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事例

WAONによる音響解析の実施で、スピーカー開発のフロントローディングを実現

JVCケンウッドグループ様 〜CAEの活用で、技術者のノウハウを蓄積・共有化〜

今回のインタビューでは、JVCケンウッドグループの皆様にご協力をいただきました。
JVCケンウッドグループは、株式会社ケンウッドと日本ビクター株式会社という歴史ある二社の経営統合で生まれた組織です。「カタ破りをカタチに。」という企業ビジョンのもと、カーエレクトロニクス事業やホーム&モバイルエレクトロニクス事業、業務用システム事業を中心に魅力ある製品をワールドワイドに提供し、多数のファンを獲得しています。
今回は車載用スピーカーを開発・設計されているJ&Kカーエレクトロニクス株式会社での音響解析ツール「WAON」を用いた解析事例を中心に、解析ツール利用のメリットや、スピーカー開発特有の興味深いお話を伺いしました。
(以下、お客様の名前の敬称は省略させていただきます。)

左から阿部様、冨澤様、熊倉様、重田様

今回お話いただいた方々

J&Kカーエレクトロニクス株式会社
市販事業部 スピーカ・アンプ部
開発グループ長 兼 品質保証グループ長 熊倉 弘幸様
開発設計グループ 重田  朗様
第一商品設計グループ 冨澤 達史様
JVC・ケンウッド・ホールディングス株式会社
統合シナジー推進部 CS・品質担当
シニアスペシャリスト 大角 親生様
チーフ 阿部 雄次様

フロントローディングの実現を目指す専門技術集団

最初に皆さんの所属やご担当をお聞かせください。

大角 親生様

私は本社機構であるJVC・ケンウッド・ホールティングスに所属しています。
その中で統合シナジー推進部の技術推進担当をしています。
技術推進の役割は、実際に製品を開発・設計・販売を行う事業部門が開発の生産性を上げるため、全体的なプロセスの変更や標準ツールの導入などで支援し、様々なボトルネックを解消することにあります。
これにより、設計初期段階から開発段階で発生するさまざまなリスクを取り去ることを目的として行われる「フロントローディング開発」を実現し、「良い製品を」「タイムリーに」「安く」市場に投入することを常に検討しています。
今回ご一緒しているJ&Kカーエレクトロニクスの皆さんは、旧ケンウッドグループに設けられていた「デジタルものづくりセンター」に所属しています。CAEによる解析を通じて、我々と同じようにフロントローディング開発の実現を目指しておられ、昨年末から一緒に活動をしています

阿部 雄次様

 私は以前、大角の話に出た「デジタルものづくりセンター」におりまして、解析全般のとりまとめを行っていました。
現在は大角と同じ部署にて、解析ツールの取りまとめや管理はもちろん受託解析を受けることもあり、解析に関わる全社的な活動を展開しています。

熊倉 弘幸様

 私・重田・冨澤の3名はJ&Kカーエレクトロニクス株式会社という事業会社に所属しています。
この会社ではケンウッドと日本ビクター両方のブランドにて、主にカーエレクトロニクス関連製品の開発を行っています。私達3名はその中でも車載用スピーカーを中心とした開発をしています。

重田 朗様

スピーカーは主に車載用とホーム用に別れますが、私達の部署では主に車載用スピーカーの製品設計および研究開発を行っています。開発側では設計の前段階において、もっと品質の良い新しいものができないかと日夜検討を重ねています

冨澤 達史様

私は設計を担当しています。ただし単純に設計のみを行うのではなく、設計の前段階である開発とオーバーラップするように設計を行っています。つまり開発で導き出された条件を単純にそのまま設計にトレースするのではなく、その情報と設計的な要素を開発担当と調整しながら製品を立ち上げていくということです。ここまで含めて「設計」と考えています。

CADの延長として定着した磁場解析と、難易度が高いが 重要性が増す音響解析。

社内での解析への取り組みが進んでいるようですね?

