医療工学ユーザー事例

最先端の医療分野には、産学官さまざまな分野からの参入、各分野の連携が必須とされ、日々成長しつづけています。とくに近年、最先端の工学的手法を用いて、より高度な医療を実現させる「医療工学」が注目されており、ANSYS、また株式会社ケイ・ジー・ティー様より提供のReal INTAGEも医療工学の分野で幅広く利用いただいております。

2005年7月に開催した医療工学セミナーでは、「医療工学」を取り上げ、医療分野でのANSYS解析事例、医療・工学分野のコラボレーション手法、人体モデルや人工心臓などの研究、産学官の連携のあり方など、最先端の医療工学に関する事例を様々な研究分野の方よりご紹介いただきました。本来、医療は経験重視の分野であり、工学は新しいテクノロジーを作る分野です。両者のスムーズなコラボレーションは難しく、また人体と言う失敗の許されない存在を扱うなど、その連携には様々な課題があります。その中で、医療と工学が連携して開発された新しい治療方法、また医療分野でのシミュレーションや解析などご講演内容をご紹介いたします。

グリッド上の循環器疾患診断・治療支援システムの構築に向けて

北陸先端科学技術大学院大学 情報科学センター長 松澤 照男様

スーパーコンピュータ上で高臨場感を伴う遠隔コラボレーション環境の構築を進めているVizGrid プロジェクトと、この環境で血液―血管系の連成解析を利用した循環器疾患診断・治療支援システムについて紹介頂きました。

この「VizGridプロジェクト」では、文部科学省ITプログラムの一課題としてはじまり、スーパーコンピュータ(グリッド)上で高臨場感を伴った遠隔コラボレーション環境のための要素技術、コラボレーショングリッドを開発しています。医療分野ではCAS(Computer Aided Surgery)、CAD(Computer Aided Diagnosis)などコンピュータによる支援診断、支援外科手術、ネットワークを使った診断が求められており、このシステムも医療分野での適用を目指して開発されています。

これを利用した循環器疾患診断・治療支援システムでは、CTやMRI画像を元にした血管−血流の連成解析による診断治療支援を行っています。数値流体力学および流れの数値的可視化を応用して、血液流の血液・血管病変に及ぼす影響を検討しています。

臨床向け人工心臓の開発における血流解析の役割

東亜大学 医療工学部医療工学科 教授 銭逸様
東京慈恵会医科大学 脳神経外科学講座 高尾 洋之様

臨床に成功した人工心臓の開発、および早稲田大学他との共同プロジェクト、また新たな取り組みとしている脳血管の血流解析、その他医療分野での解析事例などをご紹介いただきました。

人工心臓の開発
ご紹介いただいた人工心臓は、患者の心臓は残したまま、遠心ポンプを補助的に使う人工心臓です。この人工心臓のポンプは軸や軸受けを使わない構造のため、冷却も不要です。また、大きな特徴として、回転部と固定部の磨耗がなく、摩擦により材料が血液中に流出しない設計が可能です。
FDA(米食品医薬品局)に認可申請する際、人工心臓の場合は、流体解析結果の提出が求められます。開発の際にはANSYS CFXを利用して、血液と人工心臓の表面干渉や血栓形成のモデル化、分子レベルの血液の溶血特性をモデル化して解析をされています。
血管造影装置
心臓のカテーテルを見る装置を検査室からオペルームに入れて、検査をしてからすぐ治療しています。同大学はシーメンスのリファレンスサイトに指定されており、診断機器はシーメンスのものを利用し、世界で始めて血管造影室をオペルームに入れて、実際に開頭手術も行っていらっしゃいます。将来は、バーチャルな手術室も見越しています。
このような研究には、医師、エンジニア、企業の協力と連携が欠かせません。産学官の連携により実現した事例です。

