事例
伝達関数と音源寄与の分析
概要
図1のように表面が複雑に振動している筐体が外部に音を放射している場合に、壁面の振動速度と空間の1点との伝達関数を考えます。壁面を小さな要素(面)に分割したとき、ある要素iのみが速度1で振動している場合の観測点(受音点)音圧を要素iの伝達関数ξiとすると、受音点の音圧pは、すべての要素について各要素の伝達関数と振動速度viを掛け合わせた値を合計した値として求まります(図2)。
これより伝達関数ξiが大きい要素(面)は観測点の音圧に与える影響が大きいということであり、伝達関数はその面(位置)の受音点に対する寄与(空間寄与)を表します。また各要素の伝達関数と振動速度を掛け合わせた値ξiviは、観測点音圧に対する音源各要素(面)の直接の寄与(音圧寄与・音源寄与)を表します。

解析例
図3のような振動するパネル(0.9m×1.2m)の2000Hzまでの伝達関数、音圧を計算した例を示します。パネルは評価の都合上、9つのエリア(A1~A9)に分けられており、観測点(受音点)はパネル正面(Z軸方向)から0.5m位置でパネルと同一サイズの面の中心および角など9点としています。

図3:振動するパネルと観測点(受音点)9点:緑のハイライトの点が観測点
図4左に中央の観測点(点1)の100Hzの伝達関数(空間寄与)、図4右に左上の観測点(点4)の100Hzの伝達関数(空間寄与)を示しますが、この周波数では基本的に観測点正面の空間寄与が大きいことがわかります。図5に点1の周波数ごとの伝達関数の分布を示しますが、周波数が高くなると、音波の干渉により複雑な分布となっていることが確認できます。

図4:中央の観測点(左)と左上の観測点(右)の伝達関数の分布(振幅値)

図5:中央の観測点の伝達関数の分布(振幅値、周波数ごと)
図6に、中央の観測点におけるエリアA1~A9ごとの伝達関数(空間寄与)の合計値のグラフを示します(なお本伝達関数は複素数で求まるので、グラフの値はその振幅を示しており、またパネルの表面の伝達関数のみを合計しています)。このようにある範囲のエリアの合計値を評価することで、たとえばパーツ単位での評価といった粒度の大きい寄与の評価が可能です。中央の観測点の伝達関数なので基本的に観測点正面のパネル中央エリアA5の割合が高いですが、A2やA8エリアの寄与も大きいことがわかります。

図6:パネルのエリアごとの伝達関数の合計値(表面のみ、振幅値)
続けて実際にパネルに振動速度を与えます。図7左のようにパネルの右端の辺を固定し、パネル全面に1Nの加振力を与えて振動させた場合の各周波数の変位分布を示します。この振動速度を与えた場合の中央の観測点の音圧寄与(振幅値)の分布を図8に示します。図5の空間の寄与と図7の振動速度の分布とを合わせたような分布となっていることが確認できます。

図7:パネルの振動変位(振幅)

図8:中央の観測点の音圧寄与の分布(振幅値、周波数ごと)
また図9に、空間の寄与と同様に中央の観測点におけるエリアA1~A9ごとの音圧寄与の合計値のグラフを示します(振幅値、パネルの表面のみの合計)。空間の寄与と同様エリアA5の寄与が比較的大きいですが、片持ち梁のような振動をしていることから音圧寄与(音源寄与)はより複雑になっております。

図9:パネルのエリアごとの音圧寄与の合計値(表面のみ、振幅値)