冨澤

そうですね。先に延べたような考えがあるので、設計者の大半は普段からANSYSの磁場解析を利用しています。これによって製品リリースまでの時間も短縮できていると思います。
私たちの部門では、「解析を皆でどんどん活用していこう」という文化が根付いています。解析に興味のある人間が自ら手を挙げて「解析をやりたいです」「これだけ効果が出そうです」と言えば、設計担当であっても、サイバネットさんで実施されているような様々な解析セミナーに参加できます。
また、構造解析や磁場解析のセミナーに参加した人が、マニュアルを作って設計部門内で公開し情報共有するようなことも一般的に行われています。
音響解析は磁場解析に比べて難易度が高いのですが、少なくとも音響解析で何ができるか知ってもらえるよう、情報発信を続けています

熊倉

磁場解析はわかりやすいし差も出やすく、製品の品質や性能にも直結します。設計者達はそれをここ数年の教育で理
解したようで、積極的に取り組んでくれています。
スピーカー内のプレートと磁石の関係を調べるのですが、この磁場の問題をうまく解決し最適化すると、部品の物量を少なくすることができ、当然コストも抑えられます。
今や磁場解析は解析ツールというよりはCADツールの一部のような位置付けで設計者が使ってくれています。

重田

開発側としては、CADを一通り使いこなせるようになった設計者には、CAEユーザーとしての教育コースを提案しています。「このレベルの解析スキルをつけるためには、まずこれを受けて次にこれを受ける」といったガイドラインです。スピーカーの開発設計では、CAEの基礎的な講習はもちろん、伝熱や動解析の知識も必要です。
もちろんすべて受講すると時間もコストもかさみますので現実的にはなかなか難しいですが、設計者側も非常に関心を持って参加を希望しています。

磁場解析や構造解析の活用は部門内で 浸透されているようですね。 今回事例をご紹介いただく音響解析はいかがでしょうか?

冨澤

 音響解析は構造解析や伝熱解析と比べて難易度の高い解析として捉えています。設計者側にとってはイメージ的なところから既に違いを感じます。ものを叩いて振動する現象は物理的な知識があれば納得しやすいし予測もできます。
しかし音が伝わっていくという現象では、予測を覆す現象を目の当たりにすることが多々あります。スピーカーの仕組みは、磁場に電気を流し、フレミングの法則で力が発生し、振動が発生して音波になって放出されるというものです。
物理的な振動の延長線上に音波も出てくると考えやすいのですが、実際にはそうならないことが多いのです。そのため最終的には耳で感じて特性を知るしかないと考えがちです。

熊倉

構造や伝熱の物理現象は測定で整合性が取れますし、時間を掛ければ合わせこむともできます。
しかし音の世界はまだそれほど測定の環境が整っていませんので可視化することが容易ではありません。測定ができたとしても相当な設備と費用、そして労力がかかります。例えば構造物の変化ならハイスピードカメラやレーザー測定器で検証できますし、熱の変化であればサーモグラフィやセンサで測定して、2次元や3次元で表すことが比較的容易にできます。
しかし音はそういったことができないのです。マイク数本による繰り返しの測定は、手間がかかる上に点でしか測定できず、面や空間で情報を得ることができません。
このため、面や空間で現象を推測できる音響解析ツールは、我々にとって非常に重要なものになっています。

スピーカー形状による音の指向性を解析で検証。 解析実施によって派生する様々なメリット

具体的には、現在どのような解析に取り組まれていますか? 特にWAONの音響解析事例についてお伺いしたいのですが。

重田

スピーカーの解析では主に磁場解析と音響解析があります。
ANSYSで行う磁場解析ではパワーや周波数特性を見て入力を良くするため使います。WAONで行う音響解析では音質に大
きな影響を与える出力を改善するために利用しています。
今回ご紹介するのは、スピーカー形状によって変化する音の指向性を検証した音響解析の事例です(図1)。
車載用スピーカーは大抵がドアの内側に設置されるドアマウントタイプであるため、設置場所は足元に近くなることが一般的です。そのため音を聞く側である運転者はスピーカーの正面で音を聞くことができません。
スピーカーの横方向や上下方向での音質は下がりますので、この音質の減衰についての現象がどのようなものであるかを把握し、さらにスピーカーの前面に設置するパネル形状を変化させることで音圧分布(音の指向性)を変化させ、運転中の運転者に良い音質で音が聞こえるように検証を行いました

