阻止装置のピストンは初期圧力による衝撃を発散させ、油井をしっかりと留め金で固定します。

DesignSpace を使用してGiles 氏が取り組んだ工学的問題に対し、Olson 氏は「これは通常3つの部品からなるものを1つの部品で設計した特大の変換機です。」と付け加えています。またGlobal Marine社の掘削装置に合わせて設計された変換機のハウジングが追加部品となります。「完全な噴出阻止装置でなくても、これもある特種な設計となります。」とも述べています。開発過程の早い段階で、Global Marine 社はS&S 社に対し、これはすぐにでも深度12,000フィート以上の海底で作業を行うことになるだろうと話していました。変換機とハウジングは、直径約6フィート、高さ約10フィートの大きさになります。変換機自体の重量は36,000ポンドで、ハウジングの18,000ポンドがさらに追加されます。6つの排出口を持ち、3つは内径16インチで開けられ、アメリカ石油協会(API)の基準に合わせた750ポンドのフランジを持っています。フランジは採掘船の船体の排出口にボルト付けされます。

変換機についてGiles 氏は、「それは3,000ポンドの金属で溶接されるため非常に大きくなり、それを固定する為に直径162.5インチものボルトが使われます。」と説明しています。そうなるとこれら8ピッチのボルトが重要となります。そして「それらは、上昇管の重力や4,800フィート/ポンドのトルクなどによる圧力のもとで取り付けられました。このような圧力を受けながらボルトを取り付ける作業は、糸の上に均等に圧力を分配させるようなものです。しかし別の方法では取り付けができないのです。」と付け加えました。

噴出阻止装置のピストンは、せん断力や、微小のたわみさえも間接的に受けることができるように設計されました。「たわみの発生により、部品間の隙間や許容誤差も考慮する必要があるが、同時に十分な安全率も確保しなくてはなりません。」とGiles 氏は報告しています。「我々はDesignSpace を使用して、応力集中部分を正確に捉えるためにピストンの上部にかかる円筒部分の力を解析しました。衝撃が到達した際にもたわみを回避しなければなりません。DesignSpace Version4.1.1を使用していた場合には、ここで解析を簡略化するために、円筒部分と実際には衝撃を受けないピストンの部分とを区別して、円筒部分のみに対しDesignSpace を用いて解析を行いました。そして、ベータ版として使用を始めたDesignSpace の最新バージョン5.0に採用されたアセンブリ機能を使えば、これらの解析が全体モデルで行えることにより、さらに正確に計算できることも予想できました。」とGiles 氏は話しています。

全ての装置の重要な継手となるのが、噴出阻止装置や変換機を上昇管の最上部に位置するジョイントに接続するテンショナーです。テンショナーから吊り下げられている上昇管は、200万ポンド(2000トン)以上にもなります。このテンショナーは、採掘船の下の水中に設置されるため、高い強度を持った、抗腐食素材AISI 4130クロム合金モリブデンという金属を62,000ポンド使用して造られています。

海底で2マイル以上に渡り延ばされる上昇管の重量は、技術者が許容量350万ポンドの張力を持った設計をしなければならないことを意味します。水中に沈めた時、とくに嵐による圧力の影響下において、上昇管を作る鉄の重量は、それ自身を引き千切る要因になります。そこでS&S 社は、その重量を98%まで無効にする浮力モジュールも提供しています。空気中では、その浮力モジュールの重量は73,000ポンドにまで達します。Giles氏は、ここでもDesignSpace を使用してこれらの荷重を解析しました。

テンショナーは、掘削作業の過程において、緩みや締め付けに柔軟に対応できるように設計されました。「どんな境界条件でも、また荷重が負荷されたり逆に持ち上げられたりしても、掘削装置にかかる応力値を評価できるようにDesignSpace を使用しました。」とGiles 氏は思い返しました。「どんな風や海の中でも、掘削装置は、変換機や噴出阻止装置(繋ぎ合わせると重量は75,000ポンド以上になる。)に加え数トンもの上昇管を持ち上げたり、設置したりしなければなりません。」エンジニアリングで現実的に求められるのは全て力の抑制である。

DesignSpace では、解析結果を回転させたり断面表示することができるため、Giles 氏やSneed 氏は、最大応力が発生する領域を容易に確認することができました。「これは大いに設計の助けになりました。そして、例えば構造の他の部分から影響を受けず、103,000ポンドが75,000ポンドに短時間でしかも不定期に変動するような荷重がある場合でも、今度は機能が豊富な汎用の解析プログラムのANSYS を用いた解析で、評価対象を拡張して検討することができるようになりました。」とGiles 氏は言います。

テンショナーや上昇変換機がしっかりと接続されているのを確かめるために、Giles 氏は8つのアクチュエーターや突起を設計しました。足の据付としても知られる突起部分は、DesignSpace によって、線形塑性モードで引張りと圧縮の両方で解析されました。「鉄鋼の重量が圧縮荷重であり、船の動きが引張り荷重となります。」とGiles 氏は指摘しています。この解析に、Giles 氏はビーム要素とともに、10接点四面体ギャップ要素を使用しました。「私たちは自由度が6または4の要素を使い、接触が含まれていないので摩擦なしとしてソルバーを使いました。」Giles 氏は報告しました。「私たちは伝熱―構造連成解析モデルを解析したのに、この複雑な計算を1度の計算で連続して解析することが出来ました。

