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不確実な時代、ものづくり企業のROIは“上流”でしか守れない

調達と設計の統合こそが安定した利益構造をつくる

製造業のROIは「上流の意思決定」でほぼ決まる

製造業において、収益性を本質的に左右しているのは、前回のコラム「設計開発DXがどのように企業のROI(投資対効果)を最大化するのか」でもお話した設計・開発段階、つまり上流にある意思決定です。
今回はその上流投資のROI(投資対効果)に深く関係する調達部門の視点からの内容になります。

製造業の利益構造は、製品の仕様や構造、工法など、設計部門から生産技術部門の領域から、材料の選定、サプライヤーとの供給体制など調達部門の領域。
これらが決まった瞬間に、その製品のコストをもとに収益構造が確定されていきます。
同時に品質の上限も、供給の安定性も、不確実なリスクも構造化(可視化)されます。つまり製造業におけるROIは、上流時点で、その大半が規定されていると言えます。

設計は独立して存在しない ― 調達条件の上に成り立つ

しかし見落としてはならない重要な前提があるとすれば、設計開発そのものが独立して存在しているわけではないという点です。

設計には縛りがあり、調達可能な材料や部品、供給の安定性、価格変動性、地政学的リスク(軍事的緊張を含む)といった制約の中にあります。つまり設計は、調達条件の上に成り立つ意思決定であり、調達と切り離して設計は成立しないということです。

「設計がROIを決める」というのは間違いありませんが、「設計と調達の統合こそが、企業のROIを決める」というのが、調達という重要な側面を加えた正しい理解になるでしょう。

言い換えれば、いくら設計の高度化を進めても、あるいは調達の効率化を図っても、部分最適の域を出なくては正しい意思決定には繋がらないという事です。

そして現在、この統合の重要性はかつてなく高まり、世界各地での紛争や地政学リスクの高まりは、原油をはじめとした資源や部材の流通を突発的に分断し、サプライチェーンの前提そのものを揺るがしています。昨日まで成立していた材料や部品が、明日には調達できなくなる事態も起こり得る。このような環境下では、設計は固定された前提の上に置くことはできない。

不確実性の時代、設計は“動的に変わるもの”になる

開発部門は、使用する材料や部品の条件が変われば、大きく設計を見直さざるを得ない。
つまり設計とは本質的に、調達条件の変化に応じて動的に変わるものなのです。このとき調達部門との連携がなければ、設計は現実から乖離し、結果としてコスト増大や供給不安、開発遅延といった負の連鎖に陥りかねない。

逆に言えば、調達と設計が一体となっていれば、状況は大きく変わる。
変化する調達環境の中で、その時点で成立する最適な材料・部品・供給条件を前提に、設計を迅速に最適化することができます。

設計開発DXによる開発速度の向上だけではない、環境変化への適応速度こそが、企業の強靱性であり、そのままROIの差となって現れ、調達部門の役割も明確になります。

調達は“価格交渉”ではなく“意思決定の起点”である

設計確定後に調達交渉を行うのでは実現できない。調達部門は上流工程に入り込み、設計初期の段階から関与しなければなりません。どの材料がどのサプライヤーからどの条件で供給できるのか、また、予め代替材料に対応する設計など、そうした制約と可能性を設計に織り込むことで、最適解が見えてくる。

ここで調達が担うのは、いくらで買うかではなく、どの条件で製品を成立させるかを決めている意思決定の起点であり、そのまま企業のROIに直結しているのです。

重要なのは、利益構造は最初に設計されるものであり、さらにPESTELや5Forcesといった環境分析フレームワークを通じて把握される変化の中で継続的に更新され続けるものであるという点です。その両方に関与できる領域が、設計と調達の接点なのです。

設計と調達の統合が上流投資効果も最大化する

まとめとして、製造業の調達部門は単なる購買機能ではなく、コストカッターでもない。設計開発と一体となり上流投資を最適化し続けることで、企業のROI最大化に向けた意思決定を支える存在です。

製造業の競争が上流へ、そして不確実性の高い環境へと移行するほど、この役割の重要性は増していく。設計と調達が分断された企業と、統合された企業。その差は、やがて決定的なROIの差として現れるでしょう。フォームの始まり

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著者

山本 祥晃

Yamamoto Yoshiaki

サイバネットシステム株式会社

営業本部 CPC営業統括部

シニアプリンシパル

大手製造業にて商品企画などマーケティング分野に10年以上携わり、製品開発から販売までPdM(プロダクトマネジメント)を統括。現在はマーケティングプロモーション分野で活動中。

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