冨澤

実際に店舗で車載用スピーカーを販売する際は、お客様はスピーカーの正面で音を試聴されます。しかし車に装備した際は足元からの音を聴くことになります。我々の製品は車載された状態で評価されて、初めて売れ続けるかどうかがわかります。店舗での一次的な売上には直結しないかもしれませんが、その先の買い替えていただくことやファンになっていただくこと、つまり売れ続けることを視野に入れて私たちは開発設計を行っています。

車載スピーカで指向性が重要な理由

つまり…

過去モデルの検証(境界要素法の例)

現状での問題点

解決策(音圧分布を傾けるには)

結果

図1 WAONによる音響解析事例(パネルによる音響指向性制御)

まとめ

● スピーカユニット前面に取り付けるパネル形状を工夫する事により、音場分布軸を傾ける事を実現した。
● 大規模音響解析により、今まで見えてこなかった音場分布の全体像が視覚的に確認する事ができる。
● 解析と実測との比較により、より実機に近い形での検討が可能となった。(フロントローディング)

重田

スピーカーの前面には、スピーカーの保護と音の指向性を調整するためにパネルが設置されています。スピーカーから出る音は周波数によってはパネルに取り付けられた突起側に音圧分布が広がるという特性があります。これを利用して下から上に音が広がるような形状検討をし、車に乗って音を聞く人向けの音場を作ります。
パネルによる指向性制御は10年ほど前から製品化の際に行っていましたが、前世代の製品までは、検討段階で無響室での測定を繰り返して形状調整を行っていまして、形状と現象の関係性がノウハウ化されていませんでした。そこで、音響解析ツールのWAONを使って検証を試みたのです。
手順として、まずは様々なパネル形状のサンプルデータをCAD上で大量に作りました。40から50種類ほどのデータを準備しましたが、実際の試作品ではないのでコストも発生しません。
それらを一つ一つ解析で検証して傾向を捉え、その中できれいに上下非対称に音圧分布が出るものを探しました。この解析結果を元に試作モデルを実際に作って測定で検証したところ、解析結果と同じ音圧分布の製品を作ることができました(図2)。

図2 解析(上)と実測(下)の比較表

※このグラフは形状を比較するために、縦軸をわざとずらしてあります。

今回の解析事例におけるメリットをお聞かせください。

重田

最初のメリットとしては、試作を行うことなく、製品化される実物に近い形状で現象の検証が行えたことと、その現象を点でなく面や空間で視覚的に捉えられたことです。以前の製品開発でも最終的な製品の音圧分布は確かに良かったのですが、パネ
ル形状と音圧分布の関係性を視覚的に把握できていませんでした。今回のこの解析によって、過去に遡って想定していたことが正しかったことがわかり、開発担当としてはそれだけでも満足でした。
本来は基礎となる理論を元に製品を作るのが理想的ですが、今回はその逆で多様なモデルを解析ツール上で検証しながら当てはめていく方式でした。しかしこの手法がかえってノウハウ化につながったと思います。

冨澤

加えてコストやスケジュール面のメリットも大きかったです。
もし50種全てのモデルに対して試作と測定を繰り返していたら、膨大なコストと気の遠くなるような工数と時間がかかっていたはずです。しかし解析をすることで上流工程での形状の絞込みをある程度行えましたから、厳選したモデルのみでの試作・測定で済みました。

熊倉

もう一つ、解析により目に見える資料が整い現象の裏づけになったことは大きなメリットでした。
これにより以前は大変だった内部調整が非常に楽になりました。スピーカーの設計作業は一人一人で行いますので、自分の設計した製品と他人の製品がどう違うのか、その理由がどこにあるのかがわからないといった状況が続いていました。
しかし解析で得られたノウハウや資料を元に、ダメなときはダメ、良いときは良いという議論が容易になり、その理由も明確に残せるようになりました。次の製品開発に繋げられる議論になったわけです。このように解析を使って現象の可視化が進めば、設計者同士のコミュニケーションもさらに円滑になっていくと思います。これも解析の大きなメリットだと思います。

冨澤

ノウハウが蓄積されることにより、開発側で時間短縮が進めば、設計側でも時間的な猶予が与えられます。
そうなれば開発側で出された条件をよりしっかりと反映した製品設計に取り組めるようになります。逆にもし開発側で時間がかかれば、スケジュールの関係上で開発から伝えられたものを無視した製品を作ったり、製品のリリースが遅れたりする最悪の状況にもなりかねません。このような将来的なメリットも考えられます。

