製造業の利益は設計で決まる
~設計の遅れが競争力を削る理由~
開発は忙しいのに、なぜ利益は伸びないのか
多くの製造業において、開発現場はかつてないほど忙しくなっています。製品は高度化し、検討すべき要素は増え、求められる品質も上がり続けています。企業としても、デジタル化やITツール導入などの投資を進め、改善の手を打ってきたはずです。
「DX推進室」を設置して取り組んでいるのに……
こうした声を耳にする機会はありませんか?
さらに、「思ったほど利益が伸びない」「開発は頑張っているのに成果につながらない」
いったい、この違和感の正体は何なのでしょうか。
問題は人ではなく構造である
開発現場では設計~試作~評価、問題が見つかれば設計変更、再び試作する・・・。
このようなサイクルを繰り返しながら完成度を高めていく。
多くの企業の進め方ですが、この構造が変わらない限り、開発の効率は大きくは変わりません。
設計変更による手戻りは減らず、試作回数も減りません。
部門間の調整も複雑なまま。現場は精一杯努力していても、思うように開発期間は短縮されない状況が続いていく。
つまり、問題は現場の能力や努力だけでは解決しないことである。
むしろ現場はすでに最適化されており、これ以上の改善余地は限られています。
問題の本質は、人ではなくプロセス構造にあるということです。
ITツールの導入がDXという意味ではない
多くの企業でツールが導入され「DXは進めている」と言われます。
解析環境も整い、データも増えつつありますが、成果が見えにくい理由は開発プロセスそのものが変わっていない場合がほとんどです。
これは、どの分野でも同じで新たな価値創造を目指してDXに取り組んでも業務プロセスに焦点を向けなくては成果が出ないという事です。
従来の「作ってから直す」開発の考え方のままでは、どれだけツールを導入しても、本質的な改善にはつながりません。
デジタル化が部分最適にとどまっている限り、求められる最大の成果である開発全体のスピードは大きくは変わらないのです。
製造業の利益のほとんどが設計で決まる
さて、最大の成果と申し上げた開発スピードについては、経営視点でも見る必要があります。
製造業の利益は、工場ではなく実は設計で決まるという話です。
例えば、古くからトヨタ自動車株式会社では企画段階から予算を決め、その範囲で設計開発する「原価企画」という活動が行われています。
文末に原価企画についてのリンクを貼っておいたので、ご参考ください。
このように、製品のコスト構造の大半は設計段階で決まり、品質の方向性も設計で決まります。そして開発期間さえも、設計プロセスによって大きく左右されます。
つまり設計は単なる一工程ではなく、(コスト、品質、時間)という三要素と、企業の収益構造そのものを決める起点になるのです。

設計を変えない限り、結果は変わらない
従来のように試作を前提とした開発ではなく、デジタル上で事前に検証し、成立性を高めたうえで製品化する。
「デジタル上で判断できる」開発へと移行することが求められます。
この変化によって初めて、手戻りや試作を減らし、いずれ試作レスにつながる。また部門間のデータ連携によるスムーズな判断が実現します。
デジタルによる設計段階の確度を高めることが、結果として開発全体のスピードと品質を同時に引き上げることが可能なのです。
開発の遅れはコスト増ではなく機会損失を意味する
そして、いよいよ経営にとって最も重要な指標の開発期間に直結します。
競合に対して開発期間が短縮されれば、市場投入は早まり、売上機会が拡大します。
品質は勿論ですが、競合より早く市場に出せるかどうかで、ビジネスフェーズでの収益構造は大きく変わってしまいます。
見誤ってはいけない事として、開発の遅れは単なるコスト増ではなく、それは機会損失ということです。
市場投入が半年遅れることで、得られたはずの売上を失っている可能性があり、後から取り戻すことはできません。
さらに多くの市場では製品ライフサイクルが短縮しており、競合は貪欲に設計利益を得るため、無駄を排除し開発スピードを上げています。
開発が遅い企業から、静かに消えていく
この状況において、開発の遅れは静かに企業の競争力を削っていきます。
個々の製品では大きな差がないように見えても、市場投入のタイミングが積み重なることで、大きな差になっています。
一度の勝敗ではなく、徐々に、そして確実に差が開いていきます。
だからこそ現場頼みの個別の改善ではなく、開発プロセスそのものを変えない限り、利益もまた変わりません。
生き残りをかけた製造業の競争は、すでに設計の段階で始まっています。
山本 祥晃
Yamamoto Yoshiaki
サイバネットシステム株式会社
営業本部 CPC営業統括部
シニアプリンシパル
大手製造業にて商品企画などマーケティング分野に10年以上携わり、製品開発から販売までPdM(プロダクトマネジメント)を統括。現在はマーケティングプロモーション分野で活動中。