数値シミュレーションのための高分解能な人体リアルモデルの開発

独立行政法人 情報通信研究機構 電磁環境センター 専攻研究員 長岡 智明様

近年、電波利用技術の進歩に伴い、我々の身の周りの電波による健康への影響についての関心が非常に高まってきています。人体への悪影響を無くすためや、電波を使うにあたっての不安を払拭するため、我が国では電波防護指針が設定されています。携帯電話の電波をはじめとする、電波に対する安全性は、生体内に吸収される電力(SAR)を正確に測定することが必要となります。実際,人体でこのSARを測ることは難しく、人体を模擬した数値モデルを利用して正確な曝露量を推定することが必要かつ重要です。

この数値人体モデルは欧米人男性モデルしかなく、日本人への影響をより詳細に評価するために日本人男女の平均体型を有した人体数値モデルを開発しました。データの作成には、MRIで撮像したデータを利用し、RealINTAGEでモデルの修正等を行いました。完成したデータは男性横断面が866スライス、3Dデータは約800万ボクセル、女性は804スライス、約630万ボクセルとなりました。

このモデルは、国内外の研究者よりデータ提供の希望があったため非営利目的に限り、無償公開(http://emc.nict.go.jp/menu.html)されています。放射線曝露評価や自動車の衝突シミュレーションなど様々な分野で適用が可能で、機械工学、音波、電波、医療、コンピュータなどの分野からの多数の希望が寄せられています。

3次元画像の認識・理解・変形・生成に基づく医用画像診断支援・外科手術支援

名古屋大学大学院情報科学研究科 メディア科学専攻 森 健策様

3次元画像の認識・理解・変形・生成手法を応用した医用画像診断支援・外科手術支援手法について、ご紹介いただきました。CTは手軽に利用できるほど進歩し、それに伴い画像の認識・生成技術、可視化も高速、高画質化してきています。それに伴い、特に医用画像の可視化手法の一つである仮想化内視鏡システムを中心として、種々の医用画像診断支援手法、外科手術支援画像生成手法が開発されています。

仮想化内視鏡システム
3D CT画像を利用して、人体内部をあたかも内視鏡で観察しているように見ることが出来、実際には見られない箇所も観察しているかのように見ることが出来ます。臨床の場では多く使われており、医療評価処理システムとしても仮想化内視鏡が非常に多く利用されています。特徴として患者に苦痛を与えず観察が可能で、様々な位置から観察でき、半透明表示で対象臓器の向こう側も観察できます。
手術支援システム
このシステムは手術室と検査室に、カーナビに相当するものを設置するのを目的に開発されました。これは手術前の画像を元に、今、内視鏡や鉗子がどこにあるのかを画像の上に表示して、それを見ながら手術や検査を実施します。気管支内視鏡の支援システムで、内視鏡は位置センサーを付けづらい上、呼吸など人の動きでうまく作動しません。内視鏡で取り込んだ画像と3Dデータとのすり合わせや、胸部のdbと連動させ、画像間類似を判断してトラッキングしています。
このような研究には、医師、エンジニア、企業の協力と連携が欠かせません。産学官の連携により実現した事例です。
仮想化システムの今後
現在は1ミリくらいの1.5ミリくらいの解像度でCTを取っていますが、マイクロCTが発達して非常に繊細な画像を取ることが出来れば、肺胞くらいまで表示が可能になり技術的に大きな進歩が予想できます。またこのような大きなデータを扱うには64bit環境が不可欠となります。それに伴いさらに大きなデータの取り扱いやシミュレーションが行われるという将来の展望をご紹介いただきました。

実際の医療工学の現場の皆様にご発表いただきましたが、全ての方が医療工学連携を目指すには医療に携わる方と工学的な専門家、そして企業の綿密な連携が必須であるというご意見があがりました。
医工連携については医療の現場からは様々なアイデアがあっても、それだけではどうにもできない、理工科学的な新しい技術や知識を入れて医療の中でうまく利用するのが必ず必要であるという意見でした。ANSYSも歯科や循環器系など医療分野で多く利用いただいていますが、医療と工学の連携の一つの仲立ちになるよう、サポートしてまいります。

解析種類


関連キーワード

CONTACT US

ご購入・レンタル価格のお見積り、業務委託についてはこちら。

お問い合わせ

ページトップへ