今回の解析結果を反映した製品は、順調に売り上げを伸ばし ているとお聞きしました(図3)。

熊倉

アジアでも売れていますが、おかげさまで特にアメリカでの売上が伸びているようです。
営業担当や店舗店員といった売る側の方々も、解析コンター図のような資料があると販売しやすいそうです。実際にコンター図はカタログにも利用されています。

冨澤

製品リリースの前に販売担当を世界中から集めて試聴と製品説明をします。
その際はコンター図をフル活用しています。我々が説明する際にも、販売担当が店舗やエンドユーザーに説明する際にも利用されていますし、販売員の末端まで利用されているのではないでしょうか。コンター図があると販売時の説明が楽であるという話はよく聞きます。これも解析実施によるメリットであると考えています。

熊倉

以前は製品が出てから解析とコンター図の作成を行い、それを基に性能をアピールすることもありました。
コンター図を作るための解析であったわけです。今はその逆で、上流行程での品質向上のための解析であり、その副産物としてコンター図が作成されます。解析ツールが扱いやすく、速度も速くなったことで、コンター図はいくらでも出せるものになりました。

図3 実際の製品の写真。前面パネルにWAONで解析したパネル形状を採用

数値だけでは評価できない。 官能的評価がされる音への設計者のこだわり。

売上に直結する製品の音ですが、「良い音」と「悪い音」はど のように評価しているのですか?

重田

音の評価にはいろいろな方法があり、担当者によっても手法は様々ですが、最終的にはやはり実際に音楽を自分の耳で聴くこ
とになります。スピーカーを実際に購入するであろうターゲット層によって試聴する音源を変える者もいれば、ピンクノイズと呼ばれる雑音しか聞かない人もいまして、それだけでも評価できるようです。

熊倉

 評価結果は、試聴する時刻や、試聴者の体調によっても異なります。また、購入層や地域性によっても評価は異なります。
朝方がいいとか、食後はどうとか、眠いときはどうとか、そういった様々な状況によって変わってくるのです。よく「官能的な評価」と言われることがありますね。聞く人の感覚での評価という意味で、数値化ができないものです。
音は測定した数値が良くても聞く人にとっては良い音に感じられないことがあります。例えばフラット形状な特性のスピーカーは
一般的に音質が良いと言われますが「つまらない音」という評価になる場合もありえます。スピーカー開発側にとって難しい部分です。

評価に「官能的」という要素が入るとなると、担当者個人の 評価が非常に重要になりそうですね?

冨澤

設計者としては、たとえ他人に「良い」と言われても、自分の納得する音が出ない場合は製品化したくない気持ちがあります。設計者が自分の意思を練りこみ、自身をアピールできるのは音色しかないからです。形状やコストよりも音色に対する思い入れが最も強くなります。
この業界にいる我々にしてみると、スピーカーから出る音を聞けば、大抵は誰が設計したかがわかります。その人の音色が練りこまれているからです。音質や音色には会社や組織として求められる許容範囲があるのですが、その中で最終的な音の味付けをするのは担当設計者であり、担当設計者が選ぶ場所はほぼ決まっています。これが設計者の音であり、そのチームや組織の音であり、メーカーの音になります。同じブランドの後継機種でありながら音質や音色に統一性がない場合、我々には音を決めている人がバラバラか、基準がないのであろうことがわかってしまいます。

熊倉

 こういった電気製品はスピーカーだけだと思います。スピーカーは最初から最後まで一人で作りますからね。
当社内のスピーカー以外の部署の製品であっても、多くの担当者がチームで関わるものは、品質の良し悪しは別として設計者の個性が表現しにくくなります。一方、昔からスピーカーだけは「誰々のスピーカー」と言われます。一種の「作品」みたいなものなのです。

冨澤

だからこそ私はスピーカーの設計は面白いと思っています。自分の色を明確に入れることができるという、他の設計ではない醍醐味がありますから。「スピーカーの設計者が10年経たないと育たない」と言われることがありますが、理由はこういった点にもあるのでしょう。昔から「職人」と言われますから。

