レースカーのロールフープの圧壊試験

Lora Cars, Ltd.

ANSYSを用いてLola Cars社のレーシング・カー開発をスピードアップ

フォーミュラ1、フォーミュラ3000、およびインディー・レーシング・カーのために車、シャーシ、その他の部品を製造しているLola Cars社(英国のHuntingdon)では、常に厳しい納期との戦いがあります。しかし、近年ではさらに厳しい納期を強いられるようになりました。フォーミュラ3000シリーズの後続シリーズのために10週間で新しいシャーシを設計するよう依頼を受けたからです。

1995年のシーズン終了とともに幕を閉じたフォーミュラ3000シリーズですが、そのかわりとしてヨーロッパでは新しいレーシング・カー・シリーズが開幕しました。この新シリーズの理事会がシャーシの供給業者に関する決定を土壇場まで遅らせたため、Lola Cars社にとってこのように非常に短い期限となったわけです。

「私たちの仕事ではこのように納期に関わり窮地に陥ることが多々あります。レース・チームは、当然レース前に車に慣れる必要があるので、できるだけ早く車を納品するように要求がでてきますから。」とLola Cars社の計算技師Amit Chakraborty氏は語ります。「通常は、設計の開始からシャーシの生産と納入まで6か月程度しかありません。しかし、あの新シリーズ前に関しては契約の成立が遅かったために、時間を節約するためにありとあらゆる努力をしなければなりませんでした。」

実際、その当時結果として大幅に時間を節約できたのは、ひとつには試作実験の結果を待つのではなく、設計段階でコンポーネントの構造性能を評価するために有限要素法解析 (FEA) を使用したことです。Chakraborty氏は次のように説明しています。「私たちは、不良なパーツを作り、元に戻って不良の原因を探し、再設計を行うという過程を経るのはご免でした。そのような十分な時間的余裕はありませんでした。最初からできるだけ正確に実機として通用する製品を作る必要がありました。」

ロール・フープの圧縮試験

ロール・フープの設計は、当プロジェクトにおけるFEAの使用例を示す良い例です。ロール・フープとは、運転席後部に位置する逆U字型をした構造体で、車が転倒したときにドライバーを保護するためのものです。このコンポーネントは、レース・チームに納品される前に、シャーシとともに2つの実機試験に合格しなければなりません。

試験の一つは、社内で行う圧縮試験であり、測定装置を取り付けたロール・フープをプレスで圧縮し、たわみを測定するものです。もう一方の試験は、生産ラインから出てきた最初のロール・フープとシャーシに対してレース・シリーズの規制機関によって行われる圧縮試験です。社内の圧縮試験ではロール・フープだけが試験されます。規制機関による試験では、ロール・フープがシャーシに取り付けられ、シャーシがある角度でひっくり返され、立てプレスで押しつぶされます。

これらの試験のいずれかで問題が見つかると、再設計に数週間かかり、Lola Cars社は10週間の期限に間に合わなくなります。そこで、同社は構造解析プログラムANSYS用いてロール・フープをコンピュータ上でのシミュレーションで試験することに決定しました。「FEAの利点は、早期に問題を発見し、代替案を迅速かつ容易に検討できることでした。」とChakraborty氏は述べます。

ロール・フープが1回で圧縮試験に合格することは最も重要視されるべきことですが、設計者たちは解析という手段について他にも2つの目的を持っていました。目的の一つは、当自動車のロール・フープに出されていた2種類の設計案の検討です。一つの設計案では完全に中空の管からできているものであり、もう一方の設計では形状的には同様ですが、ロール・フープの頂点部分が中空ではないものでした。設計者たちは両設計案を検討して、どちらを使用するかの判断に解析を適用したいと考えたのです。また、目的の二番目は、ロール・フープの装着部分における反力を求め、取付け方法が適切であることを確認することでした。

Chakraborty氏は、ANSYSにおける解析用のモデルデータとして、ロール・フープをCATIAで作成したモデルをIGESフォーマットに変換して使用しました。ロール・フープのジオメトリーは任意形状ボリュームを作るので、ANSYSの自動メッシュ機能を用いて有限要素メッシュを作成することができました。得られたモデル(両設計案ともモデル化)は、4節点の四面体ソリッド要素で作成されたFEMモデルで、要素数22,800となりました。解析のために最初のCADデータを準備するのに要した時間は、メッシュ生成および境界条件と荷重の適用を含めて約4日で、各問題の解析計算時間は、Lola Cars社の所有するIBM RS/6000ワークステーションで約25分でした。

ここで得られた解析結果により、全中空ロール・フープの方は実機試験に合格しないことが分かりました。レース組織の規則では、ロール・フープの故障は、ロール・フープの上部でのみ許容されています。解析によれば、中空のロール・フープは、故障が許容されていない下部で破断する可能性があります。それに対して上部に中空でない断面を持つロール・フープは、応力レベルが6%低く、故障が起こるとすれば、上部に限定されると考えられます。

Chakraborty氏は次のように述べています。「一方のロール・フープ設計が、明らかに荷重試験に合格しないことがたった5日間で分かりました。もし試作実験を待っていたら3週間はかかっていたはずです。」

より良いロール・フープ設計の選択を可能にしただけでなく、解析はシャーシ上の装着部分の強度が十分でないことも示しました。ロール・フープを支える反力が設計者たちの予想を上回っており、支持材を強化するためにシャーシのインサートを再設計する必要があることが分かりました。実はこの情報は特に貴重です。というのは、この問題はもし解析という手段を使わなかったら、規制機関による試験まで見つからなかっただろうと考えられるからです。

「規制機関が試験するのは生産操業における最初のシャーシですから、その時点で問題が見つかったとすると、私たちの作業にかなりの遅れが出ることになり、問題の是正はかなり高くついたことでしょう。」とChakraborty氏は述べます。「FEAがなかったら、この情報は得られなかったことでしょう。この問題は、手作業の計算では歯が立ちません。」

総合的な解析ソフトウェア

Lola Cars社では、FEAはほとんどすべてのプロジェクトに使用されています。解析専門家、つまりChakraborty氏ともう1人の技術者は、様々な設計チームのためにコンサルタント・グループの一員として働いています。作業の大半は構造解析ですが、同グループは、ANSYS/FLOTRANの計算流体力学 (CFD) 機能を利用して、車に関する空気力学的問題も調査しています。

Chakraborty氏は次のように述べています。「私たちは、フロント・ウィングとリヤ・ウィングのような車の揚力面の空気力学的研究にANSYS/FLOTRANを使っています。他の多くのパーツにもCFDが使用できると思いますが、構造解析に忙しく、すべてを検討している時間がありません。」

しかもChakraborty氏は、このようなエンジニアリングソフトウェアの操作方法を学んでいる暇がないので、ANSYSの多分野を包括した汎用性を高く評価しています。同氏は次のように述べています。「1つのベンダーから総合的な解析ソフトウェアを購入すれば、ユーザーは習得するために多くの時間を割かないですみます。構造解析からCFDに切り替えたとき、私はすでにプリプロセッサーとポストプロセッサーのことを理解していましたから。」

典型的なインディー・カー・レースでは、1位と最下位の差は、ラップ・タイムにして平均2秒以内です。レーシング・チームは可能な限界スピードを見出すために、24時間体制で作業しています。最も求められるのは、より速い設計サイクルですが、同じことがLola Cars社についても言えます。解析ソフトウェアANSYSを用いることにより、同社は業界内での真の競争力を手中にしたのです。

解析種類


関連キーワード

CONTACT US

ご購入・レンタル価格のお見積り、業務委託についてはこちら。

お問い合わせ

ページトップへ