結果として、相当応力とともに安全率や変形量を評価することができました。また、同時にDesignSpace の形状最適化機能も利用しました。これを使えば特に応力値の計算をせずとも、与えられた環境下での最適な形状を予測することができるのです。これは非常に便利な機能ですね。」Giles 氏は続けて次のようにも述べています。「これはDesignSpace で設定作業を行うのはとても容易でした。
その時DesignSpace 5.0のベータ版を試験的に使用していましたが、その新しいバージョンはさらに簡単だと思いました。 この最新のバージョンでは、作成したモデルを異なる部品、異なる材料、また異なるメッシュで表現することができます。このような機能がなければ、おそらく解析は、100から200時間もかかっていたかもしれません。」これらの設計および解析はPentium 300MHzクラスのインテル社デュアルCPU のPC で行われました。

またきわめて重要なDesignSpace の解析の適用として、変換機のハウジングの底に、テンショナーを締め付ける部分に関するものが挙げられます。上昇管の重みの全てと横からの波と流れの圧力がかかっているのは、厚み1.375インチの鉄製フランジリングに0.5インチ幅の溝が掘られている肩の部分です。これは、テンショナーの底部の、巨大な直径78インチの穴と比較して、これは相対的に小さいものです。「継手の部品が、上昇管から受ける55,000ポンドの圧力に耐えられるようにDesignSpace を使用しました。」とGiles 氏は説明します。

上昇変換機とハウジングは、DesignSpace による配慮が多く施されています。変換機の基本的な機能は、採掘された泥や泥の坑に湧き出てくる他の物質を送り、外壁を振動させることで浄化して再利用することです。それは採掘した泥を船外に出さずに上昇管の中に留め、海洋を汚染から守る役割も果たしています。

主軸の応力分布
主軸の応力分布
主軸の安全率
主軸の安全率

しかし日常的なエンジニアリングでは、力の抑制が全てです。各変換機のハウジングは、特別な掘削装置に改良されました。S&S 社がGlobal Marine 社の為に作り上げた2つの装置は、これまでで最も巨大で、その他の点についても特別な装置です。殆どの海上装置が49.5インチで、また多くの物がまだ39.5インチである中で、この2つの装置では78インチの穴が通されています。そのような大きな穴を採用した理由の1つは、船にうねりや横揺れが発生すると同時に、海の潮流が上昇管を垂直な状態から10度程度ほど引っ張ってしまうからです。船の動きに適応するように、16インチのAPI 認定平板フランジを再設計するためにDesignSpace が使用されました。「それらが常にしめつけられていない状態であるようにしたかったのです。そして船の動きや船室からの圧力によって、押しつぶされたり塞がれたりしないような状態にしたかったのです。さもなければこれらは切り離さなければなりませんでした。」変換機を採掘船の装置に繋げる為に、フランジは水平方向から5度下方に向けられました。「これを正確に行うため、私は関係者全員に質問を繰り返しあらゆる資料を調べました。

そしてそれはまさにDesignSpace の回答と同じだったわけです。」Sneed 氏は採掘船に上昇管を接続する設計にDesignSpace を使用しました。これらは、テンショナーリングに含まれます。テンショナーリングとは、上昇管にかかる張力を抑え、できるだけまっすぐに保つための装置の一部です。まだ最も良い固定方式が考案されてはいませんが、採掘船は浮いた状態の船として作業をサポートしています。また海からの影響を弱める技術が洗練されてはきましたが、まだ横揺れや偏揺れ、縦揺れ、うねりなどが生じます。テンショナーや、曲げのある継手や、伸縮性の継手なしでは、船には絶え間ない動きが加わり、深海採掘に要するコストが膨大になってしまうのです。現在ではさらに採掘船の動きを抑えるために、本来は船の下で支えているつり装置となるテンショナーリングが、海底に固定されています。

以上のような業務を振り返りGiles 氏がこのように述べています。「DesignSpace は、研究開発や生産の支えになっています。また全機能が備わっているANSYS は解析技術者向きです。DesignSpace のキーポイントは、設計技術者が自分一人で、マウスのドラッグ&ドロップで使うことが出来るところです。また、解析結果が出てくるのを待っている間に、他の設計作業を続けたり、そこでできた別の形状ファイルを電子メールで今度は解析技術者に送ったりできるので、とても助かっています。だいたいそのような作業が、一日くらいで出来てしまいます。」

「問題なのは、設計と解析の分担により回避できないような作業の遅延が、設計技術者の設計検討工程を中断させてしまうことだと思います。」Giles氏は続けました。「そして逆に、常に形状を解析技術者に送る機会があるわけですから、もし修正が必要な場合は、形状を送る前に設計変更をしておくべきです。せっかく出てきた解析結果が、修正後の設計に参考にならないものだと、解析技術者の努力を無駄にしてしまうわけですから。」

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