よりよい製品の開発を目指して。 今後は車室全体での解析や、解析同士の連動システムを。

当社や製品に対するご要望があればお聞かせください。

重田

WAONそのものは以前利用していた解析ツールよりも操作がしやすく、高周波数も対応できることで助かっています。実際それがメリットで導入をしました。その中で機能面での希望としましては、無限バッフル機能をもっと扱いやすくしていただきたいです。加えてANSYSで行う磁場解析とリンクした際のグラフ表示ができるとありがたいです。

冨澤

ANSYSとWAONがWorkbench操作環境で統合することで操作性が上がるのは歓迎です(図4)。
ただ、WAONでの解析結果データもWorkbenchで読み込めるとよいですね。

図4 ANSYS Workbench環境で動くWAON

熊倉

私はWAONに指向性のある音源の設定ができるような機能が加わるとありがたいです。それと、セミナーの実施ですね。新しいメンバーに社内で音響解析の理論を伝えるのはとても難しいです。ユーザーを増やすためにも、ぜひセミナーを実施してください。

今後取り組んで行きたいことがあればお聞かせください。

重田

車の車種やデザインによって音の広がりや反射は当然異なりますので、それらも考慮して解析を実施したいです。現実的には車のモデルを作るのも大変ですし車種も多い。また大規模な計算にもなるのでなかなか難しいですが、ぜひ取り組んでみたいと考えています。それから車室内の反響音は、人が入っただけでも変わります。車室内での吸音条件はまだ解析していませんが、ぜひWAONで今後取り組んでみたいと思っています。

熊倉

今はスピーカーの部品やスピーカーそのものの音場を解析していますが、将来的にはもっと大きい音場を測定したいですね。
そのうち車両データが当社のホームページに掲載されて、このスピーカーをつけたらこういう音場になり、別のものならこうなる、といった情報を発信できることが理想です。重田の言うような車室内の解析までできれば、車のメーカーさんにも提案ができるようになりますよね。

冨澤

ネックになるのは構造のモデル化と材料データだとは思いますが、磁場解析から音響解析までを一気に連動させたシステムの実現が夢ですね。磁場解析を行って得られたパラメーターを構造解析に入力し、さらにその結果を音響解析に入れて傾向を見るといったものです。この先10年くらいで社内構築できないかと考えています。サイバネットさんにも協力いただいて、他社に先駆けて解析に関連するいろんなことに取り組んでいきたいと思っています。

JVCケンウッドグループ 熊倉様、重田様、冨澤様、大角様、阿部様には、お忙しいところインタビューにご協力いただき、誠にありがとうございました。
この場をお借りして御礼申し上げます。

番外編 : 無響室を見学させていただきました

インタビュー当日は、製品の測定・検証を行う「無響室」も見学させていただきました。
同社の無響室はビルの2Fから4Fまでをくり抜いた空間にワイヤーで保持されており(箱が浮いている状態)、外の影響を受けにくくなっています。関東近辺では相当大きなサイズの無響室の一つとのこと。部屋の静かさの指標でNC値というものがあるそうなのですが、こちらの無響室は最も静かなレベルであるNC-15以下にあたるそうです。
部屋の中で試しに手を叩いてみましたが、全く音が響きませんでした。加えて、声を発するとその人の方向が明確にわかりました。この部屋を出た後、私たちが普段いる空間ではとても音が反響しあっていることを肌で感じました。
部屋の利用方法は、マイクの前にスピーカーを設置し、少しずつマイクに対するスピーカーの角度を変えながら音の伝わり方である指向性を測定します。
スピーカーの角度を変えるたびに防音のための重たいドアを開閉して部屋を出入りし、室外から測定器を操る作業を繰り返されるそうで、時間も手間もかかる非常に根気がいる作業とのことです。製品の測定が続くときは担当者は缶詰めになるそうで、しかも製品リリースが重なる際は部屋の取り合いも起きるそうです。
無響室での作業を考えると、解析である程度の傾向を導き出せたことはたいへん有益で時間短縮につながったとのことです。
今後もお客様の工数削減や品質向上のお役に立てるよう、音響解析ツールWAONの機能強化やサポートの充実を進めていこうと思いました。

中央にスピーカーを埋め込んだバッフル箱。この箱を少しずつ回転させて測定を行います。

無響室の内部。グラスウールが詰まった楔形状の突起が、天井・床・壁面に隙間なく並び、高い吸音効果を実現